科学と世の中をつなぐ〜北大ポスドクチームの挑戦〜 0755DDチャンネル
- 2023年12月22日
「炭素」になって地球上の循環を体験すると温暖化問題がよくわかる!? 北海道大学のポスドク研究員チーム「エゾリンク」が 環境学習イベント「カーボンクエスト」を開催! メンバーたちの奮闘を追いました。
2023年12月23日(土)午前7:55- 総合/NHKプラス見逃し
「炭素」になってサイコロを振る
秋の北海道大学・総合博物館のとなりの林。「キミは今、待機中を漂う酸素です」の張り紙の前で、子どもと大人たちが大きなサイコロを振ります。出た目が6だと、張り紙に書かれた項目「6」を読んで—
次のステーション「植物」まで走ります。
大気・海・植物・動物・土・石炭石油の6つのステーションを巡ってサイコロを振りながら、経路をメモに記録していくのが、カーボンクエストです。
炭素が地球上をどうやって巡っているのか、体を動かしながら学べる屋外ゲームです。
開催したのはポスドクチーム
このカーボンクエストを開催したのは、北海道大学のポスドク研究者、5人が作ったチーム「エゾリンク」です。5人は専門分野は違うものの、いずれも博士号を持つ、期限付き雇用の研究者=ポスドクです。
チーム結成のきっかけは、たまたま一緒に使っている研究室の中での会話でした。
ポスドクチーム代表 安東義乃さん
「わたしたちは単年度雇用なので冬になったら、次来年どうする?という話を仲間うちでするんです」
安東さんたちは、いろいろな事情で研究を諦めざる得なかった「ポスドク」の姿を間近に見てきました。
安東さん
「せっかく専門スキルを学んだのに去っていかなければならないという...。どんどん人材が失われていくという危機感をみんな共有していて、なんとかしたいね、というのがきっかけになりました」
科学と世の中をつなぐには
結成されたポスドクチームが目指すのは、科学者の視点を生かして、科学と世の中をつなぐ事業です。具体的にはSDGsや地球温暖化問題を切り口に、リカレント教育や企業研修、環境学習のプログラムサービスを開発します。将来的にはポスドク研究者が研究を続けていくための選択肢を増やすことが目標です。
その第一歩となった環境学習プログラム「カーボンクエスト」は、一朝一夕にできあがったわけではありません。
8月、参加者に評価してもらうためのテストイベントを開きました。プログラムの構成は主に4つです。
1)座講で基本的な知識を学ぶ
2)実験で二酸化炭素の存在を実感する
3)屋外に出て、体を動かしながら炭素の循環を体験
4)グループワークで理解を深める
イベントは概ね好評で、中にはプログラムの途中で「これはおもしろい」と声があがったものの、終了後の聞き取りでいろいろな課題が見えてきました。
- 「ふりがな」がないと、同伴していた子どもが読むことができない。
- 実験は、みんなの前で実験結果を示して参加者に見つけてもらった方がよいのでは。
カーボンクエスト開催!
テストイベントから3ヶ月、ポスドクチームが改良を検討してきた「カーボンクエスト」は11月23日、開催されました。参加者は21組の親子連れです。
親子で参加ということで、サブタイトルには「炭素になって、さあ冒険だ!」のフレーズ。このコピーは、チームメンバーの家族が、子どもならではの視点で提案してくれました。
チームメンバー 寺田千里さん
「大人の話と思わないで子どもに相談してみると、いろいろなアイデアをくれました」
エンターテインメント性を高めて、わかりやすくするための工夫も随所にありました。
プログラムの進行役は、ともにチームメンバーの權台五さんが「博士役」に、風張喜子さんが「助手役」をつとめ、白衣をきて、2人の掛け合いで進めていきます。効果音やBGMも、雰囲気をもりあげます。
ペットボトルに入れた二酸化炭素が水に溶かす実験。ペットボトルがへこむことで、二酸化炭素の存在を実感してもらうのが狙いです。どんな材料で二酸化炭素を発生させて、どのくらいに水に溶かすをわかりやすいのか。入念にリハーサルをしてのぞみました。
屋外での炭素になって地球をめぐる体験では、見た目も楽しい巨大サイコロを用意。虫メガネを使わないと解けないクイズも用意して、笑い声や歓声が絶えませんでした。
室内に戻ってのグループワークは、親子ごとに取り組んでもらうことで、話が弾みました。
チームメンバー 井上貴央さん
「今回は、エンターテインメント性を高めるように作りました。その効果は出たと思います」
ポスドクチームに「仕事」の依頼
カーボンクエスト開催から1週間後、ポスドクチームは、札幌市環境プラザを訪れていました。環境プラザは、札幌市の環境活動の拠点施設として、展示物で環境について学ぶ場を提供したり、環境に関する情報を発信したりしています。
メンバーを迎えた環境プラザの木下涼美さんは、これまでのチームの活動内容を知り、カーボンクエストの現場も見学しました。
ポスドクチームは、木下さんから、環境プラザで実施する見学ツアーのひとつとして、新たなプログラムの開発の依頼を受けました。
環境プラザ木下涼美さん
「環境問題と『楽しい』を、一緒につなげることができたらうれしいです」
ポスドクチーム代表 安東義乃さん
「思っていた以上にいろいろなことを考えてくださっていて。こういう形で一般の方にサービスを届けられるということが分かってよかったです。活動をいろいろと広げて行けたらと思います」
ポスドク5人のチームが始めた挑戦は、さまざまな人たちの共感を得ながら、広がりを見せています。
2023年12月22日
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