65歳以上のファッションショー 歩き続ける人生のランウェイ
- 2023年11月13日
特別なファッションショーが東広島市で行われました。モデルは、65歳以上の高齢者です。このショーでランウェイデビューした女性がいます。
(NHK広島放送局カメラマン 石川舞花)
東広島市で行われたファッションショー。思い思いの衣装を身にまとい、ランウェイを歩くのは、65歳以上の高齢者です。生きがい作りを目的として市が主催しました。
ショーの参加者は…
「わくわくどきどきしてて、とっても幸せな気分でした。若返りました」
「感無量。今とても幸せ」
今回のファッションショーに特別な思いで参加した江藤美知子さんです。2年半前に夫の昌明さんを亡くしました。
結婚してから60年。昌明さんは、人と話すのが大好きな美知子さんの大切な話し相手でした。
江藤美知子さん
「60年と3か月、一緒にいたんですから。覚悟はしててもね、やっぱり話し相手がなくなるとさみしいですね」
昌明さんが亡くなったあと美知子さんは、ふさぎ込むようになり外に出ることが少なくなっていきました。
江藤美知子さん
「テレビを見たり、日記を書いたり、ぬいぐるみに話しかけてるんですよ」
孫の裕美さんです。元気がない祖母を心配し、ショーへの参加を勧めました。
裕美さん
「すごいちゃきちゃき動いてたおばあちゃんが、いろんなものがどうでもよくなってきて、これはちょっとまずいんじゃないんかなって。とにかく何かの刺激がないといけないな」
江藤美知子さん
「断って断ってって言ってたんですけどね、もう頼んであるからだめよ断れんよって言うからね」
この日、ショーに向けて行われるウォーキングレッスンに参加しました。サポート役で本番のランウェイを一緒に歩く裕美さんと練習します。
レッスン中には、ほかの参加者とのおしゃべりを楽しむ場面もありました。
江藤美知子さん
「最近、人とあんまり関わりが無かったんですよ私。楽しかったですほんと」
少しずつ気持ちが前向きになっていった美知子さん。これまでと違った自分になりたいと思うようになってきました。
呉服店で働いていたことがある美知子さんは、本番の衣装を着物にしようと考えていました。
しかし、同世代の女性がドレスを選んでいる姿を見て、自分も着てみたいと思うようになりました。今まで自分がやりたいことを主張してこなかった美知子さんにとって、初めての挑戦です。
江藤美知子さん
「私たち結婚するころには、まだドレス着る人って少なかったんですよね。ドレス着てみたいなあ、憧れですよね」
そして迎えた本番の日。
およそ200人の観客が注目する中、美知子さんがショーの最後を飾ります。
衣装に選んだのは、白いドレスです。まるで花嫁姿のような自分を夫の昌明さんに見せたいと、選びました。
江藤美知子さん
「もしあの頃に結婚式でドレスがあったら白いドレスを着ただろうなって。まあ、主人も見てるでしょう」
裕美さんに支えられながら、8メートルのランウェイを堂々と歩きました。
江藤美知子さん
「ほっとしました。良い記念になりましたので感謝してます」
挑戦することの喜びを知り笑顔が戻った美知子さん。これからも前向きに人生のランウェイを歩き続けます。
今回のモデルの募集は、東広島市で行われましたが、市外からも参加したいという声があり、ほかの市からも4人が出演したそうです。美知子さんは、今後、ファッションショーが開催されれば、別の衣装でまた参加したいと話していました。