クローズアップ現代

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2020年10月13日(火)
社会を動かす!  女性たちの “ライフスタイルチェンジ”

社会を動かす! 女性たちの
“ライフスタイルチェンジ”

コロナ禍で従来の社会の仕組みや自らの生き方の問い直しが迫られる中、「ライフスタイル」を変え社会を変革しようという新潮流が生まれている。キーワードは「持続可能性=サステナビリティ」だ。40代の女性が責任者となり「丸井グループ」が進めているのは、大量生産・大量消費と決別した店作り。また地方にはインバウンドに頼らず地産地消で経済を回そうと動く女性も。本当の豊かさとは何か、女性たちの新たな挑戦を見つめる。

写真撮影:仁科勝介

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※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 薗田綾子さん (クレアン代表取締役/NPO法人サステナビリティ日本フォーラム事務局長)
  • (VTR出演)のんさん (俳優・創作あーちすと/ジャパンSDGsアクション推進協議会SDGs People第1号)
  • 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)

大量生産・大量消費からの“決別”

コロナの感染拡大で、2か月以上も店舗を閉めざるを得なかった、ファッションビル大手の丸井。小売り部門の売り上げは大きく落ち込み、今月(10月)池袋など2つの店舗を閉じることを明らかにしました。
起死回生の策として期待しているのが、サステナビリティを前面に打ち出した戦略です。サステナビリティ部の部長、関崎陽子さん。カギを握っているのは、消費者の意識の変化だと分析しています。

丸井 サステナビリティ部長 関崎陽子さん
「コロナの時、私もそうなんだけど、結構断捨離して、いらないものとかをすごく集めた時に結構がく然として。」

「お客様の生活もお金の使い方も、コロナを機にいろんなところに目がいくようになって、今まで見えていなかったものが見えるようになって。」

関崎さん
「確かにお客様のライフスタイルをちょっと変えるということが、もしかしたら環境につながる。おしゃれでかっこよくて、実は楽しいみたいなことも一緒に伝えられたら。」

8月、新宿マルイ本館にオープンしたのは、名付けて「売らない店」。客は商品を店頭で体験し、本当に欲しいと思ったものだけを注文する仕組みです。

こちらは、フリマアプリの店。廃棄物を出さない循環型のビジネスを応援しようと、テナントとして招き入れました。テナント料は取りますが直接物は売らないといいます。

関崎さんが入社したころは、大量生産・大量消費社会をけん引、“ファッションの丸井”と呼ばれていました。しかし、リーマンショックなどで2度の赤字転落を経験。目先の利益を追うだけでは生き残れないと痛感しました。

そこで丸井は、2050年までの長期ビジョンを策定。地球温暖化対策やサステナビリティを重視する経営に思い切って転換しました。すると、投資家から高い評価を受け、株価も上がったのです。丸井の青井浩社長は、今回のコロナでの未曾有の危機はむしろ、さらなる変革のチャンスだといいます。

丸井グループ 青井浩社長
「時間軸を長く見た時は、サステナビリティのほうが実はもうかるかもしれない。実は高いリターンを生むかもしれない。これから我々が手掛けるビジネスというのは、すべて社会課題の解決か、環境の保全か、人々の幸せにつながるものかと、このいずれかしかもうやらない。時間はかかりますけども、そういった新しいビジネスをいろんな方々と協力しながら大きく育てていく。」

関崎さんたち丸井グループが目をつけたのは、再生可能エネルギービジネスです。新宿本館の電力を再エネ100%にしただけでなく、電力会社と提携し、みずから再エネを売り出すことにしたのです。
実は、現在の丸井の収益を支えているのは小売りではなく、カードなどの金融部門です。若者向けカードの先駆けとして知られ、およそ700万人が利用しています。簡単に再エネに切り替えられるサービスを提供すれば、環境への関心が高い人たちに長く使ってもらえると考えました。
カードを持っている顧客は、電気代の明細票を写真に撮って送るだけで、新しい電力会社への申し込みが完了します。

この日、関崎さんは提携先の電力会社が契約している太陽光発電所を訪ねました。耕作放棄地だった場所にパネルを設置して、農業と両立させています。

関崎さん
「すごい。これは見ないとわからない。」

消費者は、CO2の削減に貢献できるだけでなく、全国30以上の発電所から、自分が応援したいところを選ぶことができます。“毎日使う電気にもストーリーがある”。そんなライフスタイルを提供しながら、自社のカードも愛用してもらおうという狙いです。

