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「男だから、女だから」への違和感 ジェンダー川柳で 広島 

  • 2024年01月04日

「男だから」「女だから」など、性別による思い込みや決めつけに対する違和感を表現した川柳のコンテストが行われ、5つの作品が選ばれました。どんな川柳が選ばれたのでしょうか。

(広島放送局記者 大石理恵)

広島県が初めて開いた川柳のコンテスト。
お題は、性別による思い込みや決めつけに対する、もやもやした思いや違和感です。1600余りの応募の中から選ばれた5つの作品が発表されました。

最優秀賞に選ばれたのは…

「ご飯まだ? 帰った時刻 同じだよ」

作者は、東広島市に住む高校2年生の長尾奏来さんです。
仕事から帰ってきた父親が、同じ時間帯に帰ってきた母親に夕食がまだできていないのかを聞いた光景を川柳にしました。家族の間の性別による思い込みについて、子どもの立場から疑問を投げかけた作品に共感が集まり、県民投票でも最も多くの票を集めました。

長尾奏来さん
「きっかけは、お父さんが帰って来てお母さんが帰ってきて、そこからお父さんがすぐ座ってお母さんに『ご飯まだできない?』と聞いたところでもやっとしたところがありました。この川柳が選ばれたということは、やっぱりこういう家庭がいっぱいあるんだなあというのもあり、こういう考えをみんなが改めて、お互いを尊重していけるような社会になったらいいなと思います」

こちらは、審査員賞に選ばれた川柳。

「早帰宅(はやきたく) 見送る上司の 子は3歳」

作者の木下麻子さんは、会社で毎日のように見る光景を川柳にしました。
幼い子どものいる男性上司が、子育て中の部下の女性に早めの帰宅を促しつつ、自分は職場に残り十分子育てができていない状況を表現しています。

木下麻子さん
「男性も本当はできることなら子どもと一緒にご飯を食べたいとか、寝顔ばっかり見てるのが辛いって本音があると思うんですね。そういうことは言えないような風土みたいのが裏にあるんじゃないかなと思っていて。早く帰ったりすることを堂々とできるような、そんな社会に早く変わってほしいなあと思っています」

審査員長を務めたジェンダーに詳しい専門家は、こうした日頃の違和感を共有することによって、多くの人がみずからの中にある決めつけや思い込みに気付くきっかけになればと話しています。

審査員長 上水流久彦 県立広島大学教授
「もやもやに気付いてない方も非常に多いだろうなと思っているんですね。全員が自分たちの問題なんだと思って、ジェンダーに関する考えについて思いを巡らせて行動を少しずつ変えていく、また行動を変えることを促していくということをすべきかなと思っています」

こちらが今回受賞した川柳です。進路選択や家事育児の場面で周囲の人や家族の言葉にもやっとした時の気持ちが表現されています。
県が川柳コンテストを行った背景には、男女の役割意識が根深く残る現状への危機感があります。

こちらは、ことし6月に県民1000人余りを対象に県がネット上で行った意識調査の結果です。

「家計を支えるのは男性の役割である」という考えについて、「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答した人はあわせて51.1%に上りました。

続いて、「育児休業は女性が取得したほうがよい」という考えについて「そう思う」、「どちらかというとそう思う」と回答した人は51.3%と、いずれも半数を超えています。
共働きや男性の育休取得が広がる一方で、性別で役割を固定する意識が依然として根強いことがわかります。
県では、性別にかかわらず自分らしい生き方ができる社会を目指して、「男だから」「女だから」といった思い込みや決めつけの解消につながる取り組みを今後も強化することにしています。

  • 大石理恵

    広島放送局記者

    大石理恵

    2004年入局
    広島県廿日市市出身
    ネットワーク報道部等を経て2度目の地元勤務中
    取材中は1つ1つの川柳に共感して胸がいっぱいになりました




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