クローズアップ現代

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2021年3月17日(水)
新生活の新しい選択肢? “多拠点生活”

新生活の新しい選択肢?
“多拠点生活”

コロナ禍で迎える進学や就職の季節。住まいをどうするのか。多くの人が悩むなか、新しい選択肢として注目されるのが「多拠点生活」だ。感染リスクの高い都会を離れ、郊外の民家などを一時的な拠点とし、自由に学び、働き、そして暮らす。リモートワークが当たり前になった昨年頃から利用者が急増。半年で新規利用者数が5倍になった業者もある。コロナを機に「所有する」という考えを捨てたという若いビジネスパーソン。仕事や人間関係と「距離」を置くことで、新たな挑戦に意欲が湧いたと語るデザイナー。他方、このサービスを活用して地域のファン(関係人口)を増やし、衰退・過疎化の解決を目指す自治体も登場。コロナ禍での新しいライフスタイルの可能性を描く。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 宮田裕章さん (慶応義塾大学教授)
  • NHKディレクター
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

春、新生活の選択肢?“多拠点生活”

NHKディレクターの髙田理恵子です。取材などがオンラインになることが増えたので、週の半分ぐらいこの部屋でテレワークをしています。

新型コロナの感染拡大から1年。私もリモートワークが増えました。通勤のしやすさで選んだこの部屋でしたが…。

髙田
「壁が近くて、結構圧迫感があります。」

そうした中、気になったのがこのサービス。月額4万円で、全国100か所の家から好きな場所を選んで住むことができます。さらに生活拠点にしたい場所には、住民票を置くこともできます。

今、感染リスクの高い都会を離れ、郊外にも生活や仕事の場を持つ多拠点生活を始める人が増えています。新生活を迎える人も多いこの時期。新たな選択肢になるのか。実際に暮らし取材することにしました。

春、新生活の選択肢?“多拠点生活”

武田:私は来週から大阪に住むので、もう家を決めてきたんですけど、今、見ていてちょっといいかもと思いました。
今まさに、就職や進学で住む場所をどうしようかなと考えている方も多いと思います。

栗原:まさに今、新しいライフスタイルとして注目されているのが“多拠点生活”です。

都会の密を避けて郊外でリモートワークしたり、勉強したりというライフスタイルなのですが、コロナをきっかけに、サービスを提供する会社の利用者がいずれも伸びていて、ある会社では去年(2020年)の4月から、ことし(2021年)の2月にかけて、5倍になったところもあります。

武田:もっと自由に住むことを考えてみようということだと思うのですが、宮田さんはこの多拠点生活どのようにご覧になりますか。

ゲスト宮田裕章さん (慶応義塾大学 教授)

宮田さん:感染症対策をしっかり行うという前提の上ですが、未来の新しい生き方を開くという意味で私も注目しています。今までのように会社だったり、場所に縛られずに自分が望むライフスタイル、こういった可能性を開いていくということですね。

武田:さあ、ディレクターが一度も放送局に戻らずに作った多拠点生活の記録。早速ご覧ください。

コロナ禍の“新しい暮らし方”多拠点生活

髙田
「北鎌倉に来ました。」

目指す家は、都心から電車で1時間の北鎌倉。お寺に囲まれた自然豊かなエリアです。地図を片手に向かっていると…。

髙田
「すみません。家(アドレス)に行きたいんですけど。」

「僕も今、行っています。引っ越しの作業中なんすけど。」

髙田
「ついて行っていいですか?よろしくお願いします。」

現れたのは、およそ60坪の大きな邸宅。

ここは、かつて著名な東洋考古学者が暮らしていたという家。長年、空き家だったものを運営会社が購入し、去年3月にオープンしました。

今回予約したのは、およそ6畳の個室。シーツ掛けをはじめ、自分のことは自分で行うのがこのサービスのルール。

もちろん、夕食も利用者が自分で作ります。広いキッチンには調味料がたくさん。

髙田
「どこの拠点もこんなにあるんですか?」

「いや、ここは特別多いです。」

「みんなが持ち寄って。」

髙田
「なんでこのタイミングでやろうと思ったんですか?」

教育機関職員 松下晃大さん
「ひとり暮らしでリモートってなると、他の人としゃべるっていうのがあんまりなくなるし。」

日中、石段で出会った松下晃大さん。横浜の自宅を引き払い、ちょうどこの日から多拠点生活を始めたといいます。転職を機に仕事はオンラインに。通勤がなくなったことが生活を見直すきっかけになりました。

