クローズアップ現代

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2020年4月8日(水)
巨大商店街 いつもと違う春

巨大商店街 いつもと違う春

日本を揺るがす、新型ウイルス。2月後半には大阪のライブハウスで大規模なクラスターが発生、80人以上が感染し、全国に衝撃が走りました。そのライブハウスからほど近く。大阪市の中心部に「日本一長いアーケード」で知られる商店街があります。飲食店からスーパーまで、600以上の店が軒を連ねる「天神橋筋商店街」。大規模クラスター発生、オリンピック延期、日本医師会による”医療危機的状況宣言”…刻々と変わる状況の中で、店主たちは何を感じているのか定点観測する。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 語り 武田真一(キャスター)

新型ウイルス 巨大商店街 “いつもと違う春”

大阪府 吉村知事
「ライブハウス会場において、感染が広まっている可能性がある。」

2月下旬、大阪市中心部のライブハウスで新型ウイルスの大規模クラスターが発生。商店街は、このライブハウスのすぐ近くにあります。

取材を始めた3月中旬。
ライブハウスはイベント自粛を続けたまま。

商店街へは、徒歩10分ほど。意外とにぎわっているようですが。

取材班
「人通りはいつもと比べて?」

常連客(78)
「コロナがあってからは全然やな。こんなん普通に通れないよ、今までやったら。訪日外国人の旅行者の人がいっぱいで。もう全然違うとったけどな。これが僕が生きてきた中では、一番ひどいと思うけど。」

大規模イベントの自粛要請などもあり、このころすでに客足は4割ほど減っていました。

豆腐店
「これがいつになったら収まるかが問題やけどね、コロナウイルスの関係はな。」

どこの店も閑古鳥かと思いきや。
お客さんが絶えない店が。お土産用のTシャツを売っている衣料品店。店頭には、たくさんのマスクが並んでいました。

店主
「どう?ハンドメイドやで。」

「これは1800円。」

取材班
「一個、1800円?」

店主
「高いねん。」

外国人観光客が消えてTシャツが売れないため、外国製やハンドメイドのマスクを入手。

店主
「これ(マスク)はインドかな。」

仕入れ値が高く、思ったほど利益は上がらないといいます。

取材班
「どうですか、このお値段は?」


「高いね。だから、やめた。」


3月中旬、感染はある程度抑えられ、商店街は落ち着いた雰囲気に包まれていました。
しかし、100円均一ショップでは商品の入荷が滞りがちに。

店主
「いつもやったら、そこに山積みにしているマスクや除菌シートが、もう3日、4日で売り切れてそのまま。」

取材班
「あれはすごい売れているんじゃなくて、入ってこないから?」

店主
「そう、そう、そう。」

手書きのポップには、やりきれない思いがにじみます。

“日本からマスクと消毒液と除菌クリーナーがなくなった!店長もどうも出来へん”

店主
「(政府を)日本国株式会社と仮定したらクビやわな、こんな状態になったらな、一般の会社だとしたら。もうちょっと腹くくってやってもろうたら、国民にも理解できると思う。うちらも一生懸命やるけども、限界っていうものもあるし、やっぱり中小をまず助けてあげてって俺は思う。」


商店街の一角には屋台村も。
こちらは沖縄料理の屋台。

店主
「本店だけでも、350から400名近くがキャンセル。」

実は本業は、商店街の近所にある沖縄料理店の店長さん。自粛要請が出た2月末以降、本店の予約が激減。少しでも収入を補おうと、臨時の屋台で働いていたのです。

取材班
「それはお客さんがその日、注文したメニューみたいな?」

店主
「今日はちょっとですね。これあんまり撮らない方がいいですね。」

売り上げを取り戻すには至りませんが、風通しに配慮した屋台は外食をためらうお客さんにも好評のようです。


「屋台の方がなんかね、迷惑かけへん気はしますけど。不特定多数やけど、密閉でもないし。」

取材班
「会うのはいつ以来?」

「1か月ぶりぐらいですね。」


夜9時すぎ。
中心部の串カツ店では、感染予防に細心の注意が払われていました。

取材班
「3人はどういった集まり?」

「布団屋」
「洋服屋」
「昆布屋」

商店街組合の役員たち。
夏に向けたイベントについて話していました。

洋服屋
「僕ら毎年7月には、天神祭っていう大阪天満宮さんのお祭りがあって。それに向けて事業がありまして。女の子だけで“ギャルみこし”っていう、おみこしを担いでいただいている。」

