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全国大会3連覇!東広島の仏壇職人 新たな挑戦

  • 2023年09月06日

職人の技にこだわった仏壇づくりで、今注目を集めている職人が東広島市にいます。仏壇づくりの技を競う全国大会で3回連続最高位を受賞している、蓮池稔さんです。伝統技術を守りながらも時代に合わせた仏壇をつくろうと挑戦している蓮池さんの姿を取材しました。

(NHK広島放送局 桧山千尋)

東広島市で仏壇店を営む蓮池稔さんです。
仏壇づくりの7つの工程の中で、漆を塗って金箔を貼る塗師(ぬし)と呼ばれる伝統工芸士です。服を脱いで作業をしているのは、服の小さな繊維やほこりが漆にくっつくのを防ぐため。どんな小さな異物も入らないように、慎重に漆を塗り重ねます。

蓮池さん
塗りのきれいさ、つやの出し方とかですね、裸で頭も坊主にしてやるくらい気を遣ってやっています。

こちらが、全国大会で最高位を受賞した仏壇です。全体のデザインも蓮池さんが手がけました。扉には、黒柿の木目を美しく際立たせるために、50回以上漆が塗り重ねられています。
また、7色の色漆を500回以上塗り重ねた「堆漆(ついしつ)」という技法も使われています。

蓮池さん
今ではあまり使われていない技術とか、知られていない技法を、先人の考えられたものを今一度勉強してこの仏壇の中に取り入れた。3回連続は無理だと思ってたから喜びもひとしおでしたね。

大型の仏壇の需要が減る中、蓮池さんは時代に合わせた仏壇づくりに取り組んでいます。

仏壇を小さくする「ダウンサイジング」です。元の仏壇の装飾など一部を残しながらリメイクします。仏間が無い家やマンションにも置けるようにと、依頼が増えてきているといいます。

この日、依頼に訪れたのは市内に住む、蜂須賀功志さんです。去年母親が亡くなって実家を壊すことになり、置き場のない仏壇を処分するべきか悩んでいたところ、ダウンサイジングできることを知りました。

蜂須賀さん
新しいのを拝んでもやっぱり母も父も祖母も絶対喜ばないと思っていましたからね。小さくできるなら少しは許してくれるんじゃないかと思って。

まず蓮池さんは、仏像や彫刻などを取り出し、仏壇を解体します。部品の寸法を変えたり金箔を貼り直したりして調整します。そして、仏壇の外側の「木地」と呼ばれる土台を組み立てます。

元の仏壇(左)の部品をリメイクした仏壇(右)へ

先人の職人の技を残したいと、仏像をはじめ欄間や柱、それに彫刻も元の物を修復して使いました。

蓮池さん
仏壇を処分したら先祖の思いとかその中に入っている先人の技術は、それも全部消えていくんですよね。少しでも残したいという思いです。

依頼から2か月。蜂須賀さんの仏壇が完成しました。

「テカテカやね、光っとるやん」
「漆でやって、金箔も一番良いのでやっとるけんね」

高さも横幅も元の仏壇の3分の1以下になりました。

蜂須賀さん
感動ものですよね。大きい仏壇を廃棄して新しいのを買ったんじゃあこれと意味合いが全然違いますよね。そのまま親からもらったものを残せたというのは大きいですよね。

蓮池さん
小さくはなったけども、先祖の思いがここへ残りますから何十年何百年と後々の方も拝んでいただく、本当にもう職人冥利(みょうり)に尽きるお仕事だと思います。先人が考えられた技術を残せるように伝統型の仏壇が残るように、そういうのを目標にやっていきたいと思いますね。

蓮池さんは、若い世代に伝統技術を知ってもらうことにも力を入れています。地元の広島大学の学生たちに、金箔を貼る技術を指導して、技を継承することの大切さを伝えています。
また、職場体験の中学生も受け入れています。実際に体験してもらうことで職人の技を肌で感じてもらいたいといいます。蓮池さんは子どもたちの中から、将来、仏壇づくりの職人を目指す人が出てきてくれたらうれしいと話していました。

  • 桧山千尋

    NHK広島放送局

    桧山千尋

    東広島市出身。東広島市や竹原市を担当。 イヤイヤ期の娘の育児に奮闘中。趣味はミュージカル鑑賞。 

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