NHK札幌放送局

Do!|#07 Kato Naruaki

札幌局広報スタッフ

2021年12月24日(金)午後3時00分 更新

なぜその番組を作ったのか?コンテンツに込めたメッセージとは?NHK北海道の職員、作り手たちの情熱や想いに迫るインタビューシリーズ「Do!」 。第7回に登場するのは送出技術の仕事を担当する加藤成暁職員。番組送出業務以外に、職種の垣根を超え、様々なシステム開発にも携わっています。開発の裏側と日々の仕事で大切にしている想いを聞きました。 

〔Photo By 鬼原 雄太・奥田 敬輔〕
〔聞き手 勝 健太(NHK札幌拠点放送局 記者)・福島 駿樹(NHK札幌拠点放送局・ディレクター)〕

加藤 成暁 -Kato Naruaki-
2016年入局。放送技術局クロスメディア部でデジタルサービス業務に従事した後、2019年8月に札幌拠点放送局技術部に異動。番組送出業務を担当しながら「ローカルフレンズ滞在記」や「北海道スタジアム」などの番組のシステム開発にも携わる。趣味はサッカー観戦と映画・ドラマ鑑賞。


「キタコン」を通じて生まれた視聴者との繋がり


――「技術」とはどんな仕事ですか?

札幌局の技術部には、大きく分けて制作技術・送出技術 ・送受信技術という3つの仕事があります。制作技術はロケに行ったり撮影や中継をしたり、番組作りにかかわる仕事。送受信技術は作られた番組を各家庭にお届けするために、電波を出す設備の整備や管理などを行っています。
私が担当しているのは送出技術という仕事で、テレビやラジオの番組を放送時間に合わせて正確に切り替えたり、ニューススタジオやラジオスタジオからニュースを送出したりし、視聴者のみなさんに放送をお届けする仕事です。さらにデジタルサービスを支える技術的な仕事も行っています。

例えば毎週金曜夜7:30から放送している「北海道道」という番組がありますが、この番組が始まる前は東京から「ニュース7」を放送しています。「ニュース7」から「北海道道」に切り替える仕組み――それを運行装置と呼ぶのですが、運行装置の整備・保守や監視も業務の一つです。

他にも「おはよう北海道」「ほっとニュース北海道」といったニュース番組の送出業務も行います。ニューススタジオの映像や音声を調整したり、それを支える放送機器の保守、管理をしながら故障がないかを毎日チェックし、万が一故障があったらすぐに対応します。

――そうした仕事をしながら、新しいシステム開発もされているそうですね。

例えばテレビのリモコンでdボタンを押すと、気象情報やドラマの情報が見られますよね。実は札幌では冬の時季、dボタンを押すと今どこで除雪が行われているかを地図で見ることができます。これは私たちが札幌市から情報を頂いて、それをもとにこうしたコンテンツを作っているんです。

――市内の除雪状況が分かるってすごいですね。そんな機能があるのを初めて知りました。

データ放送は便利ですが、なかなか知らない人も多くて。最近ではテレビを見るときにリモコンよりスマートフォンを片手に見る人が増えていますよね。今まではデータ放送で「ボタンを押して投票してください」と呼びかけていましたが、より使いやすくするために、それをスマートフォンでできるようにしたら良いんじゃないかと考えていて、キタコンもそうしたアイデアから生まれました。

――キタコンとは何ですか?

スマートフォンで番組に参加することができるしくみのことをキタコンと呼んでいます。
これは視聴者の方がメッセージを投稿したり、番組の中で呼びかけた内容に対して投票することのできるシステムで、「ローカルフレンズ滞在記」「北海道スタジアム」で使っています。
もともとメッセージを投稿するシステムと投票するシステムは別でした。メッセージを投稿するシステムは東京で管理していて、投票するシステムは過去にあった別のシステムを流用しているのですが、キタコンはそれらを組み合わせてできています。

他にも、NHKからのお知らせや制作者のコメントなどを番組と連動しながらリアルタイムでスマートフォンなどに配信することができるのもキタコンの特徴の一つです。

――必ずしも一から新しいシステムを作るわけではない?

