JR芸備線走るカープ号 備後庄原駅でおもてなし
- 2023年04月05日
プロ野球カープをイメージした真っ赤なラッピング列車「カープ号」。JR芸備線を盛り上げようとおととし11月から運行が始まりました。芸備線の存続に向けて地元の人たちの危機感が募るなか、カープ号を活用した大規模なイベントが開かれました。
(三次支局 下井田和恵)
JR芸備線と福塩線で運行されている「カープ号」。運行開始から約1年4か月となる3月19日、「カープ号」の実現に協力してくれた人たちへの感謝の気持ちを込めて、大規模なイベントが開かれました。三次駅からおよそ40人が乗り込みました。
カープ号は、多くの人に芸備線を利用してもらおうと沿線の庄原市の住民で結成した「芸備線にカープ号を走らす会」が企画しました。ラッピングなどにかかる費用は約300万円と試算され、「たる募金」などで募金活動を行いました。この活動が県内に広がり、芸備線を利用する生徒も多い広島市の広島城北高校の生徒たちも協力。その結果、300万円以上が集まって実現したのです。
「芸備線にカープ号を走らす会」の児玉節会長は、イベントのあいさつでこう話しました。
「芸備線にカープ号を走らす会」児玉節 会長
「きょうはようこそおいでくださいました。カープ号は、芸備線をなんとかして活性化しようという思いに駆られて、どうしたらできるだろうかということを話し合うなかで思いつきました。たる募金を始めたら早速、広島城北高校の生徒会のみなさんが募金をしてくれてすごく力づけられたわけです。それできょうは、『ありがとうカープ号』ということでみなさんに来ていただき、カープ号の旅を楽しんでもらおうと思います」
イベントには、カープ号を企画した「芸備線にカープ号を走らす会」のメンバーのほか庄原市の中学生や高校生、それに募金に協力した広島城北高校の生徒たちも参加しました。
途中、庄原市の備後庄原駅では、地元の人たちが出迎えました。地元の女性たちは、ヒバゴンネギやもみじ豚など、庄原の特産を詰め込んだ地産地消の豚汁をふるまいました。
おかわりをする生徒もいて、好評でした。
中学生や高校生は、会のメンバーたちを前に芸備線の利用者を増やすためのアイデアを発表。メンバーたちは、じっくりと耳を傾けました。
生徒の発表
「カープ号のさらなるカープ化です。座席に背番号をつけることで、好きな選手の背番号の席に座りたいなと思ってもらうなど、インスタグラムなどのSNSに投稿できるような見た目や内装にしたらいいと思います。それと、お花見とか紅葉に特化した列車を作って、庄原産の食材を使った弁当を販売すると、もっと芸備線が活性化すると思います」
生徒の発表
「芸備線と庄原を舞台にしたドラマを作ることです。庄原出身の有名な歌手や、映画監督や漫画家など知名度のある人たちとともにドラマをつくればもっと盛り上がると思います。さらに、芸備線からの景色や地元の食べ物を動画に撮って配信する。そして最後に、有名人の社内アナウンスがあったらいいと思いました」
このあと生徒たちはサプライズでカープ球団からプレゼントされた帽子をかぶって、カープ号を背景に地域の人たちと一緒に記念写真を撮りました。
広島城北高校 内藤秀貴さん
「城北生はみんな芸備線を使って学校に来ているので、その一環で手伝えることがあるかなと始めたんですけど、このような大きな形になってすごくうれしいです。(芸備線を)残していく方法はいっぱいあると思うので、どんどんいろんな人たちと話し合って大きくしていってもっと多くの人に芸備線を使ってもらえるようにやっていきたい」
「芸備線にカープ号を走らす会」住田則雄 事務局長
「高校生が募金してくれるなんてまったく思っていなかった。それにわれわれはすごい元気づけられたんです。自分たちが思いついたことがこんなことになるんだということを彼らに伝えたかった。カープ号が取り持つ縁をみんなに感じてもらいたかったというのが一番の気持ちです。あの小さな車両が1台走っても、それだけで乗客が増えることにはならないと、当初から分かっていました。でもこの沿線がカープ号を通してつながった。高校生や若い人につながったというのが驚いたと共に感謝に堪えません」
カープ号は当初、3月末で運行が終わる予定でした。しかし、惜しむ声が多く寄せられたことから、「芸備線にカープ号を走らす会」がJR側に延長を要望し、ことし12月末まで運行されることになりました。カープ号がいつどこに現れるかはサプライズだということです。