クロ現+
2021年9月15日

目指せ!持続可能な林業 注目の「自伐型林業」とは?

全国の中山間地で広がりを見せているのが、「自伐型林業(じばつがたりんぎょう)」と呼ばれる林業です。
持続可能で社会貢献もできる!?と注目される「自伐型林業」についてご紹介します。
(クローズアップ現代+取材班)

「自伐型林業」特徴は・・・

①対象区画の木をすべて切る「皆伐」ではなく、将来、残したい木を決めて、その支障となる木を間引く「間伐」を長期に渡って繰り返す。「間伐」により残した木の品質は上がり、高く売れるようになるため、将来の山の価値も高まる。
「壊れにくい作業道」の整備も行うなど、山へのダメージを最小限に抑え、災害の起きにくい山づくりにもなる。


NPO「自伐型林業推進協会」によると、自伐型林業は、日本では54の自治体が支援していて、山を持っていなくても、林業を始める若者や移住者が増えているそうです。
個人や少人数で山を持ち、生計を立てるケースもあるそうです。
また、間伐によって一度に伐採する面積を一定以下に抑えられることで、自然環境を守ることにもつながります。自然の中でほどほどに稼ぎながら、環境保護にも貢献できる。環境への意識が高いといわれる今の若者の価値観にマッチした働き方であるとも言われています。

自治体が行っている林業講座



自伐型林業の実践者はいま全国で推定2500人(NPO「自伐型林業推進協会」調べ)。
どんな思いを持って取り組んでいるのか。作業の現場を見せてもらいました。

自伐型林業=100年ものの盆栽!?
大谷訓大さん
「美しいものは長く残ると思うんですよ。なので、美しいものを長くつくっていきたい。
木の配置であったり、道の路線の曲線であったりだとか、そういうものが山になじんでくれば、人工林がつくりだす景観美みたいなものができあがるんじゃないかな。」


こう話すのは、生まれ育った鳥取県・智頭町で、自伐型林業に取り組む大谷訓大さん(39歳)です。
きれいに枝打ちされ、まっすぐな幹が整然と立ち並ぶ杉林。自伐型林業の特徴のひとつ「間伐」を丁寧に繰り返してつくりあげた大谷さんの作品です。



大谷訓大さん
「100年、200年と残るような木を育てていきたいというところで、一番最初に、残す木を決めます。」


美しい森をつくるため、意識するのは、切る木ではなく、次世代に残すべき質の高い木を見極めること
太陽を目指してしっかり枝をつけている幹や、均一で傷がない樹皮をもつ「素直で生命力のある木」が良い木だといいます。 別の木に圧迫されて曲がっていたり、「カン割れ」と呼ばれる傷が入っている「生存競争に負けた木」を切ることで、残した良木がより大きく育っていく。 自伐型林業には、幹に対して醜い枝を切っていく盆栽のような美学があるのです。

大谷訓大さん
「丁寧に間伐された木の配置だったりとか、それに下草が、緑が覆い茂って。動物とか虫たちが生物多様性としてあるという。
そういうものが美しさだと思うので。で、美しいものには資産価値がある。我々は、その資産を高めるための作業をしているっていうところです。」


地域を守る「壊れにくい道」
滝川景伍さん
「できるだけ山を壊さずに、ここに道があるおかげで砂防になるような、砂防効果があるような道づくりをしたいですね。」


砂状の地層が積み重なり、貴重な化石が出土することでも知られる高知県・佐川町。
滝川景伍さん(37歳)は7年前、この町に移住してきました。
林業には欠かせない作業道づくり。崩れやすい山に最初は四苦八苦しましたが、先輩の林業従事者に、「壊れにくい道」をつくる技を教わったといいます。



滝川景伍さん
「(法面の切り高は)大体1.5メートルぐらい。僕170センチなので、これぐらいですよね。これぐらいまでにすると、これ以上崩れてこない。 何でかっていうと、ここ根っこが覆ってくれるんですよ。そうなると(地盤が)強くなる。高すぎると、根っこが届かなくなってしまうので。」