そうですね。もちろん一から作る方が自由度が高いですが、その分お金も時間もかかります。技術的にも実現できるかどうかわからない。そういう時に私たち技術者は、今あるシステムをどう組み合わせたら実現できるかという発想で考えます。
キタコンも当初は投票機能しかなかったのですが、後からメッセージの投稿機能を追加しました。最近では「いいねボタン」などのリアクション機能も新たに加えるなど、都度改良しています。

■感謝!カンゲキ!衝撃の14392リアクション

――開発する前に、そのシステムが実現可能かどうかというのはどのように判断するのですか?

まずは既存のシステムを使って、これとこれを組み合わせたらできそうだなというのを試してみます。NHKの場合は東京で作ったシステムを北海道で使っているケースが多いので、東京の担当者とも相談しながら試作してみます。

――技術的な知識はいつ学んだのですか?

大学で情報工学を専攻していたので、その時にプログラミングやAR・VRの研究開発をしていました。基礎的な部分は大学時代に勉強しましたが、実践的な知識を身に着けたのは入局してからです。
最初に配属されたのが東京の放送センターにあるクロスメディア部という部署で、デジタルサービスを担当していました。そこで3年間働く中で、NHKにはどんなシステムがあるのか、このくらいの規模のシステムであればどれくらいの労力で作れるのか、といったことを学べたことが大きかったです。

――キタコンを作るのに初任地の経験が役に立ったということ ですね。

そうですね。もともと東京ではデータ放送向けのコンテンツや紅白歌合戦のスマートフォン向けアプリの開発なども担当していて、番組と連動したサービス展開も経験していたので、その経験は活かせていると思います。

――システム開発には苦労も多いのでは?

こうやったらうまくいくはずなのに、どうして思い通りに動かないのだろう、という試行錯誤の連続です。キタコンはNHKだけではなく外部のベンダー企業も開発に関わっているので、トラブルが起きるたびに関係者とコミュニケーションをとりながら確認します。こちらの要望を正確に伝えるために意思疎通の部分で苦労することもありますし、あとは技術的に解決できるかということももちろんですが、スケジュールに間に合うのかという調整も必要になるので、その部分はいつも悩みます。

――そうした調整も技術職員が行うんですね。課題や意図を正確に伝えて、かつ納期に間に合わせるというのはなかなか大変そうですが。

ベンダーにお願いするにもこちらが仕様を理解していなければ適切な依頼ができないので、その点は意識しています。本当は私たち自身でシステムを全て開発できるスキルがあればベンダーの方とも対等に会話ができますし、それが理想ですが、まだまだ知識が足りていません。そこは自分でも課題だと思っていて、もっと勉強が必要だと思っています。

――時には制作現場の要望と技術的な限界の狭間で葛藤することもあるのではないでしょうか。

たくさんあります。こういう機能が欲しいと言われても、どうしても出来ないことはあるので。それでもなるべくできる方向にもっていきたいので、いつまでならできますとか、こういう条件ならできますと落としどころを見つけるようにしています。
今は手が動かせないので難しいとか、自分たちのせいでやれないのが一番悔しいので。そういう時は、多少大変でも少しだけ時間をもらえればやります、と言うようにしています。

――キタコンによって放送はどう変わったと思いますか。

視聴者とのつながりを生むことができたのは良かったですし、SNSなどで反響を頂くと嬉しいです。札幌で独自にこうしたシステムを開発できたということも意味があったと思います。一方でまだ届ききれていない層がいることも事実なので、それが可視化されたことには一定の価値があると考えています。

