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紋別大規模停電から1年 教訓は

  • 2024年2月21日

紋別市ではおととし12月、大雪で送電線を支える鉄塔が倒れ、市内や周辺地域で大規模な停電が発生し、市民生活に大きな影響が出ました。あれから1年。紋別市や電力会社が進めてきた対策を取材しました。
(北見放送局 大谷佳奈) 

真冬に起きた大停電

おととし12月23日、紋別市は暴風雪に見舞われました。この影響で送電線を支える鉄塔1基が倒れ、市内やその周辺地域では3日にわたり、最大2万4000戸が停電しました。真冬に起きた大停電。住民たちは、防寒対策や携帯電話の充電場所確保など、真冬の避難生活の課題を再認識しました。

備えるための“体験授業”

1年前の大停電を教訓に、紋別市の潮見中学校ではことし1月、真冬の避難所生活を体験する授業が行われました。授業の想定は、停電が起きるなか、暴風雪警報が発表されたというもの。参加した1年生58人はカーテンが閉められた体育館で、懐中電灯などで明かりを確保したり、寒さをしのぐために重要な段ボールベッドを組み立てたりして、厳冬期の避難所では何が必要かを考えました。

授業に参加した生徒
「毛布とカイロがありがたかったです。また、暗いところでも人と話すことは大事だなと思いました。家族同士で避難場所を確認したり、保存水を準備したりして、災害に備えたいです」

「きょうの授業で配布された毛布やライト、予備の電池のほかに、うちには犬もいるので、ペットフードも準備しておきたいです。避難所では自分のことじゃなくて、みんながみんなの事を思いやって行動できたら、誰もけがをしないですむかなと思いました」

市も“避難所開設“への備え

備えているのは学校だけではありません。紋別市ではこれまで、食料や毛布などの備蓄品を避難所ごとに保管していました。しかし1年前の停電の際に、どの避難所にどういった備蓄品があり、どういったものが不足しているのか、すぐに把握することができませんでした。そのため市は、郊外にある2つの避難所を除く、すべての避難所の備蓄品を1か所にまとめて保管することにしました。こうすることで有事の際は、開設した避難所にすぐに必要な数を運ぶことができるようになりました。
また、備蓄品の数も見直しました。人工透析や人工呼吸などで電気を必要とする人がいることから、ポータブル電源の台数を3台から13台に。発電機は5台増やして23台にして、万が一に備えています。

さらに、紋別市の全職員に貸与されているタブレットを、停電などの災害時に有効活用する準備も進められています。おととしの停電のあと、市はWi-Fiを使って、災害対策本部に設置される画面に映像や音声を送れるかを確かめる訓練を実施しました。対策本部で避難所の状況を映像共有することで、避難所に何が必要か、人が足りているかなどを、すぐにチェックできるようになります。

紋別市庶務課(防災担当)石川眞主査
「災害は突発的に起こりますが、できるかぎりの準備をしっかりして、避難所の運営のあり方や要配慮者対策のための連携を深める部分など、今後検討を深めていきたいと考えています。また市民の皆さんには、国の支援物資が到着するまでの食料や水などは準備しておいた方がよいということを、今後の防災活動を通じて伝えていきたいです」

電力会社も対策

そして、停電を引き起こした鉄塔の対策も進められています。電力会社によりますと、鉄塔が倒壊した原因は、送電線についた大量の雪が原因だと考えられています。
送電線の上に湿った雪が降り積もると、着雪した雪の重みで送電線が回転します。そしてそこにさらに雪が積もって、また回転します。これが繰り返されると送電線のまわりに大量の雪がつき、これが鉄塔の倒壊につながったとみられています。

そのため北海道電力ネットワークは、送電線が回転しないようにする「ねじれ防止ダンパ」と呼ばれるおもりを設置。これにより、送電線のまわりに大量の雪がつくのを防ぐことができるようになりました。

北海道電力ネットワーク北見支店 喜多見英次 副支店長
「なかなか今の自然状況を鑑みますと、これで本当に大丈夫と断言できるとは思っていません。カメラで常時電線の状況、雪がどれぐらいついているかっていうのを観測できる体制強化も図っており、今後も電力の安定供給に努めていきたいと考えています」

取材後記

「災害はいつ起こるか分からないので、日頃の備えが大切だ」ということを、今回の取材を通じて改めて感じました。ただ災害への備えに終わりはありません。紋別市では災害時に、広報車を使って住民に情報を伝えていますが、冬は窓を閉めている家が多い上に、暴風雪になると強風によってさらに広報車の音が聞こえづらくなります。このため市は、広報車以外に情報を伝える手段がないか、検討を進めています。真冬の停電は、住民の命に直結する大きな課題です。日々更新されていく新しい情報を引き続き取材し、日頃の「そなえ術」を共有できるように発信していきたいと思います。

2024年2月21日

「暴風雪と向き合う街、留萌市の暴風雪対策の今とこれから」
「災害時、真冬の寒さから身を守るために」

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