みんなでプラス メニューへ移動 メインコンテンツへ移動

みんなでプラス

トウモロコシ、竹、パルプ・・・脱プラ素材が次々と登場!

ペットボトルに、レジ袋、歯ブラシに調味料のパック・・・
私たちの身の回りにはプラスチック製品があふれています。

生活に恩恵をもたらす一方で、プラスチックが海に流出して生態系に深刻な影響を及ぼしたり、地球温暖化に影響を与えることなどからも石油由来の使い捨てプラスチックを減らすことが求められています。

今月、企業や団体が SDGsに向けた研究の最前線などを紹介する展示会が行われていました。取材をすると脱プラ社会に向けた、新素材の開発が進みつつあることがわかってきました。
一方で、技術が進んでも普及に向けては様々な課題も・・・。

(地球のミライ 取材班 ディレクター酒井利枝子/井上紗佑里)

大人から子どもまで 注目度が高いSDGs

12月上旬、東京都内で環境問題やSDGsをテーマにした展示会が開かれました。企業や自治体、大学など350以上が参加。
新型コロナウイルス感染拡大で2年ぶりにリアル形式で開かれ、3日間で約5万5000人以上が来場しました。

(会場には小学生の姿も)

会場には、授業の一環として訪れた小学生や高校生の姿もありました。
数人のグループに分かれて、関心のあるブースを訪ね、担当者の話に熱心に耳を傾ける子どもたち。SDGsについての関心の高さがうかがえました。

進む素材開発 サステイナブルファッションも常識に!?

会場の一角に、ダイニングやベッドルームなどが再現されていたブースがありました。 そこには、セレクトショップのように洋服が展示。

実はこの洋服全てが、持続可能性を意識した素材で作られた
いわゆる“サステイナブルファッション”です。石油由来のプラスチックに代わる素材を扱う企業が洋服の開発を行っています。

こちらは、繊維メーカーとともに開発したTシャツ。
見た目も手触りも一見普通のTシャツですが、使われている素材は”脱プラ”を意識した
「生分解性プラスチック」という特殊なもの。
微生物によって生分解されるため、プラスチックごみにならないというメリットがあると言います。

この企業が原料としているのは、トウモロコシです。
トウモロコシから取り出したでんぷんから乳酸を作り、結合させてポリ乳酸を作ります。ポリ乳酸は生分解性プラスチックの1つで、高温多湿の一定条件のもと最終的に水と二酸化炭素に分解されます。

どのように分解されていくのか実験した様子を写真で見てみるとー、
3日目には素材がボロボロに、そして6日目にはかなり細かく分解されていました。

(堆肥温度68℃、水分量50%前後で6日間にわたって実験)
ハイケム サステナベーション本部 高 裕一副本部長

「原料となるトウモロコシは工業用に生産されたものを使っていています。
洋服はまだ開発の段階ではありますが通常の2~3割高いくらいの価格で販売できると考えています。来春の商品化を目指していきたいです」

また、ほかの企業も「ポリ乳酸」に注目していました。作っていたのは歯ブラシです。

この企業では強度を保つために竹を粉末状にしたものとポリ乳酸を混ぜ合わせた素材を柄の部分に使っています。こちらも、プラごみにならずに、土にかえっていく様子が展示されていました。

土に埋めた歯ブラシの推移

海洋に流れ出て生態系に深刻な影響を与えているプラスチックごみの問題を解決するため、いま日本ではプラスチックに変わる新たな素材に様々な企業や研究機関が注目しています。

ポリ乳酸のようなプラスチックの代替素材は「バイオプラスチック」と呼ばれ、海外では普及が進みつつありますが、日本はまだまだこれからだといいます。
国はバイオプラスチックを普及させるロードマップを作成するなど、本格的な普及を目指しています。

複合材料に詳しい 同志社大学 藤井透名誉教授

「私たちがふだん使っている容器やごみ袋のような汎用品(はんようひん)に使われるようになるなど、バイオプラスチックは徐々に広がりつつある段階にあります。
世界的にはバイオプラスチック市場は成長していて、合計で200万トンを超える量が製造されています。
しかし、現在は自動車のフレームのような構造用に使える性能の高い樹脂は再現できていません。