――今後、キタコンはどう変わっていくのでしょう。

私自身がこうしたいというよりは、視聴者や制作者の要望に応えながらその都度アップデートしていけたら良いと思っています。



179市町村が大集結 「北海道スタジアム」の舞台裏


――「北海道スタジアム」で使っている大画面の開発にも携わっていますよね。

このシステムの立ち上げはかなり大変でした 。というのも、「北海道スタジアム」では179市町村のみなさんにリモート会議システムを使って接続してもらい、NHK札幌拠点放送局の巨大な8Kスクリーンに映しているのですが、179人全員の顔を映すって実はすごく難しいんです。システムの仕様上、一度に顔を出して話せるのは49人まで。それならパソコンを何台も用意して、画面を繋ぎ合わせれば良いんじゃないか。一番負荷がかかることなく適切に映るのは何人で、そのためにはいくつのパソコンが必要なのか。色々検討して、最終的には12台のパソコンが必要という話になりました。

そうすると、12人分のアカウントを作ることになります。ところが、そのアカウントにログインできなくなったり、うまく繋がらなくなったり……。トライ&エラーを何度も繰り返しながら、まず3月に一度別の番組で検証して、その課題も踏まえた上で4月の「北海道スタジアム 春ノ陣」の放送に臨みました。そこで出た課題を更に7月の「北海道スタジアム 夏ノ陣」に反映し、問題を一つずつ解決しながら進めていくという作業の連続でした。
「北海道スタジアム」で使用した大画面

――放送の裏側にそんな地道な作業があったとは……。

キタコンの場合は複数のシステムの組み合わせですが、「北海道スタジアム」の場合は既存のリモート会議システムをどう使うか、ということが鍵でした。
システムの開発と言っても裏側はかなり地味な作業で大変でしたが、その結果179市町村の皆さんが繋がる仕組みが出来上がって、放送中はみんなが笑ってくれて、司会の加藤浩次さんもいじってくれて。この番組に関わることができてとても良かったと感じます。

――送出技術の仕事は本当に幅広いですね。

そうですね。普段の送出業務がまずあって、それに付随して様々な仕事をしています。キタコンや「北海道スタジアム」もそうですし、それ以外にも選挙報道を支えるためのシステム構築なども行いました。
2021年10月に行われた衆議院選挙の時は、スタジオに椅子と机とパソコンを100台くらい並べて、どの地区で誰が当選したかという情報がスムーズに出せるようにシステムの構築を担当しました。送出技術チームで選挙プロジェクトを立ち上げて、そのリーダーを任されたのですが、パソコンを何台手配して、ケーブルを何本用意して、長さが足りなかったらまた別のケーブルを用意して……という細かい部分までやっていました。

――技術職員がそこまで担当しているとは知りませんでした。一つのシステムを作るのにはどれくらい時間がかかるのでしょう?

システムにもよりますが、キタコンの場合は約一ヶ月かかりました。

――そんな短期間でできるんですか?

キタコンの時は、ある程度どのシステムを組み合わせればできるだろうという目途を立てて、それをもとにベンダーに依頼して作って頂きました。あとはひたすら放送前日のギリギリまで検証作業を頑張るという感じです。

――北海道スタジアムの大画面は?

2020年12月頃に話が出て、本格的に開発を進めたのは2021年1月からです。3月に放送した「北海道道」でトライアルを行いました。大きな番組の前に、一度別の番組でテストをするということは良くあります。

――自分が作ったシステムに対する視聴者の反応は気になりますか?

SNSなどでどきどきしながらエゴサーチしています(笑)。キタコンの場合は直接視聴者の意見が届くので、「この機能面白い」とか「楽しい」といったご意見を頂くとモチベーションにも繋がります。



世の中に影響を与える仕事がしたい


――入局当時から技術開発をやりたかったのですか?

開発がしたいという思いは、当時はそこまでありませんでした。昔からテレビっ子でテレビ局で働くことに対して憧れがあって、大学で学んだ知識をテレビ局で生かせたら良いなという思いでNHKを志望しました。

――実際に入局してみてどうですか?

