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「ウチらの未来がやばい。」 ライブで気候危機を訴える若者たち

4月24日、温暖化対策の必要性を訴える音楽ライブイベント「Climate Live」が
世界23か国で行われます。
目的は「音楽を通して気候危機を世界中に訴え、11月に行われるCOP26(地球温暖化対策の国連会議)成功への機運を高める」こと。企画を立ち上げたのはイギリスの高校生で、世界各国の若者がその思いに共感し、独自にイベント開催の準備を進めてきました。

掲げた言葉は「このままだと、ウチらの未来がやばい。」
何が彼らを駆り立てるのか、中心メンバーの1人である高校3年生の山本大貴さんに聞きました。

(地球のミライ 取材班 ディレクター 捧詠一)

色塗りされた国でClimate Live 開催予定(Climate Live Japan サイトより)
各国のClimate Live実行委員会メンバー 毎週ミーティングを行い近況を共有

日本の中心メンバーのひとりは高校3年生

日本での開催準備を進める「Climate Live Japan実行委員会」が始動したのは昨年6月のこと。イギリスのClimate Live発起人から声がかかり、趣旨に賛同した学生たちによって組織されました。

共同代表を務める山本大貴さんは高校3年生。小学生のとき、授業で気候変動について学んだことがきっかけで関心を持つようになりました。

山本大貴さん

山本さんは高校1年生の時、台風19号で被害にあった栃木県を訪ね、ボランティアで被災住宅内の片付けなどを行いました。気候変動により自然災害の被害が甚大化している様子を目の当たりにし、強い危機感を感じたと言います。

その後、国内外の同世代が、気候変動を食い止めようと行動している姿に背中を押され、山本さん自身もSNSでの情報発信や署名活動、国会前でのアクションなどを続けるようになりました。

音楽の力で、多くの人に関心を持ってもらいたい

この4月には、毎週金曜日に学校をストライキし、政府に強力な気候変動対策を求めるスタンディングアクションも始めました。「2030年度までの温室効果ガス排出削減目標」が近々決まるとされる中、日本政府に高い目標設定を促すため、大胆な行動に出ることにしたのです。

批判されることも覚悟の上で、「いま行動せず、将来に後悔したくない」という一念で行動し続けています。

そんな山本さんが、Climate Live Japanの共同代表を担う決心をしたのは、「音楽の力で、より多くの人々に気候変動に関心を持ってもらえるのではないか」と期待したからです。これまでの経験から、企業や政府に働きかけるだけでは、気候変動にあまり関心をもっていない人々を巻き込むことはできず、大きなムーブメントを作るのは難しいと、感じていたといいます。

機会さえあれば、アクションを起こしたいと思ってくれるポテンシャルのある人は多いと思います。今回のライブが多くの人たちのアクションを起こすきっかけになるとうれしいです。持続可能な社会にするために、必要なのは「我慢」ではなくて、「よりよくする」ことだと感じています。問題解決の手段を前向きに一緒に考えて、アクションしていければと願っています。

目指すは 第2の「ライブエイド」

山本さん自身も、音楽の力で救われた経験があります。
気候危機を訴える活動を続ける中で、活動に対するネガティブな反応をSNS上で何度も目にしてきました。

「そんなことをしても意味がない」
「温暖化はしていない。ほかにやるべきことがあるのでは」

スタンディングアクションをしている時も、多くの人は素通りで、時には冷たい目で見られることもあると言います。

自分がやっていることに、どれだけ意味があるんだろう」。
時に、自信をなくし悩むこともありましたが、そんな時、歌手・Anlyさんの『エトランゼ』という曲に励まされました。

「1秒先になにが起きるか誰もわからない」「想いままに歌うこと 誰も止められない」 という歌詞を聴いて、気持ちがふっきれたんです。自分が今、「これをやりたい!」と思うことはやっていけばいいし、これからどうなっていくかわからないから、自分が信じる道を進もうと前向きになれました。

AnlyさんはClimate Live Japanの趣旨に賛同し、出演を決めた

1985年に行われたライブ・エイドの映像からも、大きな影響を受けています。「1億人の飢餓を救う」というスローガンのもと行われたチャリティーコンサート。多くのミュージシャンが趣旨に賛同し、音楽を通して熱狂の渦が巻き起こりました。

「憧れがあって。自分もこんな風に、音楽の力で多くの方と気持ちを同じくしていきたい。だから、Climate Liveのプロジェクトを自分で引っ張っていきたいと感じたんです。」

Climate Live Japan実行委員会メンバーによる決意表明

アーティストたちから賛同の声が続々

今回のClimate Live Japanの企画には、多くのアーティストや専門家などが若者の想いに共感し、賛同する声が上がっています。

Little Glee Monsterのみなさん、音楽プロデューサー・亀田誠治さん、音楽家・小林武史さん、歌手・コムアイさん(水曜日のカンパネラ)、俳優・TAOさん、国立環境研究所 地球システム領域 副領域長 江守正多さん、モデル・小野りりあんさん。動画やメッセージで応援の言葉を寄せてくれ、イベントを盛り上げる大きな力となっています。

もちろん準備ではうまくいくことばかりではありませんでした。アーティストの所属事務所への賛同依頼から、企業に電話しての協賛依頼、イベント概要の企画など、初めて経験することばかり。仲間内で意見が衝突することも幾度とあり、対話を重ねて、合意点を見いだしてきました。

実行委員会によるミーティングの様子

活動資金を賄うためクラウドファンディングを行ったところ、目標金額の150万円をわずか2日で達成。趣旨に賛同する企業も次々と現れるなど、支持の広がりを実感したと言います。

一方で特に悩んだのは、イベントをリアルで開催するのか、オンラインにするかどうかの判断でした。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、このイベントで、誰かの命を危険にさらすべきではない。とはいえ、1つの会場に集まっての熱狂なくして、思いを結実することはできるのか。

仲間内で意見は真っ二つに分かれましたが、最終的には安全面を優先し、オンライン開催を決定しました。

迫る「気候サミット」若者の声にどう応える?

配信会場を下見し 運営計画を詰めていく

そして4月。開催月に入り、準備も追い込みです。オンライン配信場所での、当日に向けた機材チェックや打合せ。参加アーティストとの、演奏曲やトーク内容についてのすり合わせ。イベントをより多くの人々に認知してもらうための広報活動。試行錯誤を続けながら、本番の日を迎えます。

イベントはオンラインで開催予定。無料配信で行います。老若男女、年齢問わず。気候変動に関心がない人も、気軽に参加してほしいと呼びかけています。

まず、ぜひClimate Live自体を楽しんでもらいたいですね。アーティストのみなさんの歌を聴いて、素敵な時間を過ごしてもらいたいです。その上で、僕たちが伝えたいメッセージも届いてくれたら嬉しいです。気候変動問題への危機感を共有したいし、前向きな気持ちで、希望を持って、よりよい社会になるよう一緒に取り組んでいけたらと思います。

今月22日・23日にはアメリカ主催の気候サミット、そして24日にはClimate Liveが世界23か国で開催されます。各国の温室効果ガス排出削減目標が定まろうとする中、各国政府は音楽を通しての若者たちの声にどう応えるのか。
地球に住む私たち一人一人は、どう行動すべきなのか。あなたはどう思いますか?

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