ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. ほっとニュースweb
  4. 相次ぐ脱輪事故を防ぐには 前兆現象はどんなもの?

相次ぐ脱輪事故を防ぐには 前兆現象はどんなもの?

  • 2023年12月8日

今回シラベルカに寄せられたのは、11月に相次いだ、車からタイヤが外れる「脱輪事故」についての投稿です。「タイヤの脱輪による痛ましい事故がありましたが、春と秋にタイヤ交換を行う道民にとって、決してひと事ではありません。脱輪の前兆となる現象はどのようなものがあるのでしょうか」という質問について、詳しく調べてきました。
 (札幌放送局記者  内匠彩果) 

相次いだ脱輪事故

投稿が寄せられるきっかけとなったのが、11月14日に札幌市西区で起きた軽乗用車の脱輪事故です。市道を走行していた車からタイヤが外れ、4歳の女の子にぶつかり意識不明の重体となりました。

タイヤが外れた詳しいいきさつは明らかになっていませんが、発生当時、運転していた会社員は警察に対し「事故の前、運転中にハンドルのブレを感じ、違和感を覚えていた」と話していたことがわかっています。
さらに、およそ2週間後の29日には、同じく札幌市南区の国道で走行中の車からタイヤが外れ、対向車線を走っていた軽乗用車に衝突する事故が起きました。この事故では軽乗用車を運転していた女性がけがをしています。その後も、けが人はいなかったものの、留萌市などでタイヤが外れるケースが相次いでいます。

JAF=日本自動車連盟のまとめをもとに作成した、道内で「タイヤが外れた」として救援要請が出された数のグラフです。

青色が過去3年間のそれぞれの月平均で、赤色は今年の件数を表しています。今年は11月だけで36件に上り、10月と比べて倍増していることがわかります。
JAFなどによると、雪道走行に合わせタイヤ交換が集中する毎年この時期から、タイヤが外れるケースが増えるといいます。脱輪事故をどうしたら未然に防ぐことができるのか、前兆現象と自分で交換を行う際の注意点について、JAF札幌支部で聞いてきました。

脱輪に気付ける?  前兆現象は…

教えてくれたのはJAF札幌支部の安藤純一さん。脱輪の危険性が高まったときに、ドライバーや同乗者が気付くことができる前兆現象として、次のことが挙げられるといいます。

⇨ 初期段階では「音や振動で緩みを感じる」
・走行中「コトコト」や「ガタガタ」といった小さな音がする
・ブレーキやアクセルを踏んだ時、ハンドルを操作した時にホイールが動くことで大きな音がする

さらに緩みが進んだ最終段階では…
・フロントタイヤに異常が発生している場合、ハンドルはかなりガタガタと取られる
・車体自体も揺れるような強い振動を感じる

最終段階では、明らかに路面状況の影響とは考えにくい振動や音を感じるそうです。こうした状況で走行を続けるのは非常に危険です。すぐに路肩に車を寄せて、停車してほしいといいます。
対処法としては、まず後続車に注意して安全を確保した上で、車載レンチなどの工具で緩みがないか確認します。タイヤのナット部分にレンチを当ててみて、緩みがあれば締めます。音や振動が改善されない場合はそのまま走行せず、JAFや車を購入したディーラーなどに連絡をして、その場で修理に出しましょう。応急処置で音や振動が改善したとしても、念のため専門の業者で点検してもらうことが大切です。

タイヤ交換時の注意点は?

タイヤ交換をする場合の注意点を、実演を交えながら教えてもらいました。主なポイントは3つです。

① 「対角線上に均等に締める」
まずタイヤをボルトに通したら、手でナットを軽く締めます。このあと工具でさらに締めていきますが、その際の締める順番が重要です。均等に締まるように、対角線上に順番にナットを締めていきます。そしてジャッキを降ろしたあと同じ手順でもう一度しっかり締めます。


② 「強すぎる締めつけはダメ」

このナットを締める時の注意点が、全ての体重を乗せるような強い締めつけ方をしないということです。

人間の体重をかけるような力だと締めつけ過ぎてしまうため、手の力で締めつけることがポイントです。強く締まっているほうが安心だと感じるかもしれませんが、強く締めすぎるとボルトやナットを傷めてしまい、ボルトが折れたり、タイヤが外れたりするトラブルにつながりやすいのだそうです。


③ 「適切な力」で締まっているか確認を
そして最後に重要なのが、ナットが「適切な力」で締まっているかを確認することです。

「適切な力」は、実は車種ごとに決まっていて、車の説明書に「トルク値」として記載されています。説明書はもともと車に積んであるので、自分の車はどれくらいの力でタイヤを締めればいいのか、すぐ調べることができます。聞き慣れないかもしれませんが、規定のトルク値はN・m(ニュートンメートル)という単位で記載されています。

この時に使うのが、締める力を設定できる「トルクレンチ」です。ナットを締める時に使うレンチには、車載されている簡易的なものから、電動のものまでさまざまな種類がありますが、締めつけの力を設定しておくと、その力まで締められたところで、音や振動で知らせくれるのが「トルクレンチ」です。「カチッ」と音がするのを目安に最終的な締めつけの確認を行いましょう。

JAF札幌支部  安藤純一 係長
「日頃の点検の時も運転している時も小さな異変に気付けるように、車の様子をうかがいながら運転するような時間をつくってほしいです」

タイヤを付け替えたあとの注意点は?

交換を行ったあとにも、私たちにできる予防策はあります。タイヤ交換などを行う自動車用品店オートバックス環状通・光星店では、交換を店舗で行ったドライバーに、こんなチラシを配付しています。

およそ100キロを走行したタイミングで再びナットを締め直す「増し締め」という作業と点検を呼びかけるものです。交換後しばらく走行すると、振動などによってナットが緩むことがあります。しばらく走行してナットとアルミホイールがなじんだ状態で締めつけると、ナットがアルミホイールに対してまっすぐ確実に装着されるのだそうです。
札幌市のほかの店舗にも取材したところ、こうした交換後の緩みを点検する無料のサービスを提供している店は多く、タイヤを交換した店でなくても増し締めを受け付けている場合もあるそうです。

オートバックス環状通・光星店  舘下欣陽彦 店長代理
「定期的な増し締めやタイヤの点検、締めつけ作業は無料で行っていますので、気軽に声をかけていただき、より安心安全な運転を心がけてほしいと思います」

まとめ

タイヤの点検を行う業者によると、タイヤは複数のボルトで固定されていますが、1本でもナットが外れて緩んだり折れたりすると、ほかのボルトなどに負荷がかかり、危険性が高まるということです。自分では気付くことができない不備もあるので、定期的な点検は欠かさないようにしてほしいと思います。
また、トルクレンチはホームセンターや自動車用品店などで数千円で購入できるそうです。手元に1本置いておき、日頃から自分でチェックするのも1つの方法です。今回の取材を通じて、そうした小さな心がけが大きな事故を防ぐ第一歩になるのだと感じました。

2023年12月8日

北海道の車・交通安全に関する記事はこちら↓
シカとの事故を防ぐには? 
トンネルの明かりと安全運転のポイント

投稿はこちらから↓

シラベルカトップページ

ページトップに戻る