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室蘭コミュニティーFM 地域をつなぎ防災力強化へ新サービス

  • 2023年9月5日

2008年に放送を始めた室蘭市のコミュニティーラジオ局「FMびゅー」。5年前の胆振東部地震では、発生直後から60時間にわたって放送を行うなど、災害時の情報発信に大きな役割を果たしました。今年(2023年)、開局15周年を迎えたのにあわせ、地域の防災力の強化につなげようとスマートフォンを活用した新たなサービスを開始しました。地域の人たちの命を守る取り組みを取材しました。(室蘭放送局 小林研太)

2018年9月6日のFMびゅー

胆振東部地震で緊急放送

『ここで、FMびゅーから地震に関する情報をお伝えいたします。先ほど、9月6日午前3時8分頃、北海道胆振地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生しました』

5年前の2018年9月6日。「FMびゅー」のパーソナリティ、井川康子さんが地震を伝えた第一声です。この地震では発生直後から北海道全域が大停電。いわゆるブラックアウトの中、FMびゅーのスタッフは自家発電機を使って地震から28分後に放送を始めました。

わずかな電気を頼りに放送を準備

放送では地域住民に繰り返し身の安全を守るよう伝えながら、自治体や鉄道、病院、学校などのライフラインに関わる情報も発信し続けました。60時間に及ぶ緊急放送を支えたのは、FMびゅーに届いたリスナーからのおよそ250通のメッセージでした。停電の状況や温泉の営業情報など、各地から暮らしに関わる身近な情報が次々と寄せられました。

また、メッセージの中には、多くの励ましの声もありました。

『あなたの声が安心します』
『発電機があるので携帯を充電できますよ』
『地震の恐怖もありましたが、感動して聞いてました』

暗闇の中、多くの人たちが不安を募らせる中、地域の人々を励ます役割も果たしました。

スマホを活用した新たな取り組み

スマホアプリでFMびゅーが聴ける

開局して15年目を迎えた2023年8月、自然災害などの際に役立ててもらおうと、FMびゅーは新たなサービスを始めました。「Radimo」(レディモ)という無料アプリをダウンロードすることで、スマートフォンで番組が聴けるようになったのです。

プッシュ通知で災害情報が手に入る

また、スマホのプッシュ通知で地元の災害情報が得ることもできます。今いる地域で発表された避難情報などがスマホに届く仕組みで、ラジオを聴いていなくても災害にいち早く気づくことができます。

さらに、このアプリは、各町内会の防災担当者などから地域の情報を集めることにも活用される計画です。道路の冠水や土砂崩れなど、地域で起きていることを写真や位置情報とともに、アプリを通じてFMびゅーに送ってもらい、放送などに役立てていこうとしています。ゆくゆくは『●●町の▼▼川が氾濫しています』だとか『◆◆公園で崖崩れが起きている』といった細かな情報も提供することを目指しています。

沼田社長「私たちは地域の橋渡し役」

FMびゅー 沼田勇也社長

FMびゅーの沼田勇也社長に、5年前の胆振東部地震の経験や災害時のコミュニティーラジオ局の役割、そして新たなサービスなどについて聞きました。

ーーー15年を振り返っていかがですか?

日々の放送の中で皆さんからたくさんのメッセージをいただきますし、街を歩いていても「ラジオ聞いたよ」とか「よかったね」といった声を直接いただけるのがコミュニティーFMの良さですね。この15年を振り返ると、やはり強烈に記憶に残っているのは災害のことです。2012年の暴風雪による地域の大停電や、2018年の胆振東部地震です。そういった大きな災害のときは特にたくさんのメッセージをいただきまして、いただく情報ももちろんなんですけども、「体に気をつけて頑張ってね」という優しい言葉もたくさんくるんです。それがとても強く記憶に残っていて、そういった方に安心して楽しいと思ってもらえる放送にしたいなと思いますね。

ーーー5年前の胆振東部地震を振り返っていただけますか?

地震は朝の3時過ぎにあって、その揺れかたで「ただ事ではない」とすぐに感じて飛び起きました。津波の心配はないと聞いて、とにかくすぐに出勤しましたね。停電してテレビもつかないという状態で皆さん不安を感じている中、少しでもこの身近な室蘭のラジオ局が情報をお伝えし、安心な環境を少しでも早く提供したいという一心で、30分以内に放送を開始することを目標に準備しました。
放送を始めてからも情報がなかなか入ってこない状況でしたので、室蘭市と登別市、それに伊達市の市役所と気象台に1人ずつスタッフを配置して、情報が届く環境を作って放送していきました。ただ、夜が明ける前の状況がわからない中での時間はすごく長く感じました。地震が発生したという情報しかないので、それ以外に何を伝えたらいいのか本当に悩んで、気をつけるべきことを伝えるしかありませんでした。ただ、そこでとても役立ったのが地域の皆さんからのメッセージでした。「ウチは電気がつきました」とか、「病院が緊急対応をしている」とか。そういった日頃の繋がりを感じながら放送していくことができ、60時間、ほぼ3日間放送を続けました。

ーーーその体験が今回のサービスにつながったのですか?

免許を取得して放送しているラジオ局ですので、間違いのない情報を発信するという大事な役割を担っています。ラジオは情報収集源として生き残れる確率が高い道具ですが、今はラジオを持ってない人もいたり、聞き方がわからない人もいます。そんな中、最近はスマートフォンを多くの人が持っています。これだけ行き渡った道具を活用することが一番素早く情報を伝えられると思うので、今回このアプリで番組を同時配信するだけでなく、プッシュ通知という文字情報も伝えられるという点に注目しました。

町内会の担当者に説明する沼田社長

ーーーなぜ町内会と連携を考えたのでしょう?

「崖が崩れている」とか「道路に穴が開いている」といった自分が住んでいる町の情報が入ってきやすく、なおかつ信頼のおける人から情報が届くルートも保持していきたいと思ました。そうすることでより速やかに二次災害を防ぐことができ、住民の安全を守り続けるということに役立てると思ったからです。今後も協力をお願いして、少しずつ町内会の情報発信源を増やしていきたいと思います。

ーーー今後のFMびゅーに求められる役割は何でしょうか?

元々ラジオは双方向のメディアです。一方通行だと成り立たないぐらい、地域で聞いているリスナーが重要です。私たちは地域の方たちが発信してくれる情報の橋渡し役。ですから、地域の皆さんが一番大事であることは当然で、これからもその情報を間違いなく届けることや、素早く届けること。いま誰に何が求められているのかをしっかりと把握して伝え続けていくこと。それが自分たちの役割だと思っています。

胆振東部地震から5年 特設サイト 
あの日の記憶や教訓を忘れずに、次の大災害に備えるため、被災地の現状や減災に向けた新たな取り組みなどについてお伝えします

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