海田町 災害に備え井戸を登録する取り組み進む
- 2024年04月04日
個人が所有する井戸を登録し、地震や土砂災害など災害時にはみんなで使おうという取り組みが、海田町で進められています。
(NHK広島放送局記者 亀山真央・有馬護)
海田町で井戸を調査する男性。この日訪ねたのは、ふだんから生活用水として使われている個人所有の井戸です。災害時にみんなで使える井戸を登録する、公衆衛生推進協議会のプロジェクトのリーダーを務める、荘川要さんです。去年2月から活動を始めました。
荘川要さん
「前々からいざというときの水の心配というのはあったんですけど、特に近年の災害の時に水のことがよく問題になるんですよね。一番大きかったのはやっぱり、ことしの1月の能登半島での災害ですよね」
所有者に、「災害時共助利用井戸」として登録されたことを示すプレートを手渡しました。町の人たちが、いざという時に井戸を見つけやすくしようと、協議会で作ったものです。
住民
「各地で今災害が起きてますので、できることなら協力したいなと思ってました。少しでも皆さんの役に立てればと」
荘川さんたちがこれまでに調査した井戸は36基。町を歩いて探したり、情報提供を求めるチラシを配ったりして井戸を探し出し、どんな風に使われているか調査しました。
そして、使用頻度や水脈などに応じて、一部の井戸では水質も調査。生活用水として使っても問題がないと判断された、31の井戸を登録することになりました。まだ時間はかかりますが、100基は登録にこぎつけたいと考えています。
荘川さん
「とにかく情報をいただきたい。うちにも井戸があるよ、あそこにもあるよ、ということですよね。それで、我々がいろいろ説明をして、“ちょっと協力できないよ”ということもあっても当然だと思うので、それはそれでいいんですけど、とにかく情報があればいいなと思ってます」
さらに、実際に調べてみると、町の多くの井戸で電動で水をくみ上げていることが分かりました。
荘川さん
「モーターで水をくみ上げる井戸が多いんですよ」
停電が起こると井戸が使えなくなる可能性があります。こうした状況を防ぐため、町とも話をしながらいざというときに発電機を確保する方法を考えている荘川さんたち。住民同士での助け合いが生まれることを期待していると話します。
荘川さん
「発電機をそろえるということはお金がかかる話ですから、私たち公衆衛生推進協議会単独で準備するのは難しいと思います。あそこは井戸はあるけど電源がないよというときには、“発電機うちにもあるよ”、というような支援がそれぞれできる、要するに共助の形ができていくんじゃないかと思っています」
能登半島地震でも断水は深刻な問題となっていますので、いざというとき使える水があるというのは心強いですね。
そう思います。能登半島地震の被災地で取材をしたのですが、「井戸の水があっても、使えない状況があった」という声がありました。
井戸があったけど使えなかった、というのはどういうことでしょうか?
最初は停電も起きている状況で、電動のポンプを使っているところでは井戸の水をくみ出すことができなかったそうです。避難所を運営する男性によると、電気が復旧して、井戸水が使えるようになった家では、避難所生活から自宅での生活に切り替える人もいて、井戸のありがたさを実感したと話していました。海田町の荘川さんたちのように、発電機もセットで考えておかないといけないと改めて感じました。
こういう取り組みは県内のほかの地域でもあるんでしょうか?
はい。例えば呉市では、132の井戸が登録されていて、ホームページや自治会の回覧板などを通して公表されています。呉市では、6年前の西日本豪雨の際に断水が発生しましたが、住民が地域の井戸水を生活用水として活用するケースがありました。
また、福山市の竹尋地区では、地域住民が大学教授の協力を得て、災害時に生活用水として使える井戸の場所を地域のハザードマップに載せています。こちらのように、ハザードマップのなかに紫色で1から10の番号が記してありますが、これが井戸の場所を示しています。災害時には井戸の水を近くの避難所に運んで生活用水として使うことを計画しているということなんです。市や町といった自治体単位だではなく、より小さな自治会などの単位でも災害時に活用出来る井戸を調べる取り組みが進められています。