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災害に備える 自治体の備蓄の現状は?

  • 2024年2月27日

能登半島地震では道路が寸断されるなどして、物資の支援が届きにくい状況となりました。千島海溝と日本海溝沿いの巨大地震で大きな被害が想定される中、道内の自治体はどのように準備を進めているのか。胆振地方の現状を取材しました。 (室蘭局 篁慶一) 

胆振東部地震を教訓に

2018年の胆振東部地震で、最大1100人余りの避難者が出た厚真町。当時、食料などが不足したことを教訓に、町内3か所の倉庫で備蓄を進めています。乳児用の粉ミルクを新たに備蓄品に加えたほか、携帯用トイレや給水袋などの数を重点的に増やしてきました。今後は、イスラム教の戒律に従った「ハラル」に対応した食料の用意も始めることにしています。

厚真町

また、町が取り組んでいるのが民間との協力です。現在、内陸の地震で最大1500人近くの避難者が発生すると見込まれていますが、不足が予想される備蓄品もあります。例えば、段ボールベッドは、現在、100床分を確保していますが、保管するスペースが足りないことなどから、すぐには増やせないと言います。

そこで、4年前、町は段ボールベッドを製造している恵庭市の会社と協定を結びました。この協定では、災害時に町に優先的に提供することが定められています。また、トイレ不足にも対応するため、3年前には別の会社とも協定を締結し、必要に応じて避難所などにコンテナ型の水洗トイレを設置してもらうことになりました。

厚真町総務課防災グループ 起田淳主幹
「町では被災した経験から必要なものを見直していて、現在は冬場に備えた暖房なども少しずつ増やしています。予算が限られる中でも、最悪の場面を想定して住民に対応できるような備蓄のあり方を引き続き考えていきたいです」

備蓄に悩む自治体も

一方で、備蓄に頭を悩ませている自治体もあります。その1つが太平洋に面した室蘭市です。市では、地震で約4000人の避難者が出ることを見込んで、3日分の食料などを準備してきました。しかし、2022年に道が日本海溝と千島海溝沿いの巨大地震の被害想定を発表し、室蘭市では時間帯によって津波の浸水域に2万5000人から最大4万6000人がいると推計されたのです。

これを受け、室蘭市はどの程度の数の避難者に対応する備蓄が必要なのか、道や民間から支援を受けることなども踏まえながら検討を続けています。ただ、備蓄を大きく増やすことには難しさもあると説明しています。

室蘭市防災対策課 武田学課長
「避難者の数が大きく増えた想定で備蓄をするとなると、財政的な負担が大きいですし、現在は、保管する場所も既にいっぱいになっています。予算と備蓄スペースの確保が課題になっています」

こうした状況は、胆振のほかの自治体でも生じています。例えば、苫小牧市の場合は、これまで1万人の避難者に対応する備蓄を進めてきました。しかし、道の巨大地震による津波の被害想定では、浸水域にさらに多くの人がいると見込まれているため、備蓄の見直しが必要だとしています。また、登別市や白老町では、予算や保管スペースが限られるため、目標の数を確保できていない備蓄品もあるということです。

住民もできる備えを

胆振でも、津波だけでなく火山の噴火や豪雨など、さまざまな大規模な災害に見舞われる可能性があります。命を守るためには、いち早く安全な場所へ逃げることが何よりも重要で、避難の際には食料などを入れたリュックなどの「非常持ち出し袋」を用意しておくと助けになります。

室蘭市の防災ハザードマップより

各自治体では住民に準備を呼びかけていて、持ち出し袋の中身についてはそれぞれの防災ハンドブックなどでも紹介されています。この中では、火を通さずに食べられる非常用食品や飲料水のほか、携帯ラジオや懐中電灯、簡易トイレなどが挙げられています。一方で、持って逃げられる重さになっているか、使用の期限が切れていないかなどを定期的に確認する必要があるとしています。それぞれの自治体で備蓄の準備や検討が続けられていますが、住民1人1人が災害への備えを進めることも大切です。

2024年2月27日

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