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札幌 テレビ塔横の創成川でサケ稚魚誕生! サケと人の"協働作業"

  • 2023年4月11日

2022年の秋、札幌市のオフィス街の真ん中を流れる創成川にサケたちが産卵のため遡上してきました。それから5ヶ月たった春、その子どものサケ稚魚たちが創成川の流れに姿を見せました。大都会の川で命をつないだその裏側に、サケと人の"協働作業"がありました。
放送は、ひるナマ!北海道、4/13(木)午前11:45から「北のサケお兄さん」のコーナーです。

野生のサケ稚魚が創成川に
 

2023年4月、春の創成川を、たも網を持って歩く人たちがいました。防寒着の上に身につけたゼッケンに「調査中」の文字。豊平川さけ科学館と札幌ワイルドサーモンプロジェクトの、調査チームでした。
調査の狙いは、創成川に産み付けられたサケの卵が稚魚になって、命を次の世代につなぐことができたのか、確かめることです。

豊平川さけ科学館と札幌ワイルドサーモンプロジェクトの調査

稚魚がいそうな流れの緩やかな場所を見つけては、たも網を沈めて水中を足で探って魚を追い込み、サケ稚魚がとれていないか、つぶさに観察します。
同じ動作を繰り返しながら30分。この調査のリーダー、豊平川さけ科学館の有賀さんが思わず声をあげました。

「サケです。やったー」

体長4センチ足らずの野生のサケ稚魚が、網の中に入っていました。

創成川生まれのサケ稚魚

人工河川でサケは子孫をつなぐことができるのか

札幌市内の各河川で野生のサケ稚魚を見つけるのは、それほど難しいことではありません。もっとも大きな豊平川はもちろん、住宅街を流れる一跨ぎできそうな小河川まで、海とつながっている多くの川では、サケが命をつないでいるからです。
そんなサケたちを見てきた豊平川さけ科学館の専門家が、創成川で稚魚発見の喜びの声をあげたのには理由があります。

2022年の秋、札幌市内の各河川に例年より多くのサケが帰ってきました。創成川にも、それまでにない多くのサケが遡上、さっぽろテレビ塔の横で卵を産みました。

2022年11月撮影 創成川にやってきたサケ

しかし、創成川は人工河川のため、サケが卵を産みつけるための砂利の層が薄く、厳冬期に凍結を防ぐ、温度が一定の湧き水も出ていません。
どちらかといえば、悪い環境に産み付けられた卵が、悪条件を克服してふ化し、稚魚になるのは、簡単ではないと見られていたのです。

卵の成長を確認

サケは、メスが尾びれをつかって砂利を跳ね上げ、底にできたくぼみに卵を産みつけます。同時に、オスが精子を放出して受精させます。メスは、その卵の上に跳ね上げた砂利を被せるので、卵を産んだあとは、こんもりした砂利の山となって、そこが卵を産んだ場所、産卵床とわかります。

テレビ塔わきの創成川にできた産卵床はあわせて30ヶ所。12月、卵が生きているのかどうか確かめる調査が行われました。
卵が生きていれば、この時期、卵の中に「目」ができ、調査のため砂利の外に出しても卵そのものが死ぬことはなくなります。

産卵床の砂利を慎重に崩していくと、卵がパラパラと姿を見せました。砂利の層がうすいため、十分に深いところに産めず、産卵の時に流されてしまった卵も少なからずある様子でした。
それでも、サンプルで集めた卵を調べると、黒い目ができているのを確認。条件が悪いなりにも卵たちは成長していました。調べた卵は、再び砂利の中に戻されました。

黒い粒状のものが目です

最大のピンチから救ったのは人間の活動!?

サケの卵たちに最大のピンチがやってきたのは1月下旬のことでした。寒波がやってきて、川面がすべて凍ってしまったのです。

2023年1月31日の創成川 南1条付近

卵はどうなっているのか…。もし、川底の砂利の中まで凍ってしまえば、卵は死んでしまいます。
このピンチをはねのけたのは、テレビ塔から一丁上流側にある橋のたもとから流れこむ大量の地下水でした。

送水管から流れ込む地下水は、近くのビル工事の現場で、地下の水位を下げるためにポンプで組み上げた水で冬の間はとまっていました。それが、全面結氷した直後のタイミングで放水を再開。あっという間に、凍りついた川面をとかし、川の流れが復活しました。

水温13度の地下水が氷を溶かした

この水の温度は13度。人間の活動で発生した放水は、まるで自然河川の湧き水のような働きをして、凍結から卵をすくったようでした。

サケと人の"協働作業"!?

実は、この地下水の放水は、秋のサケの産卵とも深い関係がありました。

豊平川さけ科学館 有賀学芸員
「産卵床は、創成川の左岸側、つまり、放水された地下水が流れていた側に集中していました。サケが地下水が流れている場所を選んだ結果だと考えられます」

テレビ塔横での創成川のサケ産卵と稚魚の誕生は、どうやら、いくつもの偶然が重なった結果とも言えそうです。

  • 2022年、例年になく多くのサケが帰ってきたこと
  • 産卵時期に近くの工事現場から地下水が放水されていたこと
  • 厳冬期に川面が凍ったあとに放水が再開したこと

サケと人間の"協働作業"は、大都会でありながら、サケのまちでもある札幌ならではの物語でした。

 

サケカメラ2021-2022
札幌市の川の野生を追った0755DDチャンネルのコンテンツ。

サケカメラ
豊平川のサケの遡上を見守る固定カメラとサケ情報のページです。

ひるナマ!北海道のページ
2023年4月からは午前11時45分〜

北のサケお兄さん まとめ
読み物や放送予定はこちらでわかります。

 

 

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