ページの本文へ

ひろしまWEB特集

  1. NHK広島
  2. ひろしまWEB特集
  3. “怖い” 犯罪心理学ぶ学生が作るお化け屋敷 広島 福山市

“怖い” 犯罪心理学ぶ学生が作るお化け屋敷 広島 福山市

  • 2023年09月04日

夏の風物詩といえば、「お化け屋敷」。この夏、福山市に「怖い」と評判のお化け屋敷が期間限定でオープンしました。実はその怖さを演出しているひとつの要素が「犯罪心理学」です。どういうことでしょうか。

(NHK広島放送局記者 相田悠真)

親子で絶叫!怖いお化け屋敷

「きゃー」「うわーびっくりした」「もう嫌だ行きたくない」という声が響くお化け屋敷。この夏、福山市の県立歴史博物館に期間限定でオープンしました。

体験した親子は…

「めっちゃ怖かった、追っかけてくるとか嫌だった」

「ふたりの反応がおかしくて笑ってましたけどひとりだったら怖いと思います」

「なんで笑ってるの!」

犯罪心理学の研究を逆手に

運営しているのは福山大学心理学科の学生たち。お化け屋敷の演出を担当したのは、2年生の中原晴菜さんです。

中原晴菜さん
「日中はここは展示室になっているんですけど、夕方は犯罪心理学を使ったお化け屋敷をしています」

このお化け屋敷に取り入れられているのが、「犯罪不安」。学生たちが学んでいる犯罪心理学の考え方です。「犯罪不安」は自分や身近な人が“犯罪に遭ってしまうかもしれない”と感じる恐れや不安のこと。犯罪心理学ではこうした心理を研究し、安全な町作りに生かしています。
しかしこのお化け屋敷はその研究を逆手にとります。5分ほどのルートに意図的に恐れや不安を抱かせるポイントを張り巡らせているのです。

ポイント① 予期せぬ状況を作る

ポイントの1つが予期せぬ状況を作ること。

お化け屋敷の演出担当した中原晴菜さん
参加者がここ(橋)を渡ると声がしてくるんですけど、井戸に注意が引きよせられてしまって、こっちから出てくるお化けに気づかず、怖い状況になってしまいます。

この井戸。声がするので参加者が目を向けると…。

無防備な背後から、お化けが出てきます。予期せぬ場所から驚かせることが、参加者をより怖がらせるのです。

ポイント② 事前の悪い情報

もうひとつが、事前の悪い情報です。
参加者には、事前にお化け屋敷に呪いがあると説明しています。悪いうわさがある場所では、「犯罪不安」が高まるとされているからです。

呪いをとくため、札を置こうとすると…。

手が飛び出してきました。「怖い場所」だという事前の情報があるとより恐怖が増すといいます。参加者の悲鳴は、学生たちのねらいどおりです。

「お化け屋敷で犯罪の危険知って」

子どもだけでなく、大人までも恐怖に陥れるお化け屋敷。一方、学生たちのねらいは、別のところにもあります。子どもたちに犯罪の危険を教えることです。お化け屋敷で怖かった場所を引き合いに出して、犯罪が起きやすい、ふだんの生活で気をつける場所を小学生たちに教えます。

福山大学の学生
「ここ橋があるんだけど通ったの覚えてる?橋は一本道でうしろからお化けがついてきたんだけど気づいてたかな?助けてくれる人がいない場所、こういう場所は怖くなりやすい場所」

子どもたちはお化けでたっぷり怖がったあとだからこそ、犯罪の怖さも身をもって感じたようでした。

参加した小学生
結構高まりました、(防犯)意識とか。自分の住んでいるところの近くにも(危険な場所が)あるかもしれないんだなっていうことがよく分かった。

参加した保護者
怖い体験をしたあとに話を聞いて、子どもがこういうところは危ないとかこういう所を気をつけようとかちょっとは頭に入ったかなと思います。

お化け屋敷の演出担当した中原晴菜さん
恐怖を感じていることが伝わってきて、事後説明もあったと思うんですけど、お客さんは何で不安だったのかが事後説明で分かったと思うので、このお化け屋敷を通して身近に潜んでいる犯罪に遭わないように、しっかりこれから生活していってほしいなと思います。

このお化け屋敷、ことしはすでに終了しています。抽せん制で、およそ4倍の人気だったということです。

犯罪心理学 身を守るポイントは?

それでは、学生たちの教える、犯罪心理学で子どもが身を守るためのポイントとはどんなものなのか。今回のお化け屋敷を監修した、福山大学心理学科助手の濱本有希さんに聞きました。

ポイントは「見えにくい場所」「入りやすい場所」
「見えにくい場所」は、人目につきにくいから、犯罪が起きやすいということです。「入りやすい場所」は、犯罪心理学では、「領域性が低い」というが、区切りがなくて境がはっきりしていない場所は、どこからでも入れて、どこからでも逃げることができる。こういう場所では、犯罪者が犯罪を起こしやすいということで、注意が必要です。

福山大学心理学科助手 濱本有希さん
「見えにくい場所や入りやすい場所などが身近にないか注意したうえで、近づかないようにしてほしい。もし近づくことになってもひとりで行かないようにし、周囲に気をつけてほしい」

  • 相田 悠真

    広島放送局 記者

    相田 悠真

    2021年入局
    新潟県出身
    福山支局で備後の取材にあたる。お化け屋敷を甘く見ていたが、思いもしない場所からお化けが出てきて怖かった。

ページトップに戻る