土を切り取る際は、法面を斜めではなく直角にすることもポイントだといいます。こうすることで、水や空気が抜け、崩れにくくなるそうです。
道幅も小型の重機がやっと通れる程度に留めます。何重もの緻密な計算を施した作業道。下手な道のつけ方をすれば、大きな災害につながりかねない。 そんな緊張感をもって、山と向き合っているのです。

滝川景伍さん
「やっぱ自分も地域に住んでるので、防災とか減災に一役買ってるっていう反面、そういう(土砂災害が)すぐに出た時に対処できないと、こちらの信用問題というか、同じ地域の人に良く思われなくなってしまうので、 そこはちゃんとこまめにメンテナンスしたいなと思っています。」


丁寧な間伐や作業道づくりの工程からは、山の価値を高めながら、災害からも地域を守るという自伐型林業の奥深さが見えてきます。 従事者たちは、こうしたことを10年周期で繰り返し、100年、200年先の山をつくっているのです。

一方で、林業の未来を支えるのは、男性だけではありません。 いま全国各地で「林業女子」が増えているというのです。

半数は林業関連職 林業女子たち
日曜日の朝。オンラインで集まっているのは、森林率・全国1位(84%)の高知県に住む林業女子たちです。メンバーは、10~60代のおよそ40人。
このうち半数は、林業に関わる仕事をしているといいます。
この日も、林業に携わる女性を研究しているという大学教員や木材生産の補助金を管轄しているという県庁職員、木材卸しの会社で丸太を売買している人など、多彩な顔ぶれが集合。「現場の本音」「働きやすい林業」といったお題で、定期的なトークイベントなどを開催しているそうです。

オンラインで参加する大学生


ちょうどこれからが本格的に進路を決める時期と話す大学2年生はー

「林業といっても色々な仕事があります。すごく迷っているんですが、自然に囲まれてやる仕事がいいなと思うので、現場職に行きたいなと思っています」


また、最近、県外からUターンしてきたという女性は、実家が山林を所有しているといいます。

「今の時代すごい管理が大変で、お金もかかってしまう。せっかくつけた道が、ちょっとした雨で潰れたというのはよく聞いていた。 昔は手放してしまえと心の中で思ったこともあったんですけど(笑)、高知で育っているので、森林あってこそ。絶対大変だとは思うんですけど、少しずつでも管理に関わっていきたいと思うようになった」



林業女子会のHPより



林業女子会は11年前、京都で生まれました。
立ち上げたのは当時、大学院で森林科学を学んでいた井上有加さん(34歳)。 今は夫と一緒に、木造住宅をつくる会社を経営しています。
京都から始まった会は、その後、自然発生的に各地に波及。 今では海外を含む25か所にグループがあり、それぞれに10~20人のメンバーがいるそうです。

井上さん(真ん中)



井上さんは、こうした盛り上がりを「SNSによって、林業に興味をもつ人たちがつながりやすくなった」と肯定的に捉える一方、「SNSで可視化されるようになっただけで、統計的には(11年前と比べて)林業に興味のある人が増えているわけではないのかな」と、冷静に分析しています。

いま、これまで林業女子会がなかった2つの県で、新たに立ち上げの動きが進んでいるといいます。 100年、200年先を見据える林業のように、「ゆる~く、なが~くやっていきたい。」と井上さんは話していました。

井上有加さん
「メンバーにはもうZ世代の子もいる。いろんな才能を持った女性が林業に関わっていけるように発掘していきたい。」


〈リンク〉
■林業を始めるための詳細マニュアル
→「自伐型林業の手引き 小さな林業で稼ぐ」 作成:ふくおか自伐型林業経営研究会
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/jibatsu.html

■林野庁の給付金制度
→緑の青年就業準備給付金事業
https://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/koyou/03.html
問合せ先 林政部経営課林業労働・経営対策室・林業事業体育成班
ダイヤルイン:03-3502-1629

■NPO法人 自伐型林業推進協会
https://zibatsu.jp/

■林業女子会ポータルサイト
https://forestrygirls.wixsite.com/portal

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。