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サケの自然産卵に着目する 0755DDチャンネル

  • 2023年12月8日

サケの資源をどう回復させるのか…。ふか放流に加えて、サケが自ら遡上した川で産卵する「自然産卵」の力が注目されています。 釧路川水系では自然産卵の力を探る研究が始まり、斜里町ではサケの自然産卵を増やすための取り組みが進んでいます。
次回放送:2023/12/9(土)午前11:31- 総合テレビ
初回放送:2023/11/25

ふ化放流のサケ稚魚と自然産卵のサケ稚魚と
 

4月、釧路川流域のうち、サケが自然産卵していた支流を訪ねました。蛇行する小さな流れを観察しながら歩くと、ところどころ前年の産卵のあと、産卵床が見つかりました。その周りには—。

「チラホラ稚魚が見えますね」

道立総合研究機構の研究主幹・卜部浩一さんが指差した先には、体長数4センチほどのサケ稚魚たちが泳いでいました。この稚魚たちは、自然産卵で生まれたサケ稚魚です。いまこの自然産卵由来の稚魚たちが持つ力に視線が注がれています。

道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場 卜部さん
「自然産卵したサケ稚魚は、人工ふ化放流より効率は悪いのですが、自然の環境に適応した魚として次の世代につながっていくという点で、漁業にとっても決してマイナスではないと思います」

サケの一般的なふ化放流では、下流の捕獲施設「ウライ」でサケを捕まえてふ化場に運び、採卵・受精を経て稚魚まで人の手で育てます。
釧路川水系では2020年から、サケ自身にふ化場まで遡上させる方式になりました。この方式では、サケは自由に遡上するため、自然産卵でも稚魚が生まれます。
春には、ふ化場由来の稚魚とともに、自然産卵由来の稚魚が川を下るようになって、サケの遺伝子の多様性にも貢献します。

道立総合研究機構の研究グループは、海へ下る稚魚のサンプルを捕獲して、稚魚の中に自然産卵由来の稚魚がどれくらい含まれるのかなどを調べています。
分析はまだこれからですが、サケ資源の回復に向け、自然産卵が及ぼす効果が注目されています。

卜部さん
「放流する魚の中に自然産卵由来の魚が混ざるほどサケの回帰率が高まるという報告もあります。また、自然に産卵してくれるということは、お金も手もかけずに増えてくれるということで、上乗せ効果にも期待しています」

 

3つの支流のサケを比べる

10月、釧路川水系に産卵のために戻ってきたサケたちの調査に同行しました。道立総合研究機構の研究職員・大磯毅晃さんたちが集めていたのは、ホッチャレ、産卵を終えたサケです。

ホッチャレからはいろいろなことがわかります。
計測すれば体の大きさ、ウロコからは年齢、耳石(脳の下にある組織)からはどのふ化場から放流されたのかまたは野生なのか、体組織からはDNA情報が集まります。

サンプルは3つの異なる支流から集めます。そうすることで、①ふ化場由来、②自然産卵由来、もともとウライと関係なく再生産されてきた③野生由来、のそれぞれのサケたちのデータを集めて比較するのが狙いです。

道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場 大磯さん
「違いはどこにあって、なぜ、違いが生まれるのか。将来的には、支流間の遺伝子の違いを調べて、その違いがどういったものに影響しているかも解明したいと思っています」

自然産卵に着目してサケ資源の回復のヒントを探ることについて、卜部さんに改めて聞きました。

卜部さん
「自然界で生活するサケは、過去にはこれくらいの高い気温を経験してきています。気候変動の中でも生き抜いてきた生命力を、ふ化放流事業に受け継いでいくことができればいいと考えています」

 

サケをもっと川に遡上させる

斜里町から網走市にかけての沿岸は、秋、大勢がサケ釣りに訪れます。その沿岸の河口について、網走海区漁業調整委員会がサケ釣りの規制を2022年から強化しています。
ふ化放流を行なっていなくても、サケが遡上し自然産卵している川の河口での釣りを禁止して、サケが遡上しやすくする狙いがあります。
このうち斜里町内では、3河川の河口が新たに規制され、1河川で規制機関が延長されました。

斜里町では、役場、漁協など漁業関係者、研究機関が、町内の河川を歩いて、帰ってくるサケやカラフトマスの遡上数や産卵床数を調べてきました。調査は8月から12月にかけて10日に1回のペースで続けられています。

取材で訪れた9月上旬、新たに規制がされた3河川を含む6河川の調査に同行しました。河口規制のについて、斜里町水産林務課課長の森高志さんに聞きました。

「最終的にデータをまとめてみないとわからないですが、自然産卵にどの程度貢献しているかどうか注目しています」

 

サケをもっと上流に遡上させる

斜里町では、サケやカラフトマスをもっと上流まで遡上させて産卵できるようにする努力も続けています。そのひとつが、ポータブル魚道の設置です。必要な時期にだけ設置する仮設の魚道で、開発元の国立高専機構・香川高等専門学校高橋研究室の協力をえて導入しました。

最大の特徴はホームセンターで手に入る鉄パイプとベニア板で作れること。土台になる鉄パイプは漁協の職員が組みたて、ベニア板の加工はボランティアで参加した町民が手伝いました。

完成したポータブル魚道は、それまでサケの行手を阻んできた落差工に運び込まれ取り付けられました。落差を越えた上流には、産卵することができる砂利の川底が広がっています。

斜里町水産林務課 課長 森さん
「この川はサケが多い。ここを上れれば上流で産卵できるので、ぜひ上って欲しいです」

魚道の設置から10日後、香川高専のビデオカメラが、ポータブル魚道を使って上流にいく様子を記録していました。

2023年11月25日

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北のサケお兄さん まとめ

 

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