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“氷都・釧路のアイスホッケーを守る”キャプテン・大津晃介の思い

  • 2023年9月14日

9月16日に開幕するアイスホッケー・アジアリーグ。しかし、このトップリーグに今シーズンは釧路のチームが参加できない異例の事態となっている。釧路市を拠点とする「ひがし北海道クレインズ」は給与遅配などに端を発し選手がチームを離脱し、今シーズンの出場資格停止に。そして選手らは新チーム「北海道ワイルズ」へ移籍したものの、申請期限などを理由に加盟は認められなかった。
クレインズ時代からキャプテンを続け、日本代表選手でもある大津晃介にプレーの機会が限られる中での今の思いを聞いた。
(釧路局記者 島中俊輔)

クレインズマークの上で

クレインズの本拠地、釧路アイスアリーナ。国の特別天然記念物、タンチョウをモチーフにしたクレインズのマークが建物の入口からリンク上までさまざまな場所に見られる。

そのリンクの上で、大津晃介は緑を基調としたワイルズの真新しいユニフォームに身を包み、練習を続けていた。

大津晃介 選手
「試合がない週もたくさんあるかもしれない中で、どれだけ自分たちを高められるのか。絶対に自分たちの実力やプレーの質を下げちゃいけないと思ってて、なんなら上げていく」

9月6日に30歳になった大津。大学卒業後に7シーズンにわたって所属してきたのがクレインズだ。2019年の日本製紙の廃部、ひがし北海道クレインズの誕生、全日本選手権優勝にMVP。つらいことも、うれしいこともすべてクレインズで経験してきた。しかし大津はその「愛してきた」クレインズを離脱した。

これ以上続けたら、自分がもう終わってしまう

ことし5月、衝撃的な知らせだった。

「選手、監督ら全員がクレインズを離脱した―――」

3年連続で給与の遅配が起きていたこと。経営陣と連絡が取れないことがしばしば起こったこと。つい1か月ほど前にはファンを集めた感謝デー、スポンサーを集めたパーティーも行っていたが、その場で笑顔を見せていた選手たちは厳しい現実と向き合っていた。そして、大津を含め大半の選手や監督、スタッフが新チームとして発足した北海道ワイルズへ移籍を決めた。
大津に当時の気持ちを聞くと、深い葛藤があったことを明かした。

大津晃介 選手
「自分が入団する何年も前からクレインズはあって、この釧路に愛され続けてきた。そのチームに入り、誇りを持ってそのユニフォームを着ていて、クレインズを継承していく立場になった時に、自分たちの代でこのチームを終えてしまうというのは、すごく苦しい部分もあった。今でも本当に正しかったのかという感情はある。だけど、我慢して我慢して、それでもリンクに立とう、クレインズを愛そう愛そうと思ってやってきた中で、もうこれ以上この状態を続けたら自分がもう終わってしまうと思ったのが本当の気持ち」

我慢させてきた家族の存在

苦しい決断の背景には、家族との生活もあった。大津は釧路市内で妻と2人の娘と暮らす。午前中、キャプテンとして厳しい練習を終え、家に帰れば3歳と1歳になったばかりの娘2人とともに遊ぶ父の顔になる。給与の遅配が続いた時期には、生活費を切り詰めるため、家族に実家へ帰ってもらうこともあった。

大津晃介 選手
「妻と2人で真剣に悩んで、家族には我慢させることがたくさんあったと思うけど、自分を信じて今もついてきてもらっている。自分の原点、力の源、そしてスタート地点が家族だと思っていて、すごく感謝している」

プレー機会が限られる今シーズンへ

選手たちが離脱したことなどから、クレインズは今シーズンの出場資格停止の処分に。そしてアジアリーグへの加盟に取り組んできたワイルズも、申請期限を過ぎていたことなどから今シーズンの参戦は認められなかった。大津たちのプレーの場は限られることになった。

選手として苦しい状況に立たされたが、アジアリーグに参加する横浜グリッツと交流戦が決まるなど試合機会の模索は続いている。
先行きが見えない今だからこそ、大津が大事にしているのが氷の上での時間だ。チームとして強化を進める、攻守の切り替え。そして大津個人としては武器とするスピードだけでなく中長距離からシュートを決められるように。クレインズマークが描かれた釧路アイスアリーナで繰り返し、繰り返し練習を続けている。
その心の中にあるのは、アイスホッケー、そして未来への思いだ。

大津晃介 選手
「与えられた試合を必ず勝ち取っていく。そのメンタルだけを常に持ちながら、リンクの上に立って戦っていきたい。アイスホッケーという文化を未来永劫、必ず子供たちに引き継いで、継承していく責任があると思ってるので、日本アイスホッケー界を盛り上げていけるような存在になっていけたら」

(2023年9月14日)

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