松下晃大さん
「家で家具を自分で買って置いていても、友達を呼ぶのなんてそんな頻度ないし、ましてやコロナになったら誰も遊びに来ないし。その空間を自分で所有しといても、自分しか楽しめてないから、持ってても持ってなくても一緒かなみたいに。結局、自分が定期的に触れてときめくもの以外は、もういいという判断がありました。捨てる時は。」

自分がときめくか、という基準で持ち物を整理した結果…。

松下晃大さん
「僕はコーヒーとテニスラケットと、プロテインがあれば幸せなんです。」

松下晃大さん
「自分が好きなところを鎌倉なら鎌倉と選んでそこを拠点にして、そこが嫌なら嫌で別に移ればいいじゃんっていうのも自分の決断でそれは全部できるというのも楽だし、しかも動くものを必要最低限、これとこれがあれば俺はもう必要十分。めっちゃ幸福じゃんっていうのがもうわかっているので。」

家の中はネットが完備され、テレワークの環境は抜群です。

キャリアについての会話が自然と生まれます。

大手IT企業勤務 ずきさん
「髙田さんってディレクターなんですか?」

髙田
「はい。」

ずきさん
「ディレクターって職種?」

髙田
「職種です。職種採用なんですよ。結構、年功序列で。でも大企業だから年功序列じゃないんですか?」

ずきさん
「結構、人事制度が変わってポスティングみたいになったんですよ。ことしから。若くてもやりたいやつがやれ、みたいな感じになったんですよ。」

髙田
「手を挙げたりとかしないんですか?」

ずきさん
「あの僕、先週面接受けたんですよ。もう平やりたくねぇと。」

夜になると、仕事の悩みが…

鎌倉のスポーツクラブ勤務
「別に働く場所を限るほどの権利はなくない?会社に。」

東京に勤務
「世の中、単純じゃないんですよ。」

鎌倉のスポーツクラブ勤務
「東京疲弊組だよ。東京で消耗したらだめだよ。」

東京に勤務
「会社にいると、そんなこと思わないんですけどね。ここにいるとなんか…。」

髙田
「会社にいると思わない?みんな一緒だから?」

東京に勤務
「そうなんです。そうなんです。」

多様な働き方の人たちとの出会い。誰もが自身の仕事や将来を見つめ直していました。

千葉県・南房総市での多拠点生活

続いて取材に訪れたのは、千葉県・南房総市。

ここにも多拠点生活のだいご味を味わえる、人気の場所があるといいます。

千倉邸 家守 鍋田ゆかりさん
「はじめまして、鍋田です。」

目指す場所の管理人、家守(やもり)の鍋田ゆかりさんです。家守とは、物件の管理だけでなく暮らしのサポートもしてくれる人。すべての拠点で、地域住民が担当しています。

鍋田ゆかりさん
「千倉邸は結構、1棟貸状態のことも多くて。のんびりと自分の時間を過ごしてください。」

静かな住宅街を抜けて、目的地に到着。空き家をリノベーションした家です。

髙田
「お邪魔します。あ、かわいい。」

鍋田ゆかりさん
「うちの母が作ったやつです。」

鍋田ゆかりさん
「ここにあるのが、菊芋です。しょうがっぽいやつ。」

親戚の家にいるような雰囲気が、ここの魅力だそう。

鍋田ゆかりさん
「じゃあ、ごゆっくり。」

髙田
「1人になっちゃった。静か。」

宿泊者はディレクターだけ。他にどんな人が来るのかは、当日にならないとわかりません。

翌日、東京のスタッフと打ち合わせをしていると…。

「こんばんは。」

ある家族がやってきました。

夫・旅客運送業
「撮影は…僕はちょっと微妙な感じで。建て前的なものがあって、今育休を取ってるんですよ。男性が育休を取るのってまれだから、知られてしまうのが嫌なので。」

