ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. 道北チャンネル
  4. 留萌に記録的な大雪 それでも「春は来るからさ」

留萌に記録的な大雪 それでも「春は来るからさ」

  • 2024年1月15日

2023年12月25日のクリスマス。例年なら、前日から友達や家族と集まり、笑い、食べ、飲み、飲み、食べて「もう勘弁して」と訴える胃腸の叫びも無視して「何歳になっても楽しいな」とウキウキしているはずでしたが、この日は、いつもと違いました。腰が痛い、腕が痛い、ひざも痛い・・・。テレビやラジオから聞こえてくる陽気なクリスマスソングにも、苛立ちを感じるほどでした。それは、なぜか?留萌市の積雪が例年の3倍を超え、記録的な大雪となり雪かきに追われていたからです。それでも「ちゃんと春は来る」と自分に言い聞かせ、この冬は、除雪に励んでいます。(留萌支局・土田史世記者)

【前日午前中まで晴天だったのに】

留萌市に記録的な大雪が降ったのは、2023年12月18日。前日の午前中までは留萌市ではまったく、と言っていいほど雪が積もっておらず、街角のイルミネーションや、テレビから流れるクリスマスソングを聞いても「雪が全然積もってないから、クリスマス気分になれないなあ」などと、私は思っていました。旭川局の気象予報士の赤羽さんが、管内への放送や本人のSNSで「今後、見通しがきかない猛吹雪になる恐れ」と、何度も注意を呼びかけていましたが、本当に愚かな私、17日の午前中までは青空も見えるほどの晴天だったので、『赤羽くん、今回ばかりは予報を外したのでは』と、失礼ながら、赤羽さんの気象予報士としての人生の心配すらしていました。(本当にごめんなさい)。

【大雪でホワイトアウトに!】

今、思うと、あの時の自分を平手打ちしたい気分になります。予報を甘く見ると、どんなことが起きるか、思い知らされたのは、翌日でした。天気が一変したのは、17日の昼過ぎ。青空が見えていたのに、あっという間に吹雪になり、ホワイトアウトの状態になりました。昼前まで赤羽さんが、予報を外すのではないかと、勝手に思っていましたが「外が大変だ。頼む!予報が外れてくれ」と、今度は、一転して願わなくてはならない天気になりました。しかし、その願いもむなしく、降り積もる雪、雪、雪・・・。夜通し雪は降り積もり、早朝5時、不安になった私は、まだ真っ暗な外を見てみました。そこには前日までの光景はなく、真っ白な世界が広がっていました。自宅の玄関には、私の膝上まで雪が積もっている!私は「まだ、寝ぼけている、これは夢だよね・・・」とさえ、思っていました。しかし、すぐに厳しい寒さで、これは現実だと受け止め、急いで雪かきを開始。ところが、あたり一面雪で、除雪ダンプで、雪をかいて進むのもやっと。髪を振り乱して、ヒーヒー言いながら除雪をする私。近所のおじさんは「大変だわ!市道も国道も雪に埋まって、車なんて出せないし、走れないよ!」と教えてくれました。

【雪かきを黙々と続けるも・・・】

午前6時ごろ、私の住むアパートの住民の方も、先ほどの私と同じように『うそでしょ!』と言わんばかりの表情をして外に出てきました。お気持ち、お察しします。私も先ほどまで、その表情でした。そして、アパートの住民あわせて5人で3時間以上、黙々と、雪をかき続けるも、まったく終わりが見えず・・・。市内の小・中学校も全校が臨時休校となりました。ところが、私の中学生の息子は、大人の気持ちを逆なでするように、休校を喜んでいます。
いつもなら怒る場面ですが、すぐに息子もアパートの除雪要員に加わってもらうことに。「これなら学校があったほうが何倍もよかった」とぼやいておりました笑。

【大雪で市内は大変なことに!】

午前8時。車が使えないまま、私は雪をかきわけて、留萌市中心部の取材に向かいました。
いつもは元気な商店街の人たちもぐったりしながら雪かきをしています。近くの会社員の女性が「会社には行ったけど、社員駐車場が雪で埋まっていた。除雪が追いつかないから、『自宅で待機』と言われて帰ってきた。道幅も狭くなって通れない」と教えてくれました。夕方になると、雪でボコボコになった道路では何台もの自動車や大型トラックがスタックして何時間も立往生し、国道は大渋滞。市道では雪でスタックした車を近所の人がみんなで押して救助する様子が見られました。私の取材で、インタビューを受けて頂いた皆さんは、口をそろえて「留萌に住んでいてこんなに雪が積もったのを見たことがない」と話していました。この10年間に何度か記録的な大雪が降った留萌市ですが、こんなに終わりが見えない除雪は初めてでした。去年の夏は、留萌市も猛暑が続き、秋になっても、暑い日が続いたので「本当に雪は降るのかな」と地元では話していました。しかし、ご年配の方たちは「夏に猛暑だったあとは大雪が降る」と話していました。当時は「本当かな?」と思っていましたが、今になってみると、その方々の言った通りになった・・・と驚いています。

【皆さんの優しさに触れて】

この冬は、雪かきに追われ、大変な毎日ですが、こんなつらい時だからこそ、人の優しさがヒシヒシと伝わります。狭い道では車が通れるように、お互いが道を譲り合う、そして、すれ違う時に笑顔で会釈してもらうと、気持ちが、ほっこりします。雪でスタックした車を見つけると、見知らぬ人たちが集まって、かけ声を合わせて、車を全力で押し、救助。ふだん、付き合いのなかった近所の人とも除雪をしながら「頑張ろう」と励まし合う。この冬は、暴風雪や大雪で注目される留萌市ですが、住んでみると、厳しい雪国で生きてきた人の優しさが身に染みることがたくさんあります。私は今回の大雪の取材で、除雪中の80代の女性にインタビューした時に忘れられない言葉を頂きました。

「朝から雪かき大変ですね」
「そうだね、何十年とここに住んでいるけれど、こんなに雪が積もったのは見たことない。けど、ちゃんと春は来るからさ」

【説得力がある言葉が身に染みる】

「ちゃんと春は来るからさ」
この言葉、今回の大雪だけに限らず、人生においてしみる・・・と感じました。まだまだ、人生経験が浅い40代の私が、この言葉を発するには早いですが、この厳しい冬の留萌で、何十年と生きてきた80代の女性から聞いた、その言葉には、とても説得力がありました。ことしは大雪で気持ちが疲労し、例年のようなクリスマス気分は感じられませんでしたが「ちゃんと春は来る」と、自分に言い聞かせ、きょうも除雪に励んでおります。

(留萌支局 土田史世)

👇留萌の大雪のニュースはこちらから!
留萌 平年の3倍超える積雪 市民生活への影響続く|NHK 北海道のニュース
記録的な大雪の留萌 除雪追いつかず 市民生活への影響続く|NHK 北海道のニュース
記録的大雪で市民生活に影響 バス運休や臨時休校 北海道 留萌 | NHK | 北海道

👇留萌支局の取材後記には、こんな記事も!
羽幌町 焼尻島の「めん羊牧場」が一転存続へ | NHK北海道
JR留萌線 留萌・石狩沼田間の廃止から1か月 地元で感じることは | NHK北海道

ページトップに戻る