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郵便局が保険を“押し売り”!?

郵便局が保険を“押し売り”!?

2018年4月25日

郵便局が保険の“不適正”営業を行っているという声が番組に寄せられた。実態を探るためSNSで情報提供を呼びかけたところ、消費者のみならず、郵便局関係者からも450件以上の情報が集まった。寄せられた情報をもとに取材を深める “オープン・ジャーナリズム”によって、郵便局で今何が起きているのか、探った。

郵便局が保険を“押し売り”!?

「認知症の義母が、家族の同席なく郵便局の保険に入っていた。郵便局も悪質です」。

昨年、銀行による金融商品の“押し売り”の実態を伝えた番組(※)に、寄せられた1通のメールです。“身近な郵便局にも同様の問題がある。” 取材班は改めて調査を開始しました。

(※)2017年12月22日 放送 
2017 冬スペシャル ~“あの疑惑”徹底追跡~ 銀行が高齢者に金融商品“押し売り”!? 
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4080/


現役・郵便局員からの“告白”

“押し売り”されたという方や、郵便局関係者、金融業界の関係者などに情報提供を呼びかけると、現役の郵便局員からの“告白”が相次ぎました。その一部を紹介します。

「目標達成のためには、“押し売り”せざるをえない」。

「現役郵便局員です。高齢者に対する強引な勧誘、重要事項の不告知、虚偽の説明が常態化しておりまして、厳重な匿名を条件に会社や世の中のために情報提供したいと思います。背景に会社上層部からの苛烈な要求を満たすため、追い込まれた現場がやむを得ずお客様をだましたり、複数人でお客様宅を訪問しているのが現状です。」


告白!保険・“不適切営業”の手法

郵便局の保険販売についてNHKに寄せられている情報提供。その多くは、郵便局の職員や関係者からの“高齢者に押し売りしている”という声です。高齢者に押し売りする理由として「高齢者は郵便局への信頼が厚い」「高齢者はお金を持っている人が多い」などを挙げています。“不適正営業”の手法の一部を紹介します。

1、西日本 50代男性 元・金融渉外担当
「“貯金のようなもの”、“通帳が緑から青に変わる”などと貯金と誤解させて保険に加入させる」

2、中国地方 40代男性 窓口業務担当
「“お金をいったん返す”、“更新”などと説明し、戻ってくるお金が減ることを十分知らせず、途中解約させ、また新たに契約をしてもらう」

3、関東 20代男性 金融渉外担当
「“相続税対策になる”、“介護費の負担を減らせる”など、特定の条件下でないと生じないメリットを語り、保険の支払いにお金がかかることを十分に伝えないまま、契約をしてもらう」


局員が語る“自爆営業”

関係者からの投稿の中には、「ハガキの販売の目標も厳しい」という声も少なくありません。ハガキやふるさと小包などの“自爆営業”と言われる実態が浮かび上がってきました。

郵便局幹部に直撃取材①

取材班に寄せられたメールは280通を超えました(2017年4月18日現在)。 「客をだましている」「心の中で『ごめんなさい』」という現役局員の告白を、郵便局幹部に直接伝えました。郵便局幹部は、実態を把握していると話しました。

郵便局幹部に直撃取材②

“不適切営業”が起こる背景には「上層部からの苛烈な要求」や「大声での恫喝」があるという意見が寄せられています。内部からの指摘に郵便局幹部はどう答えたのでしょうか。

日本郵便からの回答(全文)

日本郵便ならびにかんぽ生命では「保険の不適正な営業を改善するための対策を進めている」と説明しています。しかし、その実効性については、現場の局員から疑問の声が数多く寄せられました。そうした声に対して、日本郵便幹部から番組に届いたのが、こちらの回答文です。

※日本郵便からの回答(全文)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4121/yuubin.pdf

放送後記① 情報提供者から寄せられた声

2018年4月24日に「郵便局が保険を“押し売り”!? ~郵便局員たちの告白~」を放送しました。

番組放送後に寄せられた声を紹介します。

・元郵便局員Bさん 
「メールの数に驚きました。インパクトある内容でしたが、相変わらず会社の対応には辟易しました。やはり会社と社員の意識の差は埋まりそうにありません。時間がたったら、ほとぼり覚めたらまた、手を変え詐欺は続くと思います。第二段やって下さい。期待しております。本当にお疲れ様でした。」

・現役郵便局員Cさん
「充実した内容で、ユニバーサルサービスを郵貯、かんぽで賄う構図が限界という先生の発言には頷けた。

・現役郵便局員Dさん
「郵便局のあり方に一石を投じてくれた点ではありがたい。しかし、パワハラについて、深く触れられなかった。根本的な解決にならないのではないか」

また、こうした声以外にも、「あのような心ない営業をしているのは、ほんの一部。内容に偏りを感じた」という声や、「会社の上からの圧力は変わらない。助けて下さい。」などの声も寄せられました。

放送後記② 担当ディレクター、望月

取材を始めた当初、「郵便局員に高齢者をだますような保険の契約をされた」と聞いて、正直、「どんな会社にも問題社員はいる。郵便局とはいえ、それは同じ。これまでほとんど報道もされておらず、どれだけ大きな問題なのか」という疑問を解消できませんでした。それが大きく変わったのは、ツイッターで情報の提供を呼びかけて1週間もしないうちに全国各地の多くの局員・元局員の方々から「問題はここでも起きている!」「そして、その理由は・・・」という反応が次々と飛び込んできた時でした。

