有珠山噴火から24年 気象台担当者に聞く火山の特徴
- 2024年4月12日
2000年3月31日に噴火した有珠山。当時、およそ1万6000人の住民が避難し、噴石や地盤の隆起などで850棟の建物に被害が出ました。前回の噴火から24年が経過し、次の噴火がいつあってもおかしくない時期に入っていると言われています。こうした中、気象台の火山防災官に有珠山の特徴や噴火への備えなどについて聞きました。(室蘭放送局 今江太一)
有珠山の特徴は?
室蘭地方気象台の宇内克成さん。火山防災官として火山活動の状況を監視し、解説などを行っています。有珠山について主に2つの特徴を挙げました。
室蘭地方気象台 宇内克成 火山防災官
「有珠山は定期的に噴火を繰り返してきた火山でして、だいたい30年前後の周期で噴火を繰り返しております。また有珠山は、噴火の直前に地震が急激に増加するといった特徴もあります」
特徴1:30年前後の間隔で噴火
宇内さんが特徴の1つとしてあげたのが、有珠山が定期的に噴火を繰り返してきた点です。1663年から9回の噴火があり、明治以降は30年前後の間隔で噴火していて、噴火開始からの最も短い間隔は23年となっています。
特徴2:噴火前に地震が増加
もう1つの特徴としては噴火の前に地震が増えるという点です。前回は噴火の4日前から火山活動による地震が始まりました。噴火前日には体に感じないものも含めて2400回を超える地震があり、震度5弱も観測しました。
一方、前兆となる地震が始まってから噴火するまでの期間は、その時によって異なります。前々回の1977年には地震開始からおよそ30時間で噴火しましたが、その前の1944年は噴火のおよそ半年前に地震が始まりました。また、噴火する場所も異なっていて、ふもとのこともあれば山頂のこともありました。
有珠山の状況は24時間観測
有珠山の状況は気象台が24時間体制で観測していて、北海道大学をはじめとする研究機関などともデータの共有を行っています。気象台は前回の噴火のあと、観測点を10か所以上増やし、人工衛星を利用した観測システムを導入するなど、体制を強化してきました。
得られた情報をもとに発表しているのが「噴火警戒レベル」です。住民や防災機関などがとるべき行動を5段階で示しています。火山活動が静穏な時はレベル1で「活火山であることに留意」となっています。2024年3月の時点で、有珠山はこのレベルとなっていて、具体的な噴火の兆候は見られません。
レベルは火山活動が活発になるにつれて上がっていきます。最も高いレベル5では居住地域に重大な被害が切迫しているとして避難が必要だとしています。また有珠山では、火山活動が高まっていく段階ではレベル3は運用せず、レベル2からレベル4に引き上げられます。その理由について宇内さんは次のように説明しています。
室蘭地方気象台 宇内克成 火山防災官
「有珠山の噴火する場所は、例えば温泉街だとか、人がふだん生活している場所から非常に近いところが考えられていて、少しでも避難する時間を稼ぐために、レベル3は運用せず即レベル4に引き上げるという形をとっています」
また、2023年11月からは地震の振幅のデータから算出した「地震波エネルギー放出率」という値を火山活動の状況を示す指標として活用し、噴火警戒レベルを判定する基準の一部を見直すなど、より正確で迅速な判断を行えるようにしています。
室蘭地方気象台 宇内克成 火山防災官
「観測データが増え、有珠山に関する知見も深まってきましたので、そういったものを新たに反映する形で2023年の11月に有珠山の噴火警戒レベルの判定基準を改訂しました」
有珠山噴火に備えて
噴火に備えるためにどういったことに注意すればいいのか。宇内さんは、基本的な対応は地震や津波といったほかの自然災害と変わらないといいます。
室蘭地方気象台 宇内克成 火山防災官
「例えば貴重品だとか、ふだん服用されている薬など、そういったものがあったらすぐに持ち出せるようにしておくといいと思います。ただ火山噴火の場合には避難の期間が1日や2日では済まず、長期間にわたることが多いですので、長い間ないと困るものは多めに持ち出したほうがいいと思います」
前回の噴火の際には、事前に避難が行われ、人的な被害は出ませんでした。宇内さんは、今後も有珠山の状況をしっかりと注視していくことが重要だとしています。
室蘭地方気象台 宇内克成 火山防災官
「基本的には噴火する正確な時期や場所の予測はちょっと難しいといいますか、できないです。有珠山の火山活動は急に活発化しますので、有珠山が活火山であるということなどについてしっかり知っていただくことが重要かなと思います。その上で、気象台から発表する噴火警報などの防災情報や地元の自治体が出す避難に関する情報について、しっかり気をつけていただくというのがやはり大事なのではないかと思います」
取材後記
地元の自治体では、避難計画を策定したり訓練を繰り返したりして、迅速な避難ができるよう準備を続けています。一方で、観光客や外国人労働者などへの対応に課題があるといった声も聞かれ、今後も状況にあわせて備えを見直し、強化していく必要がありそうです。有珠山は噴火前の特徴から「ウソをつかない山」とも呼ばれますが、噴火する場所や時期などすべてを予測できるわけではありません。私たちも有珠山への理解を深め、いざという時にどう行動していくか、日頃から考えていく必要があると感じました。
2024年4月12日
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