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レバンガ北海道 桜井良太選手 ラストシーズンへ

  • 2023年10月24日

やる気!元気!渡邉美希です。日本中が盛り上がったバスケットボールのワールドカップ。その熱が続くなか、バスケットボール男子、Bリーグが開幕しました。開幕前にレバンガ北海道で注目集めたのは、“鉄人”と呼ばれてきた桜井良太選手です。日本代表でもキャプテンを務め、日本のバスケットボール界を支えてきた1人です。

今シーズン限りで現役引退へ

北海道にきて17年目を迎えた桜井選手。B1の開幕前に、今シーズン限りで現役を退くことを発表しました。ファンにとっても大きな衝撃で、「さみしい」「まだまだやってほしい」という声が聞かれました。

桜井選手は、三重県出身の40歳。大学を卒業後、愛知県のチームに加入し、2007年にレバンガの前身、レラカムイ北海道に入団しました。1メートル94センチの高さと、スピードを生かしたプレーで、攻撃をけん引。献身的なプレーで若手選手の手本にもなってきました。

「いろんなことがありましたけど、あっという間ですね。引退まで同じチームに17年いるとは思っていなかったので、よく長いこといたなと」

北海道での17年を振り返った桜井選手。引退を決断したのは、最近ではありませんでした。

悲鳴を上げた足首 それでもやる以上は

渡邉「今シーズンでの引退を決めた時期、きっかけは?」
桜井選手「5シーズン、4シーズンくらい前ですね。4年間で3回手術をして、一気に飛んだり走ったりというパフォーマンスが、あまりできないようになりました。徐々に徐々に、調子が戻ってきている中、昨シーズンは、同じポジションの選手2人がけがをしたので、プレータイムが伸びました。試合勘が戻ってきて、なかなかいい感じに動けているなと思ったのですが、ビデオで見返した時にあれ、これだけしか動けてないんだと。自分の感覚とのギャップがすごかった。動けていると思った時でもそのギャップがすごかったので、これはもうなかなか戻ってこないなと改めて感じました。わかってはいましたが、改めて感じていました。あとは左足首が、もう無理だというのがいよいよ来たので、どこかで引退をするというタイミングを探してはいました。その2つの大きな要因が重なって、やっとタイミングがみつかった、表現は難しいですが、そんな感じです」

引退決断の要因となった左足首。桜井選手の足首を見せてもらいましたが、ハードに動くトレーニングの様子からは、想像できない状態でした。

桜井選手「もう、ここがぼっこり。テニスボールみたいになっているんですよ。昔はスッときれいな足をしていたのですが、骨も変形して、折れた骨もくっついていないので、折れっぱなしみたいな感じ。夜にトイレで起きたりすると、普通に歩けないので、引きずらないといけない。練習を始まる前には、30分から40分、超音波かけてならして、『じゃあ動くか』と、気合を入れないと動けない。シーズンが終わった後は、トレーナーと考えないといけないですが、でもまあ、シーズンは何とかごまかして乗り切れそうです」

渡邉「何とかもってくれ・・!という思いですか」
桜井選手「そうですね。もたせないといけないですね。最終戦でいなかったら、どつかれるので、けがをしないというのと、シーズン最後までプレーするというが目標ですね」

渡邉「コート上のアグレッシブな姿をみると、こういう状態だとは・・」
桜井選手「それを感じさせないようなプレーをしないといけないですね。やる以上は」

鉄人が持ち続ける思い “北海道を強く”

桜井選手は、2020年には636試合の連続出場を達成。けがを抱えながらもコートに立ち続ける鉄人は、北海道に来た当初から抱くある思いも原動力になっているといいます。

桜井選手「バスケが好きだからとか、もちろんそれはあると思いますが、やっぱりここまでやってくるともう好きという気持ちだけではないですし、1番はパフォーマンスがガッと落ちた時に『いや、まだ自分は戻せる、まだやれる』というふうに思っていたので、そこはモチベーションの1つではありましたね。もう1つは北海道に移籍してきたときに、自分が中心になってチームを強くしたいという思いで移籍してきたので、それが、まだ成し遂げられていない、というのも理由の1つですね」

チームへの思いとともに、桜井選手が強調したのは、支えてくれたファンへの感謝です。

渡邉「記者会見の中では、B1参入時の思いも話していました」
桜井選手「いろんな活動をしてきたなと思いますね。プロチームが発足して、続けていくというのはものすごく大変で、ファンやスポンサーの支えがなかったら、あっという間にこのチームは消滅していたと思います。Bリーグの中でも1番で支えてもらったなというチームだなと思います。それも北海道に残ってよかったなと思う理由の1つで、それが一番ですね」

ともに歩んできた折茂社長は

現在、レバンガの社長を務める折茂武彦さんは、2007年、桜井選手とともにレラカムイ北海道に加入。以来、クラブの礎を作り、歴史を築いてきた盟友です。

折茂さん「さみしさはありますよ。僕は49歳まで現役をやらせてもらいましたけど、彼はまだ40歳なので、思いとしては、やはりまだやってもらいたいなというのがありますし、コートから去ってしまうと、レバンガの歴史が1つ消えてなくなってしまうような思いがあるので、さみしい気持ちのほうが大きいですかね。彼と北海道にきて、北海道のために、クラブのために一生懸命プレーしてくれた選手なので、個人的にもクラブとしてもさみしい気持ちです」

