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羽幌町 焼尻島の「めん羊牧場」が一転存続へ

  • 2023年10月23日

飼育員が確保できないとして、8月末での閉鎖が検討されていた羽幌町の離島、焼尻島にある町営の「めん羊牧場」が、10月下旬に民間の会社に継承され、存続することになりました。存続に至る背景や関係者の取材を通して見えたのは「羊がいる島への熱い思い」でした。

飼育員を確保できず 当初は閉鎖の方向だった

羽幌町の知り合いから「8月末で焼尻島のめん羊が閉鎖になる方向」と連絡を受けたのは、ことし6月上旬。8月末までに、飼育員3人が退職することになり、その後を担う飼育員が見つからないことが理由だ、ということでした。私自身、小さい時から家族旅行などで、焼尻島には、何度か訪れたことがあり「あの素敵な風景が、なくなってしまうのか・・・」と、とても寂しく思いながら、取材を始めました。

道内外から問い合わせ相次ぐ その内容は

羽幌町の離島、焼尻島にある町営の「焼尻めん羊牧場」は、昭和37年(1962年)にニシンの不漁対策として羽幌町が漁業者に羊を貸し与えたのが始まりで、昭和41年(1966年)に町営化されて以降、半世紀以上にわたって、高級品種の「サフォーク」を生産してきました。
青い海をバックに緑の牧草地に放牧されている羊たちの風景は、「サフォーク」の原産地・スコットランドを思わせるようで島の観光の基盤にもなっていました。ことし8月の「焼尻めん羊まつり」は、新型コロナの影響で、4年ぶりの開催でしたが、天気は雨。それでも「最後のめん羊まつり」だと、およそ400人が詰めかけたそうです。
ところが「閉鎖へ」の報道を受けて、羽幌町役場には、8月末までに「めん羊を引き取りたい」との問い合わせが相次ぎました。道内外から30件以上あったということですが、このうちの2件が「牧場を継承したい」という申し出だったため、町は継承の検討を始めました。

羽幌町の判断は?その理由は?

町役場は「牧場の継承に意欲的」で「事業プランが明確」かつ「すでに、養鶏事業を営んでおり、牧場の技術支援やノウハウも持ち合わせている」ことを理由に、下川町で養鶏会社を経営する社長が、新たに設立する会社に、めん羊牧場を継承することを決め、町議会に報告しました。羽幌町は、10月13日に議会の了承を全会一致で得たため、譲渡契約を締結。10月23日付で継承されることが決まりました。牧場の農機具や車両は無償で譲渡し、牧草地や建物については無償貸与、現地で飼育されていた140頭あまりの羊は100万円で売却することになりました。

新たな会社への事業継承にあたり、決め手となったのは、何だったのか?あらためて町役場の担当者に伺ったところ「社長本人が直接、島に3度訪れ、現在の状況を十分視察し、本人から事業を継承したいという意気込みがよく伝わってきた」ということでした。さらに「牧場で働く人材の確保に向け、積極的に動いていることも大きかった」とのことでした。羽幌町の臨時議会で議決された直後、羽幌町の森淳町長も「今回の件で自分が思っていた以上に多くの人が牧場に熱い思いを持っていることがわかりました。このような形になりとてもうれしく思います」と話していたことからも、熱意が決め手だったことがよくわかりました。

地元関係者の受け止めは?

「めん羊牧場」の存続について、焼尻島でゲストハウスを経営している奥野奏枝さんは
「存続はうれしいが、採算が取れず撤退しないか、心配ではあります。焼尻島で、ずっと牧場を続けてほしい」と喜びつつ、正直な気持ちを語ってくれました。奥野さんは、羊が飼育されている焼尻島の風景に惚れ込み、結婚を機に島に移住した方です。私も、取材の際に1度宿泊させて頂きましたが、島への愛が強く、そのホスピタリティは、すばらしいものでした。ゲストハウスに遊びにきた客との楽しいおしゃべりは魅力的で、夏には、漁業や牧場にボランティアに訪れた学生などと交流もしていました。島の魅力を肌で感じてもらう活動に力を入れていて、私も、島の話を聞いて、焼尻島が大好きになりました。

のんびりとした時間、広大な大地で、のびのびと育つ羊たち、海と緑のコントラスト、フェリーに乗って焼尻島を訪れると、ここまで来て本当に良かった、島民の皆さんにとって、牧場は大切な財産だと、実感できます。議会の決定を経て、廃止の方向から一転して存続されることになりましたが「これからも、続いてほしい」という奥野さん夫妻の気持ちが、取材を通して伝わってきました。現地のフェリーターミナルの食堂で頂く「サフォーク」の味は格別です。1度食べたら忘れられない味を皆さんにも味わってほしい。この先もサフォークがいる景色をずっと残してほしいと切に願います。

NHK旭川放送局 留萌支局 土田史世

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