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鈴木知事インタビュー 2023年を振り返る 目指す北海道は【全文掲載】

  • 2023年12月27日

ことし4月の知事選挙で2期目に入った鈴木知事。この1年は、Rapidus(ラピダス)の進出などで道央圏を中心に企業の誘致が相次ぐ一方で、深刻な人口減少や地域の衰退によるさまざまな課題にも直面しました。知事はどのように受け止め、そして来年以降、どんな北海道を目指すのでしょうか。(聞き手:道庁キャップ  桜田拓弥)

ーーーことしはコロナの5類相当への移行、Rapidusの千歳への進出、知事選など、さまざまな出来事がありました。この1年、どう振り返りますか?

いろいろな動きがあった1年だったなと振り返っています。新型コロナウイルスの対応も5類に移行して、初めての年末年始で、多くの方が集まって年を越されるという時間を過ごすのも久しぶりだなという方も多いんじゃないかなと思っています。
 

これから年が明けたら、大雪像を作った雪まつりもフルスペックで行われますし、そういった意味では、経済も活性化する中で、大きな節目を迎えた年だったなと思っています。3年以上の長きにわたって、道民の皆さんに感染対策、本当にお力添えいただきました。本当に皆さんに感謝を申し上げたいと思います。
 

ただ、今、冬に入って空気も乾燥していますし、コロナだけではなくて、体調を崩される方も多くなってきています。引き続き医療従事者の皆様が年末年始もご対応いただいているところもありますので、ぜひ、体調管理には、皆様ご注意いただいて、楽しい年末年始を過ごしていただければなと思います。

北海道もコロナだけではなくて、さまざま動きがありました。G7の環境大臣会合も、選挙直後にありました。「Team Sapporo-Hokkaido」ということで、今後、官民あわせて10年間で150兆の投資を創出すると政府が言っている中で、できるだけ多く、再エネのポテンシャルが高い北海道で、投資を獲得していきたいという動きにG7を契機につながりましたし、洋上風力の関係も、5か所が有望な区域として指定されるなど具体的な動きにもつながりました。
 

9月にはアドベンチャートラベルワールドサミットがありました。自然だとか身体的体験、アクティビティー、そしてアイヌ、縄文などの異文化体験、こういった要素を複数持つ旅行形態ですけども、今、コロナの段階が変わって、世界からお客様をお迎えできるタイミングで開催できた。これはすごくうれしいことでした。アジア初の開催になりましたので、アドベンチャートラベルワールドサミットを契機に、さらに北海道の観光をより魅力的なものにしていきたいと思います。
 

また中国の輸入停止措置、水産物に対する動きがありましたが、全国豊かな海づくり大会北海道大会も天皇皇后両陛下のご臨席をあおいで、38年ぶりに開催されました。図らずも厳しい水産業を取り巻く環境がある中で、豊かな海を次の世代にしっかり引き継いでいこうという北海道の魅力を皆さんと共有して、大切な海を守っていこうという機会にもなったと思っています。
 

そしてなんと言っても、2月にはRapidusの進出表明、9月には起工式があって、かなりのスピードで建設工事が進んでいます。年末には、ソフトバンク社が600億を超える投資で、日本最大級のデータセンターを北海道に立地する。こういったデジタル関連の企業進出の動きが加速した1年でもあったと思っています。大きな動きがあった1年でしたので、この動きをさらに来年も加速していくことが求められるかなと思っています。

 

ーーーRapidusやソフトバンクのデータセンターが進出する中で、今懸念されているのが電力需給の問題です。Rapidusは洋上風力を中心とした再生可能エネルギーを活用する考えを示していますが、大量の電力を使用することから、北海道電力・泊原子力発電所の再稼働が必要との声が経済界などから聞かれます。知事は現時点で、再稼働は必要だと考えますか?やむを得ないと考えますか?それとも不要だと考えますか?

電力の問題と言うのは、暮らしで欠くことのできない基盤ですから、安定的に確保していかないといけないというのは重要な視点です。これは国としてしっかり確保していかなければいけないというのは、私が言うまでもないことだと思っています。しっかりその必要性については、知事として要請も行っているところです。
 

ただ、北海道の場合は、再生可能エネルギーのポテンシャルが我が国随一の中で、なかなかそのポテンシャルが発揮できなかったと。なぜかと言えば、道民が500万人しかいない。企業も大きく電力を消費するような企業の進出が相次ぐわけではなかった。その中で、電力は足りている。なので再生可能エネルギーがあったとしても、そこに投資して電気を生み出しても、使う人がいないので、なかなか進まないという「ニワトリ、タマゴ」の世界だったんですけども、私はそこで、本州は電気が足りないと言っているので、海底にケーブルを敷設すべきだと。電気を送るべきだという主張をしてきました。
 

これは政府が2030年度に海底に電力ケーブルを敷設して、北海道で余った分のエネルギーを本州に送っていきましょうという方針を決めましたので、先ほど申し上げたような洋上風力発電も具体的に進んでいけるような状況になりました。なので再エネのニーズというのは非常にあります。先ほどのデータセンターも、再エネ由来の電力を使ってやりたい。Rapidusもグリーン化ということで、再エネを使った調達でなければ、世界的な取引に支障が生じるということですので、しっかり進めていく必要があると思っています。
 

泊原発については、まさに規制委員会で審査が続いています。知事という立場で、最終的には議会や立地地域、周辺も含めた中で決定はしていきますけども、厳正な審査を行っているという状況でありますから、私としてコメントできる状況にはないかなと思っています。

 

ーーーいま深刻になっているのが、バスやタクシーの運転手不足です。観光地だけでなく、過疎地などでも移動手段の確保が課題となる中、政府は「ライドシェア」を、来年4月に一部で解禁する方針を示しました。道内では、観光地でも過疎地でも、移動手段の確保は課題となっていますが、知事として、ライドシェアの活用を具体的に検討していく考えはありますか?