小田原かなごてファーム 社長 小山田大和さん
「農作物と同じように愛情をこめて電気を作っているということなので。」

関崎さん
「私たちはライフスタイルを提案しようってことにずっと切り替えてきていて、こういう時代だから、いろんな選択肢があってよくて、その内の一つが再エネ。選択肢を沢山お客様に提供できればというところなので。」

小山田さん
「是非よろしくお願いします。」

関崎さん
「よろしくお願いします。」

9月、関崎さんたちのチームは、さらに新たなビジネスを立ち上げました。ここは都内のカフェ。

「給水で来たんですけど、水入れてもらっていいですか。」

客はQRコードにスマホをかざせば、マイボトルに水を入れてもらえます。丸井が提供するこのサービス。現在、30店舗以上のカフェやレストランと提携。月額550円で食事をしなくても、何度でも水が補給できます。

提携するカフェ ジェネラルマネージャー
「ペットボトル削減というのも一つの課題だなっていうふうに思っていたので、今回こういうふうに参加させていただくことで、地球環境を少しでも守れるようなことに関われれば。」

関崎さん
「環境に対する価値観の変化とか、社会問題に対する関心の高まりというのは、お客様とか生活する皆さんがいろんな選択肢を求める時代になるんだな。私も試行錯誤ですし、誰もが試行錯誤だと思うんですけども、何か少しでもそこからチャンスを、課題を見つけるというよりは、チャンスを見つけていく、取り組みをしていくことが、企業としてすごく求められると思います。」

女性誌・消費者も注目

サステナビリティに関心を寄せる消費者。女性誌も注目しています。この女性向けの人気ライフスタイル誌では、コロナ禍のこの夏、一冊まるごとサステナビリティを特集。

講談社「FRaU」 関龍彦編集長
「隅から隅までしっかり読みましたと言ってくださる方が多いですね。」

反響を受けて、今後も年内に特集号を発売する予定です。

関編集長
「彼らの取り組み及び、サステナビリティアクションのページを作る。」
「FRaUとすればサステナブルな情報を楽しく面白く発信し続けます。」

今月、環境保護団体が行った調査によれば、コロナ禍を機に買い物をする際の意識や行動が変わったという人は66%に上っています。

都内に住む、森真悠子さんです。自粛生活が続く中、自分が捨てるペットボトルがいかに多いかを目の当たりにしました。

森真悠子さん
「私たちも毎日捨てることへの罪悪感っていうのは、何か感じていたと思います。」

捨てるペットボトルを何とか減らしたいと、家族が好きな炭酸水は専用の機械で手作りすることにしました。また、日常の買い物は、一つ一つ必要性を考えて選ぶようになったといいます。

森さん
「理由を知って選ぶとか、意志を持って選ぶみたいなことですかね。一消費者として、いいものを選ぶというか、いいものに投票していくっていう。」

気づいた!自給自足の地域は強い

コロナを経て、自分が暮らすふるさとを、よりサステナブルにしていこうという地域があります。先月(9月)長野市郊外の山の中で行われた林業体験イベント。その名も…「もりがーる」。

薪(まき)を使った自然エネルギーの普及に取り組む、この地域。その担い手を育てようという試みです。
地域の女性リーダー吉田廣子さんです。

吉田さんは、コロナの前から食やエネルギーの自給自足を目指してきました。

NPO法人 まめってぇ鬼無里 事務局長 吉田廣子さん
「ヤギもお利口でして、好きな草とそうじゃない草が。」

ヤギが放し飼いされているこの場所は、住民が設計から工事まで手がけた太陽光発電所。

電力会社への売電で毎年200万円を売り上げています。その利益を活用して運用している薪ステーション。住民から持ち込まれた山の木を買い取って薪にして販売しています。

吉田さん
「事務所は薪ストーブなので、ここからまたちょこちょこ運ぶんですよ。」

作られた薪は地元の入浴施設などに利用が広がり、化石燃料の使用量を減らしてきました。
食べ物も自給自足を心がけています。環境に優しいだけでなく、地域が経済的に自立する暮らし。それが、このコロナで強さを発揮したと、吉田さんは考えています。
今回のコロナ危機でインバウンドは消滅。日本人旅行客も4月から6月には8割近く減り、観光に頼ってきた地域は大きな打撃を受けました。しかし…。
地元の農家が作った野菜を販売する直売所。旅行客の減少で3割売り上げが落ちたものの、近隣の人たちの利用が中心だったおかげで、吉田さんの地域は持ちこたえています。