高齢者から保険の契約をとる手法は多岐にわたり、番組で紹介した「保険と貯金の誤認」「短期(2年)解約」「家族の同席回避」のほかにも一定の条件がないとメリットがない「相続対策」や「介護負担」といった不安をあおる手法など、信頼ベースの関係があれば「こりゃ~問題になるわ」と舌を巻くものばかりでした。

しかし、これらの情報をなぜ、私たちに伝えてくれたのか?最初は、成績のために高齢者を狙うことをいとわず、毎月多くの契約を上げる局員への憤りを伝えてくれたり、あるいは、そうせざるを得ない会社の状況を告白したりしてくれた少なくない情報提供者が、「誰もが契約を結んだ日の翌朝、『この契約には問題がある』と電話連絡が来るのではないかと眠れぬ夜を過ごしたことが1回や2回はあるのではないか?」と、今まで自分が結んできた契約の中にも、「完全にはクリーンと言えない契約がある」ことへの後悔の念を口にしていました。契約する場合は相手に、リスクを含めて説明を聞いたことを確認するサインをさせるため、法律的に“被害者”が違法性を立証するのはかなり困難です。しかし、少なくない郵便局関係者が、そのことも含め、心を痛めている状況を知るにつけ、「これは少数の“悪い社員”によって起きている問題ではない」と確信したのでした。

ディレクター 望月健

放送後記③ 担当ディレクター、立花

私が取材した方の多くは、高い目標を達成できなければ上司からの圧力や、懲罰のような研修があると話していました。番組を放送した翌日、取材した方々に郵便局内の様子を聞いたところ、「放送内容を大きな問題だと受け止めていない」「特に何もなかった」などのお返事がありました。

一方で、番組放送以降、投稿フォームには、たくさんの「自分も(家族も)被害に遭った」という声が寄せられました。郵便局を利用する国民の受け止め方に乖離があると強く感じました。正直、「このままでは、郵便局の悪い部分はなくならない」という焦りも生まれました。もちろん、郵便局には、誠実に真面目に仕事をされている方々もたくさんいます。そうした方々の信頼さえも揺るがしてしまうかもしれないことを、今後も取材を続け、詳らかにしていきたいと思います。

ディレクター 立花江里香

放送後記④ 担当ディレクター、吉田

「プレッシャーに負けた自分が悔しくて、許せない」。

これは、今回の取材で会ってお話をお伺いした方の中で、番組内では紹介出来なかった現役郵便局員の方(仮にFさんとします)の言葉です。Fさんは、私に高すぎる目標(ノルマ)設定や上司からの厳しい圧力を語ってくれました。

その中で、「Fさんは、会社の圧力に負けたことはないんですか?」と尋ねたときのことです。

Fさんはしばし沈黙した後、「明確な嘘はお客さんについていません。でも、この人はお金を持ってそうだなと思うと、保険の金額をつり上げ、必要な分以上の保険契約をさせたことはあります。」と打ち明けてくれました。契約がとれない日が続くと、『皆に追いつきたい』、『上司からの叱責を逃れたい』、『恫喝研修には絶対に行きたくない』そうした心理的なプレッシャーが強くなると言います。そして、「会社からのプレッシャーに負けて、結果的にはお客さんを騙し、必要ない保険を押しつけている。そんな自分が許せない」と涙ぐみながら語ってくれました。

勿論、高齢者への“押し売り”は、どんなことがあっても許されることではありません。放送後の反響の中には「不適正な営業をやっているのはごく一部だ」という声も複数いただきました。ただ、私たちの目の前で、どうしようもなくそういう状況へ追いやられ、悲鳴をあげる郵便局員たちがいたことも事実です。そうした状況が少しでも緩和され、強引な保険販売が少しでもなくなればと考え、取材を続けてきました。

ユニバーサルサービスはどうあるべきか、本当に今ある数の郵便局が必要なのか。超高齢化時代・マイナス金利時代にどのようなサービスが提供できるのか、金融以外のビジネスをどう育てていくのか。今回の取材で、郵便局は様々な課題を抱えていること、そしてそれは社会全体で考えるべきことでもあることを強く感じました。私たちはこれからも取材を続けていきたいと考えています。

ディレクター 吉田宗功

放送後記⑤ 取材班一同

今回の放送では、番組内容を本放送に先駆け、SNSで発信、皆さんからの情報提供や反響をもとに更なる取材を進める、という方法で、制作を進めてきました。その数は放送まで450件を越え、内容も当事者の方々の生々しく深刻な声ばかりで、いま郵便局で何が起きているのか、リアルな実態を知らせるものとなりました。また、そうした声を日本郵政グループの幹部に届け、その回答をSNSを通じて紹介。反響を得る、という往復をしながら議論を深めてきました。

おかげさまで放送後の反響も大きく、新たに多くのメールが届いております。その中身は、番組内容と同様のトラブルに巻き込まれたと訴え消費者の投稿や、郵便局の関係者からの更なる情報提供が多くありました、その一方で、こうしたトラブルをおこす局員はごく一部のことで、郵便局全体は決してそんなことはない、というご意見も複数寄せられています。

頂いた声は、被害への怒り、不正な営業をせざるを得ない苦悩、郵便局の信頼を取り戻したいという強い願いなど、いずれの声も温度が高く、私たち取材チームはそれに応えようと走り続けてきました。さらに、いま頂いている声にどのように応えていくのか、新たな企画に向けて議論を始めているところです。

今回、番組に情報提供やご意見を寄せて下さった皆様、本当にありがとうございました。

この記事は2018年4月24日に放送した「郵便局が保険を“押し売り”!? ~郵便局員たちの告白~」を元に制作しています。

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