女性たちが担ぎ手を務める“ギャルみこし”。40年の伝統があります。
開催は、7月24日開幕予定のオリンピックと1日違い。東京でオリンピック開催が議論されていたこの時期、商店街では、このおみこしの行方が重大な関心事でした。

取材班
「ものすごい密集度合いですね。」

「密集していいのかどうか。」

昆布屋
「今どんどん話を進めていってるんですけど、オリンピックが中止になったら、こっちの(ギャルみこし)やってもええんかな?やりづらいよね。」

串カツ店の店主も話に加わります。

「劉くん(役員)やって。」

布団屋
「役員なんかしたら(串カツ店の)仕事できへん。」

劉くんこと、劉小亮さん。19歳で中国から来日。大学に通いながら、ずっとこの商店街で働いてきました。

劉小亮さん(36)
「自分の店やりたいって言って、今、自分の店やってるんですよ、ここ。」

取材班
「初めて自分のお店が持てたんですか?」

劉小亮さん(36)
「そうなんすよ。なんとかいい感じで上がってきたかなと、で、先月のコロナでした。正直言うて、3割から4割くらいは(売り上げ)減っていますね。」

中国人の妻と息子の3人暮らし。母国で感染拡大した新型ウイルスには、複雑な思いを抱えているといいます。

劉小亮さん(36)
「誰が悪いとか、それは言うちゃダメだと思います。僕、そういうのはあんまりしたくない。」

取材班
「中国への風当たりの強さを日本で感じたことは?」

劉小亮さん(36)
「僕は特にない。逆にここら辺でも知っている常連さんやったら、『あんたんとこの中国大変やな』とか、そんな声、結構聞きましたんで。『親とか大丈夫ですか?』とか、そういう声もいっぱいいただいているんで。逆に世の中、優しい人はいっぱいいますよ。」


深夜。
商店街の片隅で段ボールの家を作る人が。

「私の寝るとこじゃないですよ。うちのご老体(のため)ですわ。これ(寝床作り)をようせんのですよ、1人で。だから私が毎晩したらんと。」

「あっこに座ってますやろ。もうあいつ79歳かな。」

取材班
「今、コロナウイルスが騒がれていますけれども。」

「マスクだけはしとかないかんなと思って、マスクはしてるけどね。万が一、今倒れたら大変やなというのがありますやん。誰にも迷惑かけたくないしね。」

拾った雑誌や新聞で、新型ウイルスの情報を収集。
商店街のあちこちで闘いが続いています。


取材4日目、3月19日。
3連休を控え、客足は減ったまま。

NHK ニュース
「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学校の急行措置で、世界では104の国と地域の8億5000万人が学校に通えなくなっている。」

世界中で、感染が爆発。株価も急落し、世界恐慌への不安が広がっていました。

総菜店の半額セールにも、人だかりが。

飲食業(派遣)・一人暮らしの女性
「一週間分の(食事)全部冷凍しているんですよ。コロナの影響で仕事がなくて。派遣とか単発のバイトをあちこちでしているので、休みがないんですよ。お給料が10万下がっちゃってるんですよ、今月。その分を取り戻すために、休みはバイトして、きょうはバイトの帰りなんです。これでなんとか一週間しのぎます。(仕事から)帰ったらすぐ寝られるように。」

取材班
「いっぱい買われていますが…。」

会社員
「子どもの分ですわ。子どもが全然食べないんで、ずっと学校に行ってないから。動かないから、家に閉じこもって。土日しか外に出たらあかんって言われているんで。小学生と中学生。だいぶ痩せたんで、まいってるみたいですわ。」