吉田さん
「強い地域を作ってきてたんだというのを、この頃本当に思います。コロナのことも同じで、自粛しましょうとなったときに、もちろん商業活動は停止してしまうし、経済的にはすごいマイナスになるけど、でも、こと生きていくということに関して言うと、ここの人たちは自分で栽培したものを自分で食べて生きていくことはできるんですね。」

地域をさらに強くしていくにはどうしたらよいのか。

吉田さん
「それではお願いします。第8回の運営委員会を始めさせていただきます。」

「どんな魅力的な場所にできるかということを、まだ十分に話し合えてないところがあったので。」

7月、吉田さんたちは新たなビジネスを生み出す取り組みを始めました。廃校となった中学校を改装して作ったテレワークの拠点。そこに農業用ロボットを開発する長野市のベンチャー企業を招き入れたのです。

農業用ロボットを開発するベンチャー企業
「左のレバー、少し前の方に倒してもらっていいですか。そうすると前進。」

吉田さん
「あーはいはい。」

高齢化が進む地域で自給自足を続けていけるよう、農家を手助けするロボットの開発を進めています。

吉田さん
「みなさん期待しているので。」

続々…自分も何か行動したい

コロナを機に、社会の仕組みそのものを変えたいと動き始めた人がいます。都内に暮らす会社員の木股里穂さんです。自粛期間中、衝撃を受けたニュースがありました。

インドでは、コロナで工場などが停止したことで、ヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見えたというのです。

木股里穂さん
「自分たちが知らず知らずのうちに環境を汚していたりとか、すごく取り返しのつかないことをしていたということに気がついて。」

ショックを受けた木股さんは、気候変動について調べ始めました。調べれば調べるほど、自分も何か行動したいと思うようになりました。
参加したのは、先月末、日本全国で行われた気候変動アクションです。若者たちがデモ行進をする代わりに、靴を並べて本気で社会が変わってほしいと訴えました。

参加者
「大人の方たちにも、私たちの熱意に気がついてほしいです。そして、見てるだけじゃなくて、一緒に行動してほしいです。」

木股さん
「真剣に考えている自分よりも若い世代がいるのに、私は何もやってきてなかったんだっていうところが、一番ショックでしたし、私も何かやらないと。」

木股さんも、地球を救おうというメッセージを送りました。

木股さん
「大きな岩もたたき続けないと割れない。ひとりひとりが気候変動に関しても、そういう積み重ねをしていけば、そういう流れができていくんじゃないかと信じています。」

社会を変える女性の力

サステナブルな社会を実現していくために、しなやかに闘い続けている女性たちがいます。

CSR48 総監督(リコージャパン) 太田康子さん
「CSR48のみなさーん!」

企業などでサステナビリティを担当する女性たちの集まり、CSR48。

太田さん
「皆さんの熱量がそのまま会社を変え、企業を変え、そして世界を変えるというふうに信じております。」

メンバーは、大企業から中小企業までおよそ100社。企業の垣根を越えて、オンラインで勉強会を開いています。
総監督の太田康子さんです。

太田さん
「社内の人にはなかなか分かってもらえないところが、同じような取り組みをしている他社の人だからこそ分かり合えるっていうところがあったりするので。」

世界では、コロナを機にサステナブルな復興を目指す動きが加速しています。しかし、日本企業の多くでは、サステナビリティ部門は主流とは見られていないため、目先の経済復興が優先されがちだといいます。

CSR48のメンバー
「コロナの影響で、ちょっと二の次になってしまっている印象を持ちますので。」

「私が勤めているところというのは、今回のコロナショックを受けて業績が悪化したことを踏まえて、SDGsに特化した部署を廃止しまして、今後ダイバーシティやSDGsに関する事業をしばらく凍結するっていう経営判断が出た。」

壁を突破するにはどうすればよいのか。女性たちは声を上げ続け、連帯することで、大きなうねりを起こそうとしています。

CSR48のメンバー
「小さなことを女性ならではのネットワークで解決していけるっていうところがあるので。」

「男性の頭で考えると堅く考え過ぎてしまうことを、女性のほうが柔らかく楽しくやろうとする。」

太田さん
「私が重要だなと思っているのは、一人一人の個の力を信じるっていうこと。私たちが本気になって変えていこうと行動を起こした時に、どんな大きな組織も元をたどれば必ず一人の一個の個人なんですよね。だからその一人一人の個人の意識を変革していくっていうところを諦めずに地道にやっていければ、必ず変われるというふうに思う。」

女性たちが動く!コロナ後の新潮流

ゲスト 薗田綾子さん(クレアン代表取締役/NPO法人サステナビリティ日本フォーラム事務局長)

武田:VTRでご紹介した女性誌のSDGs特集を監修された、経営コンサルタントの薗田綾子さんです。薗田さんご自身も、コロナ後に世界の女性たちと勉強会を始められたそうですが、どんなことを話し合っていらっしゃるんですか?

