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根室市の石垣雅敏市長に聞く ~2期目の展望 北方領土問題~

  • 2022年9月15日

9月に行われた根室市長選挙では、現職の石垣雅敏市長が無投票で再選しました。
根室市は基幹産業である漁業の不振や人口減少などの課題が山積しています。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う日ロ関係の悪化で、北方領土問題の解決も暗礁に乗り上げています。難しい状況の中、引き続き市政の舵取りにあたる石垣氏に2期目の展望を聞きました。
 (聞き手:根室支局 牧直利)


ふるさと納税3位 子育て支援に活用

根室市の人口は2万3699人(今年8月末現在 住民基本台帳)。1969年3月の4万9974人をピークに半減しています。働く場所を求める若者の人口流出に歯止めがかかっていません。一方、根室市は昨年度のふるさと納税の寄付額が全国3位の146億500万円に上りました。寄付金は、子ども向けの屋内施設の整備など子育て支援にも活用しています。人口減少対策にどのように取り組むか尋ねました。

石垣雅敏市長
「人口が2万4000人を切り、ピーク時の半分以下になってしまっている。若い人に根室に定住してもらう政策が大切になると考え、子育て政策に力を入れているところだ。また、ふるさと納税では、これまでにのべ270万人の方から応援をいただいた。この270万人の関係人口を交流人口につなげ、そしてその先の定住人口につなげていく。根室を大切に思ってくれる人の力も借りながら人口減少対策を図っていきたい」

「漁業と農業を核とした産業の強靱化、そして北方領土問題解決に向けた関係の再構築の取り組み、また、子育てや医療福祉の充実、教育の振興と文化の継承を着実に推進していきたい。また、巨大地震への備え、物価高騰、コロナ禍への対応も急務だ。『ふるさと根室を必ずや元気にしたい』という思いで、市民の皆様と力を合わせ2期目の4年間も全力で取り組んでいきたい」


獲る漁業から“育てる”漁業へ

根室市の就業者全体の約16%が従事する基幹産業の漁業。市内の水揚げ量は8年前(2014年)には10万トンを超えていたものの、2年前(2020年)には5万トンを下回り、生産高も6割ほどに落ち込みました。

中心的な役割を担っていた2つの漁業「サケマス流し網漁」と「サンマ漁」は、いずれも厳しい状況に立たされています。ロシアの排他的経済水域で行われるサケマス流し網漁は、ロシア政府が資源保護を理由に禁止し、2016年から操業できなくなりました。水揚げ量日本一を誇るサンマ漁は、ことしも深刻な不漁が続いています。こうした状況を受け、市はベニザケ養殖の実証試験やホタテの栽培漁業など「育てる漁業」への転換を図っています。

石垣雅敏市長
「根室市は、海と大地に根ざす水産交流都市をキャッチフレーズに市政推進をしてきた。北海道、そして日本の魚の台所として根室の役割は大きいものがあり、まずはこれをしっかりと守り切ることが大切だ。根室には戦前から北洋漁業を開拓して大きくなってきた歴史があり、海とは切っても切り離せない。しかし、国際漁業を巡る状況が厳しくなり、海が縮減されている現状もある。国際漁業を守っていくことも大事だが、223キロの沿岸域を活用したつくり育てる漁業(栽培漁業)の育成に早急に取り組まなければならない」


ビザなし破棄 許せない

900人あまりの北方領土元島民が暮らす根室市は「返還運動原点の地」として、返還運動の先頭に立ってきました。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などで四島交流事業は3年連続で実施が見送られました。ロシアは9月、30年間続いた「ビザなし交流」や元島民が故郷の生家跡を訪れる「自由訪問」について合意を破棄したと一方的に発表し、再開は極めて困難な状況になっています。

石垣雅敏市長
「ビザなし交流は、いまから31年前にゴルバチョフ大統領(当時)が来日したときに向こうからお話があり、30年前にスタートした。時計の針がまさに30年戻ってしまったような気がする。これは私どもにとっては許せないことだ。ビザなし交流そのものが、元島民が北方領土を感じる大きなウエイトを占めている。交流事業が閉ざされることは非常につらいものがあるが、私はこの30年の交流の積み重ねは閉じようと思っても閉じきれないと信じている。根室と北方四島にはたくさんの交流の積み重ねがある。そのためにも隣接地域の役割をしっかりと果たすことが大切だ」

「根室は1792年にラクスマンが日本との通行を求めて根室港に入ってひと冬を過ごした。これはペリーが日本に来る61年前の話だ。日本とロシア、根室と北方四島を含めた千島列島、この距離は数百年前から何ら変わっていないし、同時に日ロ交流の発祥の地でもある。その意味では、この隣接地域の役割は非常に大きくて、その交流の拠点港となる根室がその役割をしっかり果たしていく。全国の先頭に立って、これからも返還運動を続けていきたい」

Q:悪化する日ロ関係にどのように対応していくか。

「日ロ間のひずみが生じたとき、一番痛みが来るのがこの根室だ。この地域の痛みの部分をどう解決するのかを国にも一緒に考えていただきたい。ウクライナ侵攻に伴う問題をふまえて、「北特法」(北方領土問題解決促進特措法)の3度目の改正を行う時期に来ていると思う。地域の疲弊に対する国の支援のあり方にも関わってくるので、国に要望を行っていく」


最後に新型コロナ対策について尋ねました。

石垣雅敏市長
「2年前に市内で最初の感染者が確認されて以来、対策本部を毎日立ち上げてフルオープンで対策を進めてきた。その中で、飲食店や運輸関係に対する経済対策にも取り組んできた。今後はコロナ禍での原油価格、物価高騰に対する直接の市民生活を支援するとともに、事業者の売上減少に対する事業継続の支援を進めたい。10月からは水道料金の基本料金の3か月無償化を始める予定で、きめ細やかな対策を進めていきたい」

「強靱な産業をつくるというのは4年前に掲げた私の道しるべであり、2期目もこの道しるべに沿って産業をしっかり守り、その上で医療・福祉・子育て・防災にしっかり取り組んでいく、これが基本だ」


取材後記

静かな語り口の中にも、公約として掲げた政策実現への強い信念が感じられました。ロシアの強硬な態度に対し、ふだんは「一喜一憂しない」と冷静に話す石垣氏が、ビザなし交流の破棄を巡っては「許せない」と強く語ったことが印象的でした。市役所の職員時代から長年北方領土問題に携わり、国家間の駆け引きを見続けてきた石垣氏が、この重要局面をどう分析し、行動していくのか。2期目の手腕が問われています。

石垣雅敏氏 プロフィール
根室市出身の71歳。昭和51年に根室市に入庁。水産経済部長、北方領土担当参事、副市長などを経て、4年前の根室市長選挙で初当選。今回2回目の当選。
趣味も多彩で、地元のビッグバンド「イースト・ポイント・ジャズ・オーケストラ(EPJO)」では初代ピアニストを務めた。

2022年9月15日

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