洋服店で店番をしていたのは、串カツ店で出会った組合の佐藤さん。もう1か月、客足が少ないといいます。

佐藤暢大さん(47)
「僕らもお客さんも闘ってるでしょうし、なんとかね、元気に盛り上げられればいいかなと思いますけど。」

何やら忙しそうな様子。

佐藤暢大さん(47)
「商店街の理事会に行きます。」

向かったのは組合の会議所。
あの“ギャルみこし”を予定通り準備していくか、役員たちで話し合います。

佐藤暢大さん(47)
「今、大規模イベント自粛になっていますので、本番を迎えるまで今の段階では分からないですが、とにかく商店街のイベントとして(ギャルみこしの)準備を進めていきたいと。」

呉服店
「できる限りやっちゃった方がいいような気がしますね(7月)23日に。」

たばこ店
「それでギャルみこし(担ぎ手)の募集がね、果たして(応募が)来るんかいうのがね、非常にクエスチョンなところありますよね。」

佐藤暢大さん(47)
「でも今だからこそ、頑張ってやっていける商店街であるというアピールは必要かなとは思っています。」

金物店
「なんかPRするとか、商店街の。例えばタペストリーをあげるとか、日本のお客さんに向けて。この大変な時期に商店街に来てくれてありがとうみたいな。」

アイデアを出したのは、金物店の5代目店主。

金物店
「じっと耐えるだけやったら、ちょっとなんかね。」

「意思表示するっていうのは、すごいいい案。やらんことには伝わらないもんね。」

おみこしの行方は不透明ですが、暗い気分を打ち破る大きなタペストリーを作って、商店街に掲げることが決まりました。


臨時の屋台が好評を得ていた沖縄料理店。

取材班
「今日もいらっしゃったんですか?」

店主
「とりあえず準備だけして、向こう(本店)戻りますけど。」

取材班
「本店についていかせていただくことは?」

店主
「今後それがね、大丈夫かなってところもあるんで。」

取材班
「大丈夫かっていうのは?」

店主
「お店を結局…今後の運営をどうしていくか、継続するかしないか検討まで入っている。」

取材班
「3月(いっぱい)で閉じる可能性も?」

店主
「最短やったらね。最短やったら、そこでもう(閉店)あるかなって。だから結構、今、日々いろいろと細かい業務がいっぱいあって。」

本店の売り上げ不振が止まらず、閉店を考え始めているというのです。

店主
「4月になったら盛り返すとかいう話だったら、全然踏ん張れる話ですけど、もうちょっと先の見込みがつかない、こんな事態になってて。政府の方はね、緊急融資とかやっても、あくまでお金を借りる形じゃないですか。返さなくてはいけないので。」

返済のめどが立たない中、無理して借金を重ねるべきか。手探りの営業が続きます。


その夜。
3連休を控えた商店街に、重いニュースが飛び込んできました。

地域医療機能推進機構 尾身 茂理事長
「ある日、突然爆発的に患者が急増するオーバーシュートが起こりえる。」

大阪府 吉村洋文知事
「大阪、そして兵庫間の往来につきましては、この3連休については不要不急の往来を控えていただきたい。」

事態の収束には、ほど遠い現実。
翌日からの3連休はどうなるのでしょうか?

連休初日の朝。
商店街は、予想外の人出でにぎわいました。

先の見えない自粛要請が続くこと3週間以上。心理的な疲れからか、この日は全国各地で多くの人が外出する結果となりました。
店主たちも、悪疫退散のお札で1日も早い収束を祈ります。

「絶対ここへはコロナ来まへんがな。」

「頑張ります。」

商店街組合の会議所では、タペストリー作りが始まっていました。
買い物に来てくれた人への感謝のことば。少しでも明るい気持ちで困難を乗り越えたいと、思いを込めました。