薗田さん:もしかしたら私もコロナにかかったら死んじゃうかもしれないということを考えて、実際に20代から70代の女性たち、スウェーデンやマレーシアの人たちと一緒にオンラインでつながって、そこでポジティブなポストコロナの未来図を描こうということをやりました。

武田:どんな気付きがありましたか?

薗田さん:共通項は、世界を変革していくのに大切なのは、やはりみんなの幸せを考えることが自分の幸せにつながるということと、いわゆる利他の精神みたいなところが共通項としてはありました。

武田:他人を利するような、みんなの幸せを作っていくということですね。

合原:薗田さんを初め、VTRの女性たちもさまざまなやり方で社会を動かそうとしていましたが、それをうかがわせるデータがあります。
環境保護団体が行った調査で、「環境問題や持続可能な暮らしに、コロナ前より関心を持つようになったか?」というという質問に「非常に当てはまる」「ある程度当てはまる」と答えたのが、男性が49.6%に対し、女性は57.2%。

そして、買い物をする際の意識や行動がコロナ禍で変わった人は、男性が61.9%に対して、女性が71.6%となりました。

女性のほうがコロナ後に意識が変わった人が多いというこの結果を、薗田さんはどうご覧になりますか?

薗田さん:実際、阪神・淡路大震災でも3.11のときも、女性はやはりしなやかで強かったというのはあると思うんですね。それは多分、家族や大切な人を守らなきゃいけない、その中で行動を起こしていかなければいけない、日々生きていかなきゃいけないというところがすごくしっかりしているのかなというふうには感じます。
私自身もつながる力とか、壁を感じない、透明の壁で実は壁はなかったんだって、どんどんオンラインでもリアルでもつながっていくという、そういう行動をどんどん起こしていく人たちの中には女性が多かったような気はします。

武田:CSR48の会議の中で「SDGsの部署がコロナ禍でなくなってしまった」という声がありましたけれども、企業にとって、今の危機的な状況を脱することも大変だと思います。それに加えて、サステナブルな経営を武器にしていく。これは本当にできるんでしょうか?

薗田さん:「サステナブル・リカバリー」という言葉が出てきているんです。EUから、いわゆる今までの経済に戻すのではなく、もっと持続可能な環境や社会を考え、実際にESG投資家(環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を重視した経営を行う企業の株式や債券などを対象とした投資)もそこを注目しているんですけれども、そういった社会を作っていこうという流れが非常に強くなってきていると思います。

武田:世界の大企業も今注目しているわけですね。

薗田さん:そうですね。グローバルな企業がどんどん変わってきているんですけれども、実際に日本の企業も再生可能エネルギーに特化していこうとか、あるいは循環型のサーキュラーエコノミーのビジネスを作っていこうという流れも強くなってきていますし、そこがSDGsも含めてビジネスチャンスになってきているというふうに気付いてきていると思います。今どんどん世界の投資家もESG投資家がヨーロッパだけじゃなく、日本もアメリカも増えてきますので。

武田:環境や社会やガバナンスを重視して投資していこうと。コロナ後に改めて注目されているということなんですね。
コロナ禍で私も暮らし方を変えていかなきゃと思っているんですけど、その変化を社会全体の変化につなげていく。最後は個人個人だという話もありましたけれども、私たち一人一人にできることって何でしょうか?

薗田さん:スウェーデン発の「バックキャスティング」という考え方があるんですけれども、未来から考えて、今までの過去のやり方を一度リセットして未来から何をやっていくのか、ありたい姿をまず考えて行動していくという発想です。
実際にSDGsでも、このバックキャスティングというのは応用されていますし、パリ協定、2050年にCO2をゼロにして幸せな社会を作っていこうというのにも応用されているんですけども、まず私たちが幸せなありたい姿を、理想的な姿を描き、それをするために何ができるのか。それも自分だけじゃなくて、未来の子どもたちのために何ができるのかということを考えて行動するということが大切だと思います。

武田:ペットボトルを削減するとか、レジ袋をもらわないというのも未来のためだと考えて行動するということですね。