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再び知床流で海と森をつなぐ web

  • 2022年12月24日

世界自然遺産・知床を流れるイワウベツ川の支流で、「サクラマスの遡上を復活させる」ための魚道が完成しました。工事を手掛けたのは呼びかけに応じて各地から集まったボランティア。人力で完成させた魚道とは。 2021年放送の知床流で海と森をつなぐのその後。 
初回放送 2022年12月24日 

人力で、しかも2日間で完成させる魚道作り

知床半島の世界遺産の地を流れるイワウベツ川の上流、盤ノ川。橋の直下には1982年に作られた「落差工」があって、魚が上流にのぼるのを遮ってきました。
今回のプロジェクトは、魚たちが下流から上流へのぼれるよう、3mの落差を超えるための魚道を設置します。

周辺は、広く寄付を募って開拓跡地を買い戻し、森の復元を進めて来た知床100平方メートル運動地です。
斜里町と知床財団では、今回の魚道設置も、ボランティアの力を借りて、人の力で行います。材料として使う角材は、100平方メートル運動地で育った木の間伐材を活用。まさに、知床流の手作り魚道を2日間で完成させます。

魚道を強化せよ

この魚道は前年(2021年)の9月にいったん完成していました。コロナ禍の工事となったため、ボランティアは斜里町内在住の関係者に限り、こちらも2日間の工事で完成させました。
ところが1ヶ月後の記録的な豪雨で盤ノ川が増水。上流から流れて来た石や岩が魚道に衝突して、魚道の上の部分、三分の一を破壊してしまいました。

そこで、今回は、残された土台に石を組んで河道部分を強化、魚道のすぐ上流に、石や岩を避けるための「転石はね工」も取り付けます。記録的な豪雨による増水にも対応できる魚道を手作りすることになりました。

イワウベツ川のサクラマスとは

100平方メートル運動地を流れるイワウベツ川では、世界遺産登録以降、川の環境を分断していたダムなどの河川工作物の改良が進んできました。
これまでに2つの支流のダムを改良、魚の行き来ができるようになり、本流に残る2つの治山ダムについても、管理する林野庁が、魚道を取り付ける計画を進めています。
その治山ダムの直下のプールには、今回の魚道作りの最中、サクラマスたちが集まっていました。川で生まれたサクラマスは、川でしばらく過ごしたあと海に下り、再び海から川に、卵を産みに帰って来ます。

今回、魚道を手作りするのはその上流の支流、盤ノ川の入り口にある落差工です。2つの治山ダムとあわせて、この3箇所を魚が通れるようになると、サクラマスたちは上流側の広範囲の産卵環境を使えるようになります。

思いを集めて

魚道作りに集まったボランティアのメンバーは、若者を中心におよそ20人。

北見市からやってきた大学院生は

「環境経済学を学んでいます。実際に自分でやることで得ることがあるのかなと思います」

とやる気まんまん。

網走市の大学生は

「前の年も応募したんですけど、コロナで(町外の人が)参加できなかったので、今回、念願叶いました」

とにっこり。

東京から斜里町にやってきて、リモートワーク中という人は

「リモートワークでやってくる人たちは、その地域に魅力を感じて来ているので、地域の課題にも関心があるはずです。知床の課題解決に関われて、仕事もできるし、いい機会をもらえたなと思います」

と充実ぶりを話してくれました。

魚道作りの取りまとめ役で、知床財団の中西将尚さんは、ボランティアの人たちと一緒に魚道を作ること自体に、大きな意味があるといいます。

「魚道を作る時から関わってもらえれば、その後も川を意識してもらえるし、『知床、どうなっているんだろうな』と繋がりをずっともってもらえると思うんです」

2日間の作業で…完成!

魚道は2日間の作業で無事完成しました。間伐材の木材で枠組みをつくり、内側に石を組みあげた土台。その石の隙間を土砂で埋めて河道ができあがりました。

「転石はね工」は、角材を組み合わせて制作。ボルトでコンクリート部分に固定したあと、上流側に石を積み上げました。増水時に上流から流れてくる石は、この石にあたってとまり、すぐ下流の魚道本体を破壊することをなくす狙い。

〜石は、石を持って制する〜

という、アイデアです。

作業に夢中になって、長靴でうっかり深みに足をつっこんで水浸しになったり、角材をとめるボルトの長さが足りなくなって、角材の方を削ったり。いろいろなハプニングを経ての完成です。

東京から参加 斜里町でリモートワーク中(前出)
「みなさんの協力のお陰で、魚道がこの通り完成しました!」

その笑顔には、知床に、自分が関わった場所ができた、という喜びが現れていました。

「このあと、この魚道がどうなるか、すごく気になるので、来年もここにくると思います」

 

2021年の魚道づくりについてはこちらの記事をどうぞ。
知床流の魚道で海と森をつなぐ web

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