夫婦2人で育児休暇を取り、2か月間、多拠点生活をすることにしたといいます。

髙田
「これ離乳食ですか?」

妻・瑤さん
「そうです。」

髙田
「おじや。」

妻・瑤さん
「まずハイチェアがないじゃないですか、子どもの。だから一番つらいのが、子どもの食事。黙って食べられないので。」


「1人が抱えて。」

妻・瑤さん
「ゆっくり私たち、ご飯食べられない。」

ふだんと異なる環境での子育て。始めたのには、あるわけがありました。

妻・瑤さん
「この子が2か月から半年くらいになるまでは、本当に仲悪かったよね。」


「毎日ケンカしてた。」

妻・瑤さん
「毎週木曜日ぐらいになったら、私のイライラがあふれてあふれて。夜な夜な不満をぶつけるみたいな。」

髙田
「それはどういうことをぶつけていた?」


「結局、私(夫)は何もしなくて『あなたが悪いんだ』。それ言われたら、僕は何も言えないからさ。」

子どもと2人だけの毎日に、ストレスを感じていた妻の瑤さん。そんなとき夫から提案されたのが、育児のテレワーク。思い切って、生活環境を変えてみることにしたのです。

妻・瑤さん
「うれしい。私、育休中になったら人と話さないじゃないですか。だから、うれしい。」


「子どもかわいいというのも、僕は昔あまり思えなかったんですけど、それを思えるのは結構でかいなと思いましたね。今まではかわいいより、つらいの方が上回ってたんで。かわいさを感じられる余裕ができたというのはよかったなと。」

暮らし方を大胆に変えることで、家族との向き合い方も違ってくるのかもしれません。

長野県・伊那市での多拠点生活

窓から中央アルプスを一望できる家。長野にある拠点です。

髙田
「おはようございます。寒いですね。」

同世代の女性と親しくなりました。

フリーランスのWebデザイナー 竹山葵さん
「彼氏と一緒に住んでたんですけど、ちょっと物理的な距離を置いてみたくて。(テレワークで)私もずっと家にいるし、彼氏も前の会社で同じだったので、一緒に普通に仕事とかも今もしてるんですよ。なんで、もう距離が近すぎて。1回離れてみて、それでも結婚したいと思えたら、その時結婚すればいいかと思って。究極ですけど。」

髙田
「そういう使い方があるんだ。」

1年前に会社を辞め、フリーランスのウェブデザイナーに。去年11月から、多拠点生活をしています。

竹山葵さん
「この半年間、ずっと家で籠って仕事だけずっとしてて、こうやって時間過ぎちゃうのめちゃめちゃもったいないなって思って。別に成長もしていないし、面白いこともしないし。」

仕事や人間関係、いろんなものから距離を置いたことが自分の可能性に気付くきっかけになったといいます。

竹山葵さん
「人付き合いがあんまり得意じゃなくて、人の目を気にして動いちゃうっていうか、そういうのがすごい嫌。嫌だけどやっちゃうみたいな。(今は)誰も知らないじゃないですか、自分のこと。だからどうにでもなれるっていうか。私が自分をこれが得意だとか、得意じゃないとか、年齢とか女だからとか、男だからとか、勝手に固定観念で自分を縛ってたのを、本当にいろんな人がいるからこうしなくていいんだなとか、こういう時はこうしてもいいんだなとか、考え方はすごい広がるような気がしています。」

都会を離れ、見知らぬ場所を暮らしの拠点にする。あえてそうすることで、見つかるものがあるのかもしれません。

竹山葵さん
「すごーい。めっちゃきれい。」

髙田
「わぁ~。深呼吸もう1回しとこ。これは帰りたくなくなる。」

コロナ禍でのさまざまな多拠点生活

栗原:こちらは広島県・尾道市漁港の中にある、多拠点生活の家です。瀬戸内海が見えていますが、本当に仕事がはかどりそうですね。

暮らしの中の選択肢を多様化する、多拠点生活。コロナ禍の中で、ほかにこんな使い方をしている人がいます。
例えば、東京の大手文具メーカーの会社員。2月からは、神奈川と千葉、そして新潟との多拠点生活をしています。ふだんは自然豊かな新潟で、リモートワークが中心。クライアントとの商談など、どうしても出勤が必要なときだけ首都圏の家を利用します。

一方、東京の大学で都市デザインを学ぶ大学院生。コロナ禍の中でゼミがオンラインになり、多拠点生活を始めました。暮らしの中で町づくりを学びたいと、かねてから興味のあった複数の町で暮らしています。

さて、取材をしている髙田ディレクター。リモートでの番組の制作を続けていますが、このあと向かったのは九州です。どんな生き方を発見したんでしょうか。

働き方、生き方を解放する“多拠点生活”

髙田:今は、宮崎県の日南市におります。

取材の途中で武田アナウンサーと、宮田教授に報告をしました。

武田:今、VTRも拝見しましたが、(多拠点生活)はできるもの?

