安芸高田市にモータースポーツの“聖地”
- 2024年04月30日
安芸高田市の自動車整備店の社長が作ったコースが、あるモータースポーツの「聖地」になっているといいます。いったいどんな「聖地」なのでしょうか。
(NHK広島放送局記者 石田茂年)
安芸高田市の高宮町。ここに全国のカーレーサーから熱い支持を集める場所があります。路面に砂利が敷かれたダートコース。全国大会も開かれるこのコースはなんと、ある人物が自分で一から作ったものです。
佐々木幸昭さんです。来年創業50年を迎える自動車整備店の社長です。
コースづくりのきっかけは40年ほど前、整備に訪れた客が持ち込んだダートレース用のレースカーでした。「走る場所がない」と相談を受けた佐々木さん。元々、自身もダートレースが好きだったこともあり、コースがあれば地元も盛り上がるのではないかと一念発起しました。
佐々木さん
「とにかく人が来てもらえる場所を作りたいと思いました。あの当時はこういうことしかできなかったですね。自分たちが住んで生きとるところが衰退していくってのは、今の時代も一緒の思いです。我慢ならないというか。だから、目立つものをやりたかった」
仕事後の時間や休日に、自ら重機を動かし1年ほどかけ、1984年に完成したのが、ダートレース専用の「テクニックステージタカタ」です。
当初は全長500メートルほどでしたが、利用客の要望を受けて拡張を続け、今ではフルコースで3キロほどに。カーブも思い切って攻められるスリリングなコースレイアウトになっています。
佐々木さん
「ぶわっとコーナリングがド派手で、コーナリングが楽しくないとダートは楽しくない。走る人も楽しくて、見る人も楽しくないと。それを目指したかった」
走行後の整備に手間がかかるダートコースですが、佐々木さんのこだわりは徹底したコース整備にあります。利用後は、自ら重機を動かしコースコンディションを整えています。
口コミで評判が集まり、80年代後半には初の全国大会の会場に。その後も、たびたび大会が開催され、今では全国屈指の人気ダートコースとしてトップ選手も練習に訪れます。
2021ダートトライアル 全日本チャンピオン 太田智喜選手
「全国でも随一、日本一と言えるようなコースだと思います。路面整備が非常に行き届いていて、非常に走り応えもあって、選手もものすごく好きな方が多い」
多くの人がコースを訪れるようになったことや、コースを走ったレーサーたちの活躍が佐々木さんの活力になっているといいます。
佐々木さん
「一番嬉しかったのはここで育った若者が、世界を走ってるんですよ。嬉しいもんですよ」
2002年には全面舗装のサーキットも新設。
レーサーとしても活動するトヨタの豊田章男会長も、お忍びで訪れています。
そして、全国から数千人のファンが訪れるカースポーツイベント「ラリーチャレンジ」が2015年から6回連続で安芸高田市で開催。今や地域の観光資産の1つになったのです。
佐々木さん
「願えばできるということを自分は言いたい。やる気になればできるということ。それしか自分に残ってない」
佐々木さんは現在、行政や企業と協力し、高齢ドライバーやレース初心者のための安全運転講習に力を入れていて、専用のコースも整備しているということです。