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太平洋沿岸襲う津波をCG化 リアルに感じて”わが事”に

  • 2024年4月12日

私たちが暮らす北海道で、いつ起きてもおかしくない巨大地震。 命を守るために重要なのが、津波への備えです。 NHKでは、太平洋沿岸の3つの市に押し寄せる津波を、道の想定に基づいて、CGで可視化しました。 津波の恐ろしさをリアルに感じてもらうことで、ぜひ、防災意識を高めてほしいと思います。

街に押し寄せる津波をCG化

NHKでは、ことし3月、東日本大震災から13年となったのに合わせて、千島海溝と日本海溝沿いの巨大地震による太平洋沿岸の津波について、道が3年前に公表した想定に基づき、被害が最も大きいパターンをCGで映像化しました。
津波をCGで映像化したのは、釧路市、苫小牧市、そして函館市です。

釧路では道内最多の死者数と想定

まず、16万人近くが暮らす、道東の釧路市のCGです。

千島海溝で発生する地震では、津波は30分ほどで沿岸に到達します。
その高さは中心部でおよそ7メートル。
海岸から4キロ離れた、隣町の釧路町のショッピングモールにも押し寄せます。
釧路市の死者は、最大で、人口の半分以上の8万4000人になると想定。
道内自治体で最大の死者数です。

苫小牧では工業や物流にも大きな影響か

続いて、道内の工業や物流の拠点都市、苫小牧市のCGです。

日本海溝で発生する地震では、8メートルを超える津波が40分ほどで到達。
沿岸を走る国道や線路を飲み込み、市役所や住宅が集まる中心部に押し寄せます。
津波は、製油所や工場がある港湾エリアにも。
最大で4万人の死者が想定されています。

函館 津波は東西から何度も

最後は、函館市のCGです。

ここでは津波が特徴的な動きを見せます。
日本海溝で発生する地震では、およそ45分後、東側から津波が押し寄せ、その15分後には西側からも津波が来ます。
津波が函館湾を回り込み、押し寄せるためです。
津波は、函館駅や観光地などが集まる市の中心部を襲います。
死者は最大で2万9000人と想定。
津波は沿岸部だけでなく、市の広い範囲に及ぶとみられています。

津波の動きや高さを俯瞰すると

続いては、道の想定をもとに、津波の動きや高さを表した地図で俯瞰的に見ていきます。
それぞれ、被害が最も大きいパターンを紹介します。

まず、釧路市です。

釧路市では、津波が30分ほどで海岸に到達し、その後、川を遡上して、海岸から10キロを超える場所にまで及びます。
浸水面積はおよそ9000ヘクタール。
建物の被害は2万7000棟に及びます。

 

続いて、苫小牧市です。

苫小牧市では、津波は40分ほどで海岸に到達し、住宅が集まる中心部を広い範囲で飲み込みます。
浸水面積は、道内の自治体で最も大きい、およそ1万ヘクタール。
建物の被害は1万3000棟に及びます。
市内に集まる工業や物流関係の施設にも大きな被害が出るとみられていて、その経済的な影響は道内に限らず、全国的なものとなるおそれもあります。

 

最後は、函館市です。

函館市の場合は、まず、東側から津波が押し寄せます。
このあと、函館湾に入り込んだ津波が西側から押し寄せます。
函館では、こうした現象が何度も繰り返されます。
浸水面積はおよそ2600ヘクタール。
建物の被害は4万8000棟に及びます。
道内有数の観光都市として知られる函館市には、災害時、多くの観光客が訪れている可能性もあり、地元の住民だけではなく、土地に不慣れな観光客の安全確保も大きな課題です。

被害減少のカギは避難意識にあり

道の被害想定では、太平洋側の市や町の死者の数は、最大で14万9000人に上るとされています。
ただし、地震が起きたあと、早めの避難や、津波避難ビルといった施設の整備などを進めれば、死者数は3分の1の4万1000人になると想定されています。
この数字が非常に大きなものであることに変わりはありません。
ただ、津波による被害を防ぐためには、私たちの防災意識、特に迅速な避難を徹底するという意識が大切であることが、改めて分かります。
ここで1つ、紹介したいことばがあります。
13年前の東日本大震災の被災地、岩手県釜石市に、震災後、当時の記憶を受け継いでいこうと建てられた石碑があります。
そこに刻まれた、地元の中学生が考えたことばです。

「100回逃げて、100回来なくても、101回目も必ず逃げて」

これまで何度か避難したけど、1度も津波が来なかったという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、次に起こる地震が、これまでと同じように津波が来ない、とは限りません。
震災の教訓として、北海道で暮らす私たちも胸に刻む必要があると思います。

津波をリアルに感じて”わが事に”

津波をCGで可視化したことについて、視聴者の方々からは、「見たことがある風景が津波に飲み込まれていくため、非常にショッキングで、リアリティをもって受け止めることができた」とか、「視覚に訴える映像を通して津波の怖さを感じることで、防災意識が高まれば被害の減少につながると思います」といった声をいただきました。
今回の津波のCGを通して、津波の恐ろしさをリアルに、そして”わが事”として感じてほしいと思います。
その上で、自宅や学校、職場周辺のハザードマップを参考にして、避難所や高台の場所を確認したり、家族など周囲の人たちと、災害時の行動について、今いちど、話し合ったりするなどして、できることから1つずつ、備えを進めてほしいと思います。

2024年4月12日

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  • 下京 翔一朗

    札幌放送局

    下京 翔一朗

    2013年入局  千葉、盛岡、福岡を経て2023年8月札幌局に着任 遊軍記者として災害や事件など社会的課題を取材

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