髙田:できます!多拠点生活だと多様な価値観を持つ人たちに出会えて、自分の考え方とかものの見方が広がったという話もたくさん聞きました。

宮田さん:すばらしいですね。まさに髙田さんがおっしゃっているように、イノベーションというのは多様性から生まれるんです。同じ集団の人たちで集まると平均点は結構高いものが出るのですが、やはり100点、80点を超えるものが出てこないんです。
一方で、多様性を組み込むことで100点とか120点とか出てくるんです。これからまさに社会が大きく変化していく中で、実はこういった多様性というものを意識して暮らしたり働いたりするということは、企業にとってもプラスになるのではないかと最近言われるようになってきています。

武田:私の若いころは例えば、仕事の中に成長とか日々の生きがいというものがすごく強く結び付いていて、どこに住むのか、どうやって暮らしていくのか、そういうことを考えるのをやめてしまっているところが私自身ありました。そういうところもだいぶ変わってきてるんだなと思いましたが、髙田さん、どうですかその辺は。

髙田:そうですね。今あるオンラインの技術とか何か知恵を使えば、自分のやりたい仕事も自分の暮らしたい方法もどちらか1つだけを選ぶのではなくて、どちらも自分の選択で選べるのだなということをこの生活ですごく感じました。

宮田さん:そうなんですよ。テレワークというのは働き方を解放していく手段なんです。子育ての事例というのもありましたが、いかに新しいライフスタイルをこのテレワークの手段の中でわれわれが考えていくのかということがまさに今、働き方、生き方を解放できるタイミングなので、新しい自分の生き方が先にあるような暮らしというものを考えるという意味では、多拠点生活はすごくすてきな切り口になるのではないかと。

武田:確かにそうですね。

髙田:今、私がいる場所がガラス張りになっていて、商店街の中にある施設なんです。町の方が結構、行き交うんですよ。昔、取材させていただいた方とかがたまたま通りがかったりとかして、今のその方のお仕事の状況とかを伺っているときに、力になってほしいことがいっぱいあるというふうに言ってくださって。

今までは転勤をしないと宮崎で働くことができなかったけれど、この多拠点生活をすれば、リモートワークをして、自分が好きな土地で、自分の大切なやりがいを感じている東京の仕事も続けながら両方を諦めなくていい生き方ができるのではないかという発見を今ちょうどしているところです。

宮田さん:なるほど。糸を完全に切る必要はないんですよね。地域にとってもポジティブなことにもなる可能性がありますね。

“多拠点生活”が広げる可能性

地域にとって、多拠点生活をする人はどんな影響を与えているのか。向かったのは、人口およそ9,200の熊本県・多良木(たらぎ)町。町ぐるみで多拠点生活者を受け入れていると聞き、訪ねました。

髙田
「すご!」

ここは、かつて東京・熊本間を走っていた寝台列車を宿泊施設として活用しています。

栃原誠さん。実は町役場の職員ですが、家守の活動もしています。

多良木町役場職員 多良木邸家守 栃原誠さん
「関係人口、地域に関わる人を増やすということだと思うんですけれども。いろんなスキルを持った人って、都市部に多いじゃないですか。逆に言うと、地方には人材という部分が不足していて。(多拠点生活者が)地域でいろんな地域の人と出会って、刺激と刺激でイノベーションが起きないかなと。そのつなぎ役、ハブ役を僕がやれたらいいなと。」

高齢化率40%を超える、多良木町。町のファンになり、愛着を持ち続けてくれる“関係人口”の存在が地域の大きな力になると期待しているのです。

栃原誠さん
「ちょうど、関さんが。」

親子で多良木町に滞在している、関達也さんです。ここに通うようになって2年。まさに、町に刺激を与えてくれる関係人口の1人です。

ウェブライター、動画クリエイターなど、複数の顔を持つ関さん。多拠点生活を送りながら、訪れた地域の魅力を発信しています。栃原さんは、関さんが持つスキルを町に還元してもらおうとプロジェクトを立ち上げました。

動画クリエイター 関達也さん
「最初はほんと、楽しんで来てたんですけど。自分に出来るのかな、みたいな感じだったんですけど、どんどん栃原さんと打ち合わせして進んでいって、具体的に。」