渡邉「折茂さんから見てどんな選手ですか」
桜井選手「体の痛みや故障がありながらも立ち続ける姿勢は本当に、若い選手も含めて見習うところがあると思います。また、バスケットという競技はシュートを決めるところがフォーカスされがちですが、彼はそうではなくて、まずはコートに立った時に体を張って全力でプレーするというところ。そこが彼の最大の魅力であり、たくさんの方々に支持される要素だと思います。後輩の選手からも信頼が厚いですし、桜井には、みんな相談するので、お兄さんのような存在ですね。そして、僕とはプレースタイルは違うので、よくあそこまで体を張れるなといつも思っていました。普通は、年齢を重ねれば重ねるほど、ルーズボールや外国人が向かってくるのに対してどうしてもけがが怖いというのが、一瞬よぎるのですが、彼は一切そんなことはないので、あのプレースタイルでよく40歳までできたなと」

お互いが語る “〇〇のような存在”

長い時間を過ごし、様々な経験をともにしてきた折茂さんと、桜井選手。お互いどんな存在か聞いてみると、なんと同じことばが出てきました。

折茂さん「一緒にいることが当たり前になっているので、特別にご飯を食べに行きましょうとか、何か話をしようとかはないですが、2人とも気が向いたときに一緒にお茶をしたりしています。彼とまめに連絡を取って、何か話しているわけではないので、ある意味、自然な存在でいるのが当たり前みたいな。『よく仲悪いのですか』と聞かれますが、逆に仲は良すぎることもないですし、仲が悪いということもないです。だから、お互い良いのではないですかね。性格も違いますし、“空気みたいな存在”です。いてもいなくても大丈夫みたいな存在で、でも結果いなかったら困るし、違和感はありますね。今後、僕の希望としては、(桜井選手が引退後も)北海道に関わってほしいなという気持ちはありますが、彼がどう考えているのかというのも、また改めていろんな話をしなければいけないですが、改めて話をするというのもお互い得意ではないんです。いつもふざけているので」

桜井選手「ずっと近い存在だったので、そんなに長く一緒のチームにいるというのは、ほかにいないでしょうね。仲悪いとかはないですが、連絡を取って飯行こうよ、というのはないですし、本当にお互い“空気のような存在”になってきています。お互いにいろんな感情がありますが、折茂さんがレバンガを作ってくれて、やるって言ってくれたおかげで、僕のような北海道でバスケットがやりたいという、選手の環境がありますね。チームを続けるということは、いろんなチームを見てきましたが、ものすごく大変なこと」

桜井選手は少し恥ずかしそうに語りながらも、感謝の思いを込めていました。

渡邉「レバンガはどんな存在」
桜井選手「実家みたいな存在ですね。この先僕が引退後に、ほかのチームで働きますとなったとしても、実家はレバンガみたいになりそうですし、将来的にレバンガがさらに認知されて、北海道の人たちがレバンガの結果に一喜一憂できるようなチームになってほしい。そこに自分が関わっていけたらいいなと思います」

クラブの将来も懸念

桜井選手は、“実家”のような存在だというクラブの将来も懸念しています。それは、Bリーグが3年後に予定する構造改革のためです。

現在と同じ、B1と同じレベルのリーグに参加するための条件の一つは、1試合の平均入場者数を4000人以上にすることです。しかし、レバンガの昨シーズンの平均入場者数は3048人でおよそ1000人足りていません。桜井選手が開幕前に引退を発表した理由の1つには、来場者を増やしたいという願いもありました。1人でも多くの来場者を増やすため、桜井選手は自らのプレーでクラブの道筋を作ることも目指しています。

桜井選手「ワールドカップでの日本代表の活躍や映画の影響で、バスケ熱というのが今年盛り上がっていますが、たくさんの方に来てもらい、そしてリピーターとして足を運んでくれるかは、自分たちの活躍や勝つことが大切。僕たちは、コート上でハードワークしている姿を見せて、さらに勝つ試合を多く見せていきたい」

桜井選手「いよいよ僕のラストシーズンとなりました。レバンガはリーグの中ですごく強いチームではないのですが、これから強いチームになっていくための第一歩を今シーズン、しっかりと作っていきたいと思いますので、僕のラストシーズンを見に来るのと、レバンガがこれから強くなっていくための第一歩を見るために、会場に来てほしいです」

そして、迎えた開幕戦。
桜井選手は、短い時間の中でも体を張ったディフェンスを見せました。ベンチでは誰よりも早く立ち上がって声や拍手で仲間を鼓舞していました。

そして、桜井選手がコートに入ると、会場の雰囲気が変わり、応援が一段と盛り上がっていました。今シーズンのリーグ戦、鉄人・桜井良太選手の姿に注目です。

桜井選手と同じく今シーズン限りで引退を発表したコンサドーレ・小野選手の記事もどうぞ
今シーズンで引退 小野選手がもたらすもの

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