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G7サミットの島 開催中に津波警報が出たらどうする?

  • 2023年03月28日

G7広島サミットのメイン会場となるホテルがある、広島市南区の宇品島。
サミットの開催中に南海トラフ地震が発生して、広島市にも津波警報が出されたらどうするのか。そんな想定で避難訓練が行われました。参加した住民たちが感じたことは。

(広島放送局 記者 浅井和人)

津波警報が出るほどの大地震 島には「複数の危険」

G7広島サミットのメイン会場となるホテルがある、広島市南区の宇品島。東京ドーム10個分ほどの大きさに、およそ1500人が生活しています。

津波のハザードマップをあてはめると、住宅が多くある島の東部を中心に、高い所では50センチから3メートルの津波が想定されていることが分かります(薄いオレンジ色の部分)。一方、高台を中心に、土砂災害の特別警戒区域に指定されているエリアもあります(紫色の部分)。

元宇品町内会の門隆興会長(80)は、大きな地震が起きた際、島には「複数の危険」があるといいます。

「すぐもう海だからね。津波がきたらどんどん入ってくる。地震の揺れが大きい時は、ひょっとしたら崖崩れがあるかもしれない。津波と土砂災害が同時に起きる可能性もないことはないから、それを想定しながら動いた方がいい」

訓練を前に住民が感じた懸念点は?

 

島で、大規模な避難訓練が行われるのは10年ぶり。
今回は、サミットの開催中に南海トラフ地震が発生して、広島市にも津波警報が出されたという想定です。

訓練を前に、市役所の担当者と住民の代表が集まって打ち合わせを行いました。
不安なことがないか、住民に尋ねてみました。

住民

地震が起きて津波が来ますよって言われたときに、崖がいっぱいある小学校に上がるっていうのは、ちょっと勇気がいりますよね。上がってしまえばもう安心なんですけど、上がっていく道中に何かがあったら怖い。避難する道も大丈夫だということが分かれば安心して上がれますけど。

島では、津波のおそれがある場合の「指定緊急避難場所」は高台にある小学校のみ。
これとは別に、浸水が迫った際に一時的に逃げ込む施設として、赤く印を付けたマンションなど高い建物5つが指定されています。

このうちの1つは、サミット会場となる「グランドプリンスホテル広島」ですが、今回の訓練ではサミット期間中のため使えないという想定にして、小学校に避難することにしました。

市役所の担当者からは、サミット開催中にホテルが本当に使えないのかどうかは、今の時点では決まっていないと説明がありました。

門会長

これは絶対に立ち入れんということじゃないんじゃろ?

市役所担当者

拒否することはないと思うんですけど、ちょっと分からないので。
実際に決めるのは、外務省や警察になると思います。

門会長

そういうケースはどうなのか、話をしないといかん。

訓練当日 小学校に避難して分かったことは

訓練当日の早朝。門会長は、一足先に指定場所の小学校に歩いて向かいました。
避難ルートの途中で、さっそくひびが入った石垣を見つけました。

「こういうところはもう古いからね。クラック(ひび)が入っているから、かなり揺れが激しいとゆるむ可能性がある」

急な傾斜に狭い階段が続き、高齢者には高台にある小学校までの避難が難しいことにも気付きました。門会長は、およそ20分かけて小学校に到着しました。

訓練に参加するおよそ120人の住民も、次々と避難を開始しました。消防団員に支えられながら坂道を登る住民の姿もありました。
 

91歳の住民

えらいです、階段が1段ずつ高くて、ここまで上がって来られんですね。私はもう途中まででいいです。

80歳の住民
 

一時的に逃げ込める施設が5つあるでしょ。高齢で小学校まで上がるのが難しい人もいるのだから、事前に逃げる場所を振り分けておいてもいいかなと思います。グランドプリンスホテルでもいいし、ホテルがサミットで使えなければマンションでもいいしね。

実際に訓練を行うことでみえてきた課題。
特に高齢者を安全に避難させるためには、住民同士が声をかけ合うことが何より重要だという声が相次ぎました。

まだ私は自分の足であがれると思うんですけど、どんどん年を取ったらね、やっぱり一緒に手を引いてもらわないといけんかもしれないし。みんなで声をかけあって、みんなで行こうとなったら行く気になると思うんですよね。

日頃から近所のお年寄りを知ることも大事。知らずに行ってしまうと、その人は取り残されてしまう。

参加した住民から意見を聞いた門会長。津波警報が出た際は、一時的に逃げ込める小学校以外の建物を活用することも重要だと考えています。

「震度の問題や余震の問題があるから、事前に予測はできない。サミットの開催にかかわらず、小学校に避難するなら土砂崩れのない道を選ぶことや、斜面を上がらずにマンションを目指すと決めておくことなど、日常的に考える必要があると思います」

【取材後記】。
南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は80%ほどで、瀬戸内海に面する広島も、決して無縁ではありません。
サミットの開催期間に大地震が起きるのかは誰にも分かりませんが、いつ、どこで起きてもおかしくないのが地震です。
訓練の取材を通して、実際に訓練をしないと分からなかった学びがあることに気付かされました。
ぜひ、住んでいる場所のハザードマップをもとに、避難所の位置やそのルート上に危険がないのかなどを事前に確認して、必要な備えをしてほしいと思います。

  • 浅井和人

    広島放送局 記者

    浅井和人


    2022年入局。
    千葉県生まれ、愛知県育ち。 警察などの取材を担当。 

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