関達也さん
「最初は真上に上げてもらって。」

テーマは、動画制作。最新の機材を駆使した撮影と、編集の技を共有します。

髙田
「何か使えそうですか?」

建設業
「使えますね。」

九州3連覇のブランド米生産者 吉村治さん
「仕事の、ほ場を上から映すことで、ムラができているところを確認したり。作物作りにいかせると思います。」

林業 矢山隆広さん
「こんななるんだ、すげーな。すご、こういうのが撮りたかったんだ。」

さらに、動画配信にもチャレンジ。

矢山隆広さん
「うん、うまい!」

関達也さん
「これ絶対うらやましがられますよ。これはバズるかもしれない。」

矢山隆広さん
「自分でもできるんじゃないかなって思えたんで、新しい刺激ってなかなか難しいんですよね。そういう知識とか技術を持っている人がポンと違う土地に来てくれるだけで、すごい良いことですよね。」

栃原さんは今、この取り組みを町全体に広げています。住民一人一人が多拠点生活者から刺激を受け続けることが、町の活性化の鍵になると考えているからです。

栃原誠さん
「多良木って面白いことが出来るから、行って何かやってみようかなって思ってくれる。地域全体としてこれがもっと広がっていくように、選ばれる多良木町になったらいいなと。」

生き方の解放の先にある未来

武田:この取材を経て、ようやくスタジオに戻ってきた髙田ディレクターです。お疲れさまでした。多拠点生活で外から人が訪れることで、その地域にとってもいろんな可能性が広がるということなんですね。

髙田:そうですね。私がお邪魔した多良木町では人口減少の課題がある中で移住だったりとか、企業誘致だったりとか、そういうことに力を入れてきたのですが、やはりなかなかすぐに移住ということは難しく、その中で多拠点生活先の一つとして、お試し感覚で多良木町に来て暮らしてみる。それで家守を通して地域とつながって、その人らしい、その町への関わりポイントを見つけてもらう方法として、多拠点生活にとても期待を寄せていました。

武田:宮田さんはどうご覧になりました?

宮田さん:そうですね。“関係人口”、あるいは“貢献人口”という言い方ができるかもしれません。多拠点生活というものを活用することによって、さまざまな地域、1か所だけではなくて、多様なつながりというものを作っていくことができるのではないかということです。これが、現代社会の中での新しいコミュニティーのあり方にもなっていくのではないかなと考えています。

髙田:動画制作の講座だったのですが、私もちょっと編集のアドバイスとかをさせていただいて。今まで地域に関わることって、何かすごい大きいことをしなきゃいけないとか、何か団体に所属しなきゃいけないとか思っていたのですが、自分が持っているスキルみたいなものを、ちょっとシェアするだけでも地域貢献できるんだなっていうことがすごい発見でした。

宮田さん:まさにこの地域では豊かな自然に貢献していきたいということだったり、あるいはスポーツだったり、あるいは伝統文化だったり、自分の持っている大切なものっていうのをいろいろな形で共有していくということが、まさにできる時代になってきたのではないかなと思います。

武田:多拠点生活という場所にとらわれない生き方を通じて、自分自身やその地域の可能性を開くことにつながるんだ。これはすごく新鮮に希望のように感じたのですが、宮田さんはこうやって生き方が解放された先にどんな社会が待っていると思いますか。

宮田さん:やはり今までは暮らしている地域の中に教育だったり、あるいは仕事だったり、医療だったり、それがすべてパッケージとしてあるような社会でした。ただ、つながり方というものが選べるようになってきているということです。これは“最大多様”、“最大幸福”というようなことばを当てたりしているのですが、一人一人の多様な生き方というのが先にあって、その上で社会をどう作っていくのか。このような選択肢の中で、より新しい社会を作ったり、あるいは豊かな、かつ多様な生き方は何なのかということをわれわれが追求していくことができるようになるのかなということです。

武田:これから春、転勤や就職や進学でこれから未知の地域に行かなければいけない方がいると思うのですが、それは自分の中の多様性を育むことでもあるし、この日本の中の多様性を育むことなんだと思いました。宮田さん、どうもありがとうございました。そして、栗原キャスターはきょう(3月17日)、この番組最後です。

栗原:担当したのは2年間でした。取材でお世話になった皆さん、本当にありがとうございました。4月からは、「ニュース7」を担当します。番組を離れますが、関係人口の1人として番組で出会った大切なテーマ、これからも向き合い続けていきたいと思います。本当にありがとうございました。