とても面白いです。札幌に異動してからは他の職種の人との関わりも増えて、みんなで一緒に作っているという一体感が楽しいです。時にはディレクターと飲みながら番組作りのアイデアが生まれたり(笑)。他職種の人と話していると技術者だけでは生まれない発想もあって、例えば最近できたキタコンの「いいねボタン」などもまさにそうした制作現場の生の声を拾って誕生した仕組みです。

――コミュニケーションは意識的にとっているのでしょうか。

かなり意識しています。札幌に異動するときも、実は友達をたくさんつくるというのが目標の一つでもあって(笑)。直接会って自分のことを覚えてもらう中で、だんだん知り合いが増えてそれが仕事にも繋がっていると感じます。

――行動力がすごいですね。そのモチベーションはどこから来ているのでしょう?

技術職の方は、研究することが好きだったり、それぞれの専門性に誇りをもって戦っている人が多いです。ただ私にはそこまでの専門性がないので、それだったら自分の興味関心を大切にしようと思ったんです。それはつまり、職種の垣根を越えて様々な人たちと一緒に仕事をして、日ごろの送出業務以外にもデジタルサービスなどの興味のある分野に積極的にかかわるということ。

札幌に転勤する前に、上司から行動力が大事と言われたことが非常に印象に残っていて。自分の半径1mを変えられなかったら、それ以上のことを変えられるはずがないですよね。札幌では絶対に自分から行動してやろうという思いを持って異動してきました。

――思いを持っていても、実際に行動するのはなかなか難しそうに感じます。

行動するためには、やりたいことを諦めないことかなと思います。チャンスはいつ降ってくるかわかりませんし、それを掴めるかどうかはその人次第。日頃から心の準備をしておくことが大切だと思います。職種の垣根を超えるって難しいと思われがちですけど、「この職種の立場だったらどう考えるだろう」ということを想像して、実際にその職場に行ってみると、考え方やコミュニケーションの術を学べる。それだけでも意味があると思います。

――そうしたコミュニケーション力はいつ身につけたのですか?

きっかけは二つあって、まず一つ目は高校時代です。単位制で時間割も自由で大学のような高校に通っていたので、クラスもなく学年の垣根も低くて、そのおかげで色々な人と仲良くなりました。もう一つは大学時代。塾講師のアルバイトをしていたので、小学生から高校生の幅広い年代の生徒さんやその保護者の方と話す機会も多く、そこでコミュニケーションを学ぶことができました。それが今の仕事にも繋がっていると思います。

――話を聞いていると、過去の経験を今に活かしながら仕事をされているなと感じます。

実際に活かすことができているのはすごくラッキーだと思いますが、活かそうという意識でやっているという部分もあります。初めての仕事でも「あ、これあの時やったやつだ」といった感覚で色々なことに取り組んでいます。
入局1年目の時に何もわからない状態でやっていた仕事も、今振り返ってみると大学時代の勉強や塾講師の経験が活かせていたり、そういうことが結構あります。

――今の経験も今後どこかで活かしてやろうと?

活かしてやろうというよりは、「あの時身につけた武器を使おう」とゲームのように考えている部分もあるかもしれません。楽しい方に考えておいた方が気が楽になるタイプなので。

――今後やりたいことはありますか?

デジタルサービスを開発したいという思いもありますが、一方で「何か新しいものを作りたい」という思いもあります。それは必ずしも技術である必要はないし、デジタルである必要もありません。私の強みは送出技術の現場を知っていてデジタル業務の経験もあること。そのスキルを活かして、世の中に影響を与えたり人の気持ちを少しでも変えられるような新しいサービスを作りたいです。NHKはあまねく放送を届けられる組織なので、日本中に大きな影響を与えられるような仕事ができたら良いなと思います。


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