また、一番の課題はコストの高さです。
バイオマス素材から作ると、石油系で作ったものに比べて、2、3倍高くなります」

プラスチックを“ごみ”にしない回収ビジネスも

プラスチックを"ごみ"にせず徹底的にリサイクルしようという企業もありました。
巨大な歯ブラシの下に「ハブラシリサイクル」と展示していた大手日用品のメーカーのブース。

この企業では2015年から使い終わった歯ブラシを回収し、リサイクルするプロジェクトを行っています。回収した使用済みの歯ブラシは、植木鉢や定規、トレーなど身近なものに生まれ変わっていました。

回収された歯ブラシ

この企業では、歯ブラシを回収するために個人や事業者に呼びかけたり、2020年4月には墨田区と協定を結び、学校や公共施設などに回収箱を設置。
1年間で5500本以上の歯ブラシを集めました。

こうしたプラスチックのリサイクルが広がる背景には、国の法律があります。
2022年4月に施行を予定している「プラスチック資源循環法」では製造から廃棄、リサイクルに至るまでそれぞれの段階で対策が定められています。

メーカーに対してはリサイクルしやすい素材でプラスチックを生産することを求め、また小売店などでは無料で配られるプラスチック製のスプーンやフォークを有料化することや、受け取りを断った客には買い物で使えるポイントを付与することなどが検討されています。

ライオン サステナビリテイ推進部 千葉智也主任部員

「プラスチックを扱う企業は、製品を作るだけでなく、リサイクルする責任を伴うようになります。いまはまだ歯ブラシから新しい歯ブラシを作るといった水平リサイクルができませんが実現できるよう技術開発を進めて行きたいと思っています」

ただ、課題はコスト。
会社単独でリサイクルに取り組んでいくのはコストの面での負担が大きく、実際にビジネスとして行うには大きな課題があると話していました。

木材からバッテリーが作れる!?世界初の技術開発も進む

プラスチックごみの削減だけでなく、会場にはSDGsの目標達成に向け、木材を使った技術開発も展示されていました。

木材から作る「セルロースナノファイバー」という新素材です。
紙の原料であるパルプをナノレベルまで解きほぐした繊維です。

セルロースナノファイバーの活用はまだまだ模索が続いている段階だということですが、 国内の間伐材を使えば森林保全にもつながり、二酸化炭素排出の削減にもつながるとして期待されています。

通常は、添加剤や補強材など製品の性能をよくするものとして限定的に使われていますが、この会社ではセルロースナノファイバーをメインに出来ないかと蓄電体に使用しています。

点灯するLED (映像提供:日本製紙)

ことし3月には、東北大学とメーカーが共同でセルロースナノファイバーに蓄電効果があることを世界で初めて発見
。 セルロースナノファイバーで作った蓄電体を充電し、電気がつくのかを試したところ、LEDが点灯したといいます。

セルロースナノファイバーを電極ではさむ(映像提供:日本製紙)

点灯時間はわずか7秒。
研究はまだ初期段階だということですが今後開発が進めば、太陽光発電の蓄電池にも応用できると話しています。
2025年の大阪・関西万博に向けて商品化を目指すということです。

日本製紙 研究開発本部 森田昌浩さん

「木材由来のセルロースナノファイバーの蓄電デバイスを使えば、 従来の蓄電池とは違ってレアメタルがいりません。
セルナノロースファイバーの原料となる木は自社で植林を行っているので、安定供給ができると考えています」

〈取材を終えて〉

SDGsや脱炭素社会が叫ばれているなか、企業はまさに分岐点を迎えていると感じました。プラスチックに代わる新しい素材の開発に取り組んでいるか、投資家や消費者から問われる時代に入って来ているのと感じました。

一方、同志社大学の藤井名誉教授が「SDGsが追い風になって企業は商品開発に突き進んでいるけれども”うわべだけのもの”も多く、注意深くみていかなかればいけない。また、日本だけでなく製品の材料の生産国がどうなっているか地球規模で考えていくことが大事」だと話していたことが印象に残りました。

私たちにできることは何なのでしょうか?
サステイナブルな社会を目指すためには、環境に本当に良いものなのかをよくみる、そして、少し高くても買う。
そういった私たちのひとつひとつの選択が持続可能な社会を後押しするのかもしれないと感じました。