カープ 床田寛樹投手 新たな武器でさらなる進化へ
- 2024年03月25日
プロ野球、カープの床田寛樹投手は昨シーズン、チーム最多の11勝をあげて5年ぶりのクライマックスシリーズ進出に大きく貢献しました。プロ8年目を迎えることしのキャンプでは、さらなる進化を求めてある変化球を改良しようと模索する姿がありました。
(NHK広島放送局記者 横山悠)
充実のキャンプに
カープのキャンプ最終日。全員が輪になって恒例の手締めでおよそ1か月の鍛錬の日々を締めくくった直後、床田投手はすっきりした表情でキャンプでの時間を振り返ってくれました。
床田投手
「変化球をしっかり磨くことと大きなけがをしないことを目標にやってきた。自分のやりたいことをやれたし、すごくいい時間が過ごせたと思う」
主力として大きな期待に謙虚な左腕
ことしのキャンプは先発の主力として首脳陣から信頼され、初めて自分のペースで調整を任されました。ファンやチームからはことしもカープの投手陣を引っ張る活躍が期待されています。
カープファン
「左のエースとしてことしもいっぱい勝って、チームを優勝に導いてくれると思っています」
新井監督
「床田・森下という世代で、ローテーションの中心にこれからなってもらって頑張ってもらわないと困る。年下の選手が増えて責任感が出てきていると思う。若い投手たちを引っ張っていってほしい」
しかし、周囲の期待とは裏腹に、床田投手は至って謙虚でした。
床田投手
「去年たまたま1年できただけなので。“左のエース”と言われるが、全然そういうものはない。僕はありえないと思っている。そんなにエースの称号は軽くない」
飛躍の1年 ツーシーム頼みに限界も…
床田投手は昨シーズン、プロ入り後、初めてふた桁勝利をあげました。その躍進を支えた球種がツーシームです。バッターの手元で小さく動いてバットの芯を外し、凡打の山を築きました。ストレートに次いで投球の3割以上を占め、床田投手の“生命線”となりました。
しかし、シーズンが後半に入ると、得意のツーシームを打ち返される場面が目立つようになりました。前半戦は8勝2敗と好調だった一方で、後半戦は3勝5敗と負け越し。“ツーシーム頼み”の投球に限界を感じていました。
床田投手
「後半戦になってからツーシームをライト方向に打たれる試合が増えてきた。みんな向こうを狙ってるんだろうなとわかったんですけど、それでもそこで勝負せざるを得なかった。ことしはそうなったらだめ、もたないと思った」
打開策は “チェンジアップ”
去年の反省から違う球種を磨こうと考えた床田投手。たどりついたボールがチェンジアップでした。チェンジアップはストレートやツーシームと同じような軌道でより球速が遅いため、バッターのタイミングを外すことができる球種です。
前半の日南キャンプではチェンジアップを投げるたびに、球速やボールの軌道などを計測する機器を確認する姿がありました。床田投手の昨シーズンの平均球速は、ストレートが143キロで、ツーシームが135キロ。チェンジアップは軸となる2つの球種より遅い120キロ台後半を目指してピッチングに幅を持たせようとしました。
床田投手
「球速帯が似ているボールが多いので、緩急をつけたいと思った。ことしはできればツーシーム以外でカウント取れたり勝負できたりする球がほしいと思った」
頼ったのは後輩の森下投手
3歳年下の森下投手の力も借りました。同じ先発ピッチャーで仲のいい後輩からチェンジアップの握り方を教わり自分流にアレンジするなど試行錯誤しました。
床田投手
「今の握り方のポイントは縫い目にかけないこと。森下は縫い目にかけて投げていたが、僕の場合はその握り方だとスピードが出過ぎてしまった。バッターが『まっすぐがきた』と思って打ちにいったらまだ来ていない感じがいちばんいいと思う」
バッター相手に手応え
床田投手は、後半の沖縄キャンプで行われた実戦形式の練習で、バッター相手にチェンジアップを試してみました。ストレートだと思って打ちにきた中村奨成選手から空振りを奪ったほか、タイミングをうまく外して内野ゴロも打たせ、手応えを口にしました。
床田投手
「空振りしてほしいところで空振りを取れた。投げるたびによくなってきている」
もうひとつの目標 “ホームラン打ちたい”
さらなる進化を目指す今シーズン、床田投手にはもうひとつ、大きな目標があります。それはホームランを打つことです。バッティングが大好きで、オフの練習にはロングティーも取り入れました。去年、レフトスタンド上段にプロ初ホームランを打った森下投手に対抗心を燃やしています。
床田投手
「野球をやっていて唯一楽しいと思えるのがバッティング。バッティングでは森下と張れると思っている。あいつはバッティングがいいと言われているが、去年はホームラン1本だけで、僕のほうが打率がいいので(笑)。だからホームランを打ちたい」
目標は“170投球回” エースに挑戦
床田投手は今シーズン、試合でなるべく長い回を投げたいと考えています。去年はカープの九里投手などリーグで3人だけが到達した投球回数、“170回”を目標に掲げ、これまで交代していた場面でも「もう1回」を任せてもらえる信頼感を勝ち取ろうとしています。
エース像について「絶対に負けられない試合でこいつが投げれば大丈夫と思われるピッチャー」と語った床田投手。キャンプで磨いた新たな武器を携えて、エースへの道に挑みます。
床田投手
「ことしが本当に大事。去年以上の成績を残せれば、来年は開幕投手をやりたいと言えると思う。ゆくゆくはエースになりたいと思うので、まずはローテーションピッチャーになれるように階段を登って、そのあとにエースというものが見えてくると思う。1歩ずつ険しい道ですけど登っていけたらいい」