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ダブルダッチで世界へ 胆振の小学生5人の挑戦

  • 2023年11月30日

2本のロープを使う縄跳びの競技「ダブルダッチ」。跳び手と回し手が息をあわせながらパフォーマンスを行い、その技術や表現力、完成度などを競います。伊達市と壮瞥町の小学生でつくるチームが全国大会を制し、12月にアメリカ・ニューヨークで行われる国際大会に挑むことになりました。世界の舞台での活躍を誓い、奮闘する子どもたちを取材しました。 (室蘭放送局 上野哲平) 

結成1年で日本一に

国際大会に出場するのは壮瞥町を拠点に活動する小学生のダブルダッチのチーム「アブレイズ」です。メンバーは小学3年生から6年生の5人です。結成からわずか1年ですが、今年(2023年)10月に行われた全国大会の中学1年生以下の部門で全国40を超えるチームの頂点に立ちました。12月にニューヨークで行われる国際大会に、道内のチームとして初めて出場することになりました。

チームの持ち味は、ロープを跳びながらバク転をするなどダイナミックな技や演技にあわせた正確な縄さばき、そしてバスケットボールを使うなどオリジナリティーあふれるパフォーマンスです。

キャプテン 上名結衣さん
「全国大会の優勝は目標にしていたのでうれしい。国際大会の目標はノーミスで優勝することです。自信はめっちゃあります」

世界で活躍した指導者の教え

実は、5人が競技を始めたのはわずか2年前です。きっかけは町にダブルダッチのスクールができたことでした。立ち上げたのは地元出身の川南光さんです。ダブルダッチの国内大会で優勝したり、世界的な人気を誇るカナダのサーカス劇団、シルク・ドゥ・ソレイユでも活躍したりしてきました。

現在、スクールに通っているのはおよそ40人。その中で、本格的により高いレベルを目指したいという5人で結成したのが「アブレイズ」です。普段はダブルダッチの楽しさを伝えることを中心に指導する川南さんですが、5人には練習で厳しい言葉を投げかけることもあります。

川南光さん
「メンバーが全国大会や世界大会で勝ち進みたいという思いがあり、結成したチームなので、その熱量に応えるため、それなりに厳しくしています。本番でも最高の演技ができるようにできるだけ緊張感がある練習にするよう心がけています。メンバーたちは頑張っていて、相当はやいスピードで成長していると思います」

自分を見つめるダブルダッチノート

武田晃弥さん

国際大会で上位を狙うためのカギになると川南さんが考えているのが、5年生の武田晃弥さんです。バク転やブレイクダンスをしながら、ロープを跳ぶアクロバットの技が持ち味です。

ただ、全国大会では苦い経験もしました。連続で技を繰り出す際にロープに引っかかるなど、調子があがらず、披露するはずだった技を見送ることになったのです。

武田晃弥さん
「自分がそもそも技をできなくてやめることになった。悔しかった」

ダブルダッチノート

武田さんは、国際大会では今度こそ自分ならではのパフォーマンスを見せたいと練習に励んでいます。武田さんが毎日のように記入しているのが、川南さんから課せられたダブルダッチのノートです。今後の目標を定め、そのために何をすべきかを考え、自分自身と向き合います。

武田さんは週2回のチーム練習に加え、みずからの課題を克服しようと個人練習を欠かしません。安定して技を出せるよう、基礎体力の強化に力を入れています。

武田晃弥さん
「体幹がないとぶれて技ができないし、体力がないと疲れが出て、演技中にミスするかもしれない。一応できている技でもまだあまり形がきれいというわけではない。そこはもっと技術をあげていきたいです」

国際大会に向けたそれぞれの思い

武田さん以外のメンバーも、国際大会での優勝を目指して取り組んでいます。

左:上名颯介さん、右:上名結衣さん

主にロープをさばく回し手の6年生・上名結衣さんと5年生・颯介さん姉弟は、2人の息をさらにあわせようと体育館で練習に励んでいます。音楽にのせて一定の速度でロープを動かしますが、跳び手の技によって、速度を変えたり縄を止めたりするなど、きめ細かな対応が求められます。

上名結衣さん
「みんなの技を成功させる確率があがるので、きれいな円で縄を回すことを意識しています。縄を回すことで、みんなのアクロバットを成功させる時が一番楽しい」

齋藤侑さん

ロープを跳びながら、バスケットボールのドリブルをしたり、ボールを回したりするパフォーマンスをする5年生・齋藤侑さんは、ミスがないように自宅で念入りにボールさばきの練習を繰り返すなど、技の完成度を高めています。

齋藤侑さん
「難しい技やバスケットの技がうまくいった時が楽しいです。いつものように楽しみながら優勝します」

橋本彪我さん

チーム最年少3年生の橋本彪我さんは、自宅の一室を改装したスタジオでロープをはやく跳ぶ練習やバク転などのダイナミックな技の練習にも取り組んでいます。さらに、国際大会に向けた願かけであるものを控えています。

橋本彪我さん
「優勝して、みんなで我慢してきたお菓子やジュースを食べたり飲んだりして終わりたいです」

いざ世界の舞台へ

11月下旬、アメリカへの出発を前に国内で最後の本格的な練習が行われました。5人それぞれが磨いてきた力を1つにあわせます。国際大会のパフォーマンスには、全国大会で見送りとなった武田さんのアクロバットの技も取り入れられました。

国際大会の会場となるのはニューヨークのハーレムにある「アポロシアター」。これまで著名な歌手や演奏家が公演を行ってきた有名な劇場です。この舞台で、これまで積み重ねてきた練習の成果を発揮し、最高のパフォーマンスを披露することを目指します。

武田晃弥さん
「ダブルダッチは本当に好きなので、大変なことやできないこともあるけど楽しいです。前よりも技術があがっているので、国際大会では技を成功させたいです」

取材後記

ダブルダッチは競技の華やかさも魅力的ですが、それ以上にメンバーたちが練習を通して人間として成長していく姿が印象的でした。メンバーの保護者も子どもたちの成長を実感しているようです。「人前に出るのが得意な子じゃなかったのに、明るくなり、活動的になった」とか、「飽きやすかったが、1つのことに集中して取り組むことができるようになった」などと話していました。私自身も同じ年ごろの子どもがいる父親として、子どもたちが課題について考え、それを克服するために汗を流す姿を見て、とても頼もしく感じました。国際大会での活躍、メンバーたちのさらなる飛躍が楽しみです。

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