ライドシェアについては、いわゆるフルパッケージという状況ではないわけですが、見直しの方向にはなっていますので、しっかり見ていきたいとは思ってます。交通手段が限られている地方、過疎地が、北海道には多いですから、まずは今回の国の方針を踏まえた中で、地域における調査を検討したいと思っています。ハイヤー協会や北海道運輸局とも調整しないとならないですが、国の新しい方針が出てきましたから。詳細はまだこれから詰めていくところはありますが、地域実情を確認する調査を行っていく必要性があるんじゃないかと思っています。いつ、どういう中身でやるかについてはここで申し上げることはできませんが、ハイヤー協会や北海道運輸局とも話をして、調査は検討していきたいなと思っています。

「ライドシェア」は一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶサービスで、政府はタクシー会社の管理のもとタクシーが不足している地域や時間帯などに限定して来年4月から導入する方針です。

 

ーーー今言及された「調査」とは、どのようなものをイメージしていますか?

今回、国が方針を示しましたので、例えば地域としてトライしていきたいとか、先進的な地域に対して、モデル的な事業を展開していこうか、とか。または、国の制度にあわせて、その時期を目指してうちはこういうことやっていきたいだとか、そういう実態をしっかり把握する必要があると思っています。交通手段が限られている地域は多いですし、今回、今までもやっていた、民間の有償での運送、一部NPOなどが行う手段についての見直しの話もあわせて出てきますから、実態を把握した上で、道としての政策全体の取り組み方を考えていきたいと思っています。

 

ーーー全179市町村に対して、意向があるかなどを確認する調査になるのでしょうか?

そうですね。今後、項目などは考えていきますが、いずれにしても地域でご検討されているかどうかを把握していきたいと思いますし、国が今回発表している内容についても、市町村それぞれの担当部署と情報を共有したいと思います。

 

ーーーことしクマの被害にあった人は全国で過去最悪となっています。道内でも、釣り客や登山中の大学生がクマに襲われて亡くなりました。札幌市内でも学校や住宅の近くで目撃情報が相次ぎ、不安の声が広がっています。道はこれまで保護に重点を置いてきましたが、駆除に積極的に取り組む時期に来ているのではないでしょうか?

来年は非常に重要なシーズンになると思っています。抜本的に強化、見直しをしていく、そういうタイミングになると思っています。ひとつは春期管理捕獲がありますけども、しっかり新たな制度を作った上で、市町村をしっかり支援していきたいと思ってます。また、指定管理鳥獣の話については、岩手の知事にも申し上げて、環境大臣に緊急の要請にも行きました。この指定管理鳥獣の見直しに対しては、当初はハードルが非常に高いと。なぜなら北海道や東北が中心の話であって、イノシシやシカの状況とは異なっているということから、全国一律の見直しという点で、課題があるというお話でした。そこで、私からも強く大臣に申し上げたのは、命に関わることでもありますし、特に秋田県などでは、かなり件数も激増しているという状況で、クマの専門家からもこういったトレンドについては、次のシーズンも大きく変更はないのではないかということも言われています。都道府県や市町村が対策するだけでは、財源やルールも含めて、なかなか対応できません。

指定管理鳥獣に新たにクマを加えていくことについては、今、有識者の会議も立ち上がりました。北海道からもメンバーが入っていますので、そこでしっかり議論した上で、指定する方向で検討を進めていただきたいと思っています。こうした、北海道で独自に取り組む制度を作って、しっかり春期管理捕獲を強化していく。さらには国に見直しを求めながら、指定管理鳥獣にクマを明確に位置づけた中での取り組みをしっかり構築していく。あらゆる手段を講じて、クマ対策についての抜本的な対策の強化を行っていきたいと思います。

 

ーーー知事としての1期目は、コロナ対策に追われた部分もあったと思います。2期目の残り3年余りの任期では、どの政策に力を入れ、どのような北海道を目指したいと考えていますか?

選挙戦でも、エネルギー、デジタル、食。この3つの分野で、北海道の価値を押し上げていきたいと訴えました。エネルギーで言えば再エネ、それに関連するGX投資。デジタルにおいても、半導体やデータセンターをはじめとする分野。さらには北海道の食。食料安全保障の観点からも北海道が果たす役割は大きいと思っています。この3つは、どれも生きていく上で欠くことのできないものです。エネルギーは暮らしの上で欠くことのできない基盤ですし、デジタルでは、産業のコメである半導体、さらには次世代半導体においては開発競争があります。そういった中で、拠点を北海道に立地していく。さらには食。人間食べなければ生きていけないわけです。3つの分野で、北海道がより役割を果たすことで、北海道総体の価値をあげていく。スピード感を持って、皆さんにとっても明るく将来を見通せるような取り組みを加速していきたいと思っています。いろいろな課題はありますし、やらなければならないこともたくさんありますけども、挑戦をしていくことで、見えてくるものが必ずあると思いますので、そのような取り組みを進めていきたいと思います。

2023年12月27日

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