1から解説 宮島訪問税 課税対象は?どうやって払う?
- 2023年10月18日
紅葉の時期を前に、宮島に行こうと計画している人も多いかもしれません。
宮島では、島を訪れる人から1回の訪問あたり1人100円を徴収する「宮島訪問税」が10月1日に始まりました。
全国的にも珍しいこの税制度。
どうやって払うの?
課税対象は?
税収は何に使うの?
知っておきたいポイントをイチから解説します。
(広島放送局記者 大石理恵)
訪問税を徴収する狙いとは
世界遺産の嚴島神社があり、広島県内有数の観光地である宮島。
訪れる人の数は、2019年に過去最多の465万人に上り、その後、新型コロナの影響で減少しましたが、2023年は8月末までの時点で293万人と、2019年の同じ時期の9割ほどに回復しています。
多くの観光客が訪れることによって必要となるのが公衆トイレの整備やごみの処理など。
市では、宮島を持続可能な観光地にしていくためには、訪れる人にもこうした費用の一部を負担してもらう必要があるとして、税の徴収に踏み切りました。
課税の対象は?
今回の制度では、住民や、宮島の事業所・学校に通う人たちは、課税の対象外となっています。また、未就学児や修学旅行生などは課税が免除されます。
ちなみに離島に入る際に税金がかかる仕組みは、沖縄の座間味村など4つの村が環境保全などの目的で導入していますが、こちらは住民も課税対象となっています。
どうやって払うの?
続いて、支払い方です。島に入る際に1人1回100円の訪問税を支払います。
JR西日本宮島フェリーや、宮島松大汽船で訪れる場合、往復400円の運賃に100円の訪問税が上乗せされた500円分の乗船券を、宮島口で購入します。
交通系ICカードの場合は、自動改札を通る際に、運賃と訪問税が自動で引き落とされます。
支払った人の受け止めは?
支払った人たちからは訪問税に対して、おおむね好意的な意見が聞かれました。
「運賃400円に100円の税金となると少し高いと感じる」
「安いと思う。宮島がちょっとでも良くなるんだったらいいと思う」
「観光客が来ると、どうしてもごみが出て、宮島の人が迷惑すると思う。それが是正されるならいいと思う」
3年前に市が1200人を対象にネット上で行ったアンケートでも、およそ8割の人が訪問税に賛成でした。
年払い制度も
配達や介護などで、頻繁に宮島を訪れる場合は、事前に市役所や支所などで手続きをして、1年分として500円を納める年払いの制度もあります。
年払い証明書を有人改札で提示すると、毎回100円を支払うことなく宮島に渡ることができます。年払いの申請はことし9月30日の時点で、市の想定を上回る2600件余りに上っているということです。
外国人観光客の案内に課題
訪問税がスタートした初日に取材して課題だと感じたのは、外国人観光客の案内です。
外国人観光客の多くは全国のJRの列車などで使える定額制のパスを使っているため、JRのフェリーに乗る場合、運賃の支払いは不要です。
ただ、10月からは訪問税100円分を券売機で購入する必要があります。JRの担当者やボランティアの人たちが説明にあたりましたが、長い列ができる時間帯もありました。
「券売機の使い方がもう少しわかりやすいといいです」
「100円の税は妥当だと思います。旅行先の離島はたいてい税がある。うまく使われればオーバーツーリズムによる被害を防いだり、自然を守ることができます」
「なんのために徴収されるのか明確じゃないと感じます。もし世界遺産を保全するためだとしたら賛成です」
外国人観光客に話を聞いてみると、宮島訪問税について初めて知る人が多く、税の目的や支払い方を丁寧に説明する必要があると感じました。
廿日市市では今後1年間、観光案内所のスタッフを増員するほか、当面1か月間は、英語が話せるボランティアの人を宮島口に配置して対応するということです。
税収はどのように使われるの?
訪問税による税収は、今年度は1億400万円が見込まれています。
今後、ごみの処理や公衆トイレの整備、宮島口の渋滞対策などにあてられる計画で、市では、5年ごとに税額などを見直すことにしています。
今後の税のあり方や活用方法について引き続き注目していきたいと思います。