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事故に注意!免許のいらない「シニアカー」安全な乗り方は

  • 2023年04月12日

主に高齢者が利用する電動車いす、通称「シニアカー」。運転免許がなくても運転できる便利な乗り物ですが、死亡事故も起きています。
尾道市では、88歳の男性が段差でバランスを崩してシニアカーごと倒れ込み、走ってきた車にはねられて亡くなりました。
乗る際にはどんなことに注意したらいいのか、取材しました。

(広島放送局記者 相田悠真)

死亡事故が起きた現場は

2月28日、尾道市美ノ郷町の県道で、88歳の男性が運転するシニアカーが歩道を走行していたところ、バランスを崩して車道に倒れ、走ってきた車にはねられて死亡しました。

歩道の幅はおよそ2.6メートルでしたが、男性がバランスを崩したあたりは急に狭くなっていておよそ1.1メートルだったほか、傾斜もあって運転するのが難しそうな場所でした。
段差は高さが15センチほどあり、ここから片側の車輪が落ちて車道に倒れ込んだとみられています。

取材をしていると、現場の歩道をシニアカーで通行する男性がいました。
話を聞くと、やはり気をつけているといいます。

シニアカーを利用する近所の男性(85)

「車の免許を返納していて、5年くらい前からシニアカーに乗っとるけど、あの歩道を通る時は気をつけるけえな。気をつけんと狭いところは危ないわな」

県内では複数の死亡事故も

シニアカーの道路交通法上の扱いは歩行者と同じで、基本的には歩道を通行します。
電気で動いて、最高速度は時速6キロ。
運転に免許は必要なく、免許証を返納した高齢者も運転できるという利便性があります。

一方、警察によりますと県内で2020年からの4年で少なくとも11人が事故でけがをしていて、3人が死亡しています。
 

安全に乗るために必要なことは

安全に乗るためにはどんな点に注意する必要があるのか。
電動車いす安全普及協会の田澤充康さんに話を聞きました。

「段差に近づくことはバランスを崩したり、転倒する危険があり非常に危険です。ですから、段差のある車道側からなるべく離れてほしいと思います。車道でなくても側溝や川などもあるので、危険な場所から離れて通行することがまず大事です」

では、尾道市の事故現場のように、歩道を通ろうにも極端に道幅が狭くなっているような場合はどうしたらいいのでしょうか。

「車道から離れて走行しようとしても、歩道に電信柱などがあって急に狭くなっていることがあります。この場合、電信柱の前で一度停止して、後ろを見て安全を確認してから通行してほしいと思います。もしも通れないほど幅が狭くなっていれば、やむを得ないので車道に出て通行することも、安全を確保するには大事なポイントです。車道に出る際は、必ず車をしっかり見て、安全を確認してからにしてください」

歩道を走行する際に、車道と垂直に交わる道などで段差を乗り越えることがあります。そうした際の注意点は。

「段差を乗り越えたり踏切を横断したりする際の運転のコツは、『直角に通行する』ということです。段差や踏切の線路に対して斜めに通行しようとすると、タイヤが線路の隙間に挟まるなどしてハンドルが取られて危険な状況に陥る場合があります。必ず直角に入って、止まらずに通行することが重要なポイントになります」

家族などと一緒に事前に安全の確認を

田澤さんは、免許証を返納する高齢者が増える中で、シニアカーの普及もさらに進むとみています。
高齢になると、どうしても運動能力や注意力が落ちてしまうとして、事前に家族などと安全の確認をすることが大事になるといいます。

電動車いす安全普及協会の田澤充康さん

「できればご家族とかケアマネージャーさんとかと一緒に、ふだん使う道路を通行して確認をしてほしいと思います。ここは危ないから注意しましょうとか、この道は通らないようにしましょうとか、走っても大丈夫な道を確認して、安全な道を選ぶということが重要です。初めて乗る場合は、広い場所で練習してから、危ないと思ったら止まるという練習もしっかりやってほしいです」

周囲が安全な環境を整える努力も

死亡事故が起きた尾道市の現場。
事故を受けて警察や県の担当者が集まって点検を行った結果、急に狭くなっている歩道の幅を広げたり、危険な傾斜を緩やかにしたりする対策を検討していくことが確認されました。

注意点を教えてくれた電動車いす安全普及協会の田澤さんは、「シニアカーの利用者は、多くの人にとって人生の先輩だと思います。車もスピードを落としたり優先的に通行してもらったりするなど、社会全体が優しい目で見守ることができたらいいと思います」と話していました。

運転免許を返納する人は2019年には1年間に60万人を超え、多くの高齢者が危険がないようにと車の運転を「卒業」しています。
シニアカーに乗る高齢者自身が気をつけることはもちろんですが、周囲ができるだけ安全な環境を作っていくことも、重要だと思います。

  • 相田 悠真

    広島放送局 記者

    相田 悠真

    2021年入局
    新潟県出身
    県警担当として事件や事故の現場を取材

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