不動産店
「僕らはただの商売人なんで、コロナを収束することもできないですし、薬も開発できないんで、気分だけでも華やかになってもらったら。」

事態の収束を願う商店主たち。

しかし…。
連休明けの3月24日。

安倍首相
「東京五輪について、1年程度延期することを軸として検討していただけないかと」

釜萢 敏常任理事
「緊急事態宣言については、宣言していただいた方がよいのでは。」

東京や大阪で感染者が急増。
著名人の感染も相次ぎ、どこか楽観的だった空気が一変しました。


新年度に入った4月1日。再び商店街を訪ねました。

取材班
「最近、商店街の様子はどうですか?」

青果店
「もう人はすごい。半分以下になっているね、人通りは。」

取材班
「特に気になったニュースは?」

青果店
「志村さん亡くなって、よけい話が大きくなったな。それまで、よそ事って感じもしとったけどな。ドリフターズ時代から、ずーっと見とったからな。」

商店街を通る人の数は再び減少。
多くの人がマスク姿です。

取材初日に訪れたTシャツ店に行ってみると…。

店主
「Tシャツが全くあかん。1日50枚(売れた)もんが、今やったら1枚とか。もうほんま、店を継続できない。だから辞めるしかないような感じになってまうね。」

東京オリンピックに向けてTシャツを大量に作っていましたが、すべて売れなくなってしまいました。

せめてもの収入にと、ネットに出店していますが、売れるのはマスクのゴムひもばかり。

店主
「ほんまに日本の内閣、日本守れよと。本当にいろんなこと許したる、怒れへんて。とりあえず今の日本、守ったってくれって。ほんまに内閣あげてね、日本守れって。本当に今、日本人頑張っとるから。」

取材班
「僕らまた夏とか取材に来るかもしれませんけど。」

店主
「よしよし、そのときは会えるように頑張ります。」


“ギャルみこし”はどうなったのでしょうか?

佐藤暢大さん
「この一週間で全く変わりましたね。どうなるかっていうところでは、シビアにちょっと少数の役員だけで話し合いを持ちましたね。この間30日だから、2日前ね。でも実施するのはまず難しいだろう。これを乗り越えて7月23日にギャルみこしを行うことは、まずないと思いますね。」

発注していた担ぎ手の募集のポスターは、やむなく制作中止に。

佐藤暢大さん
「この間の、お会いしたときなんかは、頑張れば6月ぐらいには(感染者数が)下がっているんじゃないかって。それがもうガラッと変わって、いや絶対にみんなが一致した意見で、これはそんな簡単に収束しないだろうと。そういう気持ちになっているんじゃないか。」

佐藤さんに案内された先には…。
あのタペストリーが。

しかし…。

佐藤暢大さん
「感染拡大している中、皆さん不幸な思いをされる方が身近に出そうなときに、見て不快に思われるお客様もいるかもしれないから、すごく複雑ですよね。逆に『家に帰りましょう』どう言うたらいいのかな。みんな商売してて、生きるために商売したいし。」

取材班
「いつか収束したら?」

佐藤暢大さん
「いつぐらいになるかな。夏越えて、来年また、冬にまた流行ったりしたら嫌だなとは思うんで、いつか収束するまで粘り強く頑張らないといけない。そんな雰囲気がする1週間でしたね。簡単には直んねぇぞって感じ。」

そして、きのうの緊急事態宣言。
お客さんの来訪を心から喜べる日まで、試練の春が過ぎていきます。

新型ウイルス 揺れる商店主たち

武田:いつもと違う春を互いに支え合うことで、何とか乗り越えようとしてきた商店街の人々。しかし、刻一刻と事態が深刻さを増す中で、次第に不安や諦めを口にする人も現れてきました。

政府は、きのう発表した緊急経済対策に中小企業の支援策を盛り込みました。これまで、政府系金融機関で行われてきた無利子・無担保の融資を民間の金融機関にも広げます。しかし、借りやすくなったとはいえ、これはあくまで借金。今回取材した商店街でも、この先、感染拡大がいつ収束し、営業が元どおりになるか見えない中で、融資を受けることにちゅうちょする人もいました。
さらに現金の給付もあります。事業収入が前年の同じ月に比べ、5割以上減少した中小企業などには最大200万円、個人事業主には最大100万円を給付するとしています。しかし、期待する声がある一方で、事態が長期化した場合、今の支援策だけで乗り越えていけるのか不安の声も上がっています。

命を守るためには必要な外出の自粛。その一方で、追い込まれる商店主たちをどう救うのか。新型ウイルスとの長い闘いを見据え、状況に応じて素早く対応していく支援のあり方が、まさに今、求められています。