なぜ?呉の商店街にシュールなポスター 高校生が制作 NHK広島
- 2023年04月04日

年末に地元・東京足立区に帰省していました。下町ならではのアットホームな商店街が出迎えてくれ、広島でも商店街を取材してみたいと思うように。広島県中の商店街を調べていると、なにやらシュールなポスターが貼ってあるという呉市の商店街を発見。さっそく調べてきました。
(NHK広島 キャスター前川夏生)
商店街のいたるところにユニークなポスター

ポスターがあるのは呉市中心部にある商店街、通称「れんがどおり」。メインストリートには約40店舗が並び、明治や大正などから続く老舗が多いのが特徴です。

まず見つけたのは時計店のポスター。時計が親から子へと世代を越えて受け継がれていく様子が描かれています。

こちらはもち店。店主がお客さんを思いやる気持ちのあたたかさと、お餅を食べた人たちに笑顔の輪が広がっていく様子が描かれています。

そして気になっていたあの刃物店のポスターを見つけました。ちょうど店内にポスターに写っていたお二人がいたので話を聞いてみました。

キャスター 前川夏生
このお店にはどんな刃物が置いてあるんですか?

刃物店 石原浩さん
うちは大正10年に創業して・・・私で3代目なんですが、最近は包丁を主体としてみなさんにおすすめしています。違うのはただ買って捨てるんではなくて買ってもらったら長く使っていただく商品を主体に置いています。包丁にもいろいろ種類がございまして大きく分けたら和包丁、洋包丁がありまして和包丁はどっちかというと職業的にお使いになる方が多いですね。家庭でよく使っていただくのは洋包丁、俗にいう万能包丁ですね。よく言われるのが万能包丁というと一つの包丁で全部できると思われるんですが、お魚の骨は無理です。お野菜はいいんですけど、肉でも冷凍するとすぐ刃が欠けます。冷凍食品は必ず解凍して使っていただくと。うちは大正・・・(続く)

妻 百合子さん
・・・

まって、まって、ポスターそのまま!刃物研ぎの修行をした経験がある浩さんは知識が豊富で刃物の話となると、とっても饒舌(じょうぜつ)になるんです。その光景がそのままポスターになったんですね。ポスターには店主の人柄や地域に愛されるポイントが描かれていました。
ポスターを作ったのは地元の高校生

このポスターを作ったのはなんと高校生。この日は2023年度に飾られるポスターを完成させたばかりの呉三津田高校の2年生(2023年3月10日時点)の生徒に来てもらいました。2年生の授業の一環で2年前から毎年作っています。主に夏休みを使って取材し、およそ半年かけて完成させました。

野戸滉大さん(薬局担当)
ポスター作りは、たくさんの人が見てくれるような見出しやデザインを考え、お店の特徴を描くため僕たちの意見とお客さんの意見を合わせることに苦労しました。取材した店の店主がすごく優しくて面白い方なので人柄があらわれるようにポスターの真ん中に店主を描きました。

坂田泰久さん(すし店担当)
れんがどおりには月に2、3回は来る機会があるんですけどチェーン店に行くことが多くて個人商店に行く機会はめったになかったです。今回のポスターの制作にあたっては個人商店に取材に行きました。最初は行きづらかったんですけど、実際に店主と話してみると人柄の温かさや面白さが伝わってきて話しやすいなと思い、印象が変わりました。
戦前から多くの建物が並んでいたれんがどおりですが、近年は店主の高齢化や後継者不足から廃業する店舗も増えてきました。そんな中、商店街に来る機会が少ない地元の高校生ならではの視点で見つけた魅力がポスターに描かれました。

取り組みが始まった最初の年にポスターが制作された創業100年を越える化粧品専門店を訪ねました。店主の元山さんは、ポスターを見て毎日勇気づけられているそう。
店主 元山 勢貴恵さん
学生さんが私の気持ちをそのまま描いてくれている。毎日毎日ポスターを見てすごく感動しているんです。化粧品専門店だから商品をお客様に渡すところが撮りたいと撮っていただいたのがポスター右下の写真になります。仕事中にポスターを見ると毎日、元気と勇気をいただいて専門店頑張るぞと思っています。
そんな店主のお話を聞いて生徒は

矢野蒼汰さん(印判店担当)
店主の方が元気になるのはうれしいですし、自分たちが作ったポスターを通して呉中通商店街(れんがどおり)が活性化していったらいいなと思います。

山下蒼來さん(コーヒー店担当)
ポスター作りは難しかったけれど、呉の人の温かさを感じることができました。呉の人だけではなく呉以外の人にも呉を好きになってもらってにぎわってほしいと思います。
また、ポスター作りには地元のデザイナーの協力もありました。これまで制作したポスターやポスターに込められた生徒の思いはホームページ「れんがどおりネット」に掲載されています。ユニークで温かい「人」が魅力の商店街でした。
