福島 塙町の山奥!学校の思い出詰まった食堂
- 2024年04月05日
廃校になった小学校の校舎を活用して交流の場を残していこうと、地域の女性たちが食堂を開いています。その思いを取材しました。(キャスター・渡邉由紀子)
※2024年3月21日に「はまなかあいづTODAY」で放送
山の中に廃校活用した食堂
福島県と茨城県の県境に位置する塙町。町の中心部から離れ、うねった山道を車で進むこと約45分。週末限定で開かれる食堂があります。「ふるさとカフェ矢塚分校」。廃校になった小学校を活用した食堂なんです。毎週土曜・日曜の営業日には、卒業生をはじめ地元の人などが足を運びます。
店長の佐藤秋江さん。この学校の卒業生でふだんは農業をしています。佐藤さん自身も通い、子どもも通った学校。この場所を利用して、地域に交流の場を残したいとの思いがあります。
(佐藤秋江さん)
学校が無くなっちゃうっていうのは寂しいし、いろんな思い出がいっぱい詰まっているところだからみんなで何かやろうって考えました。
ここは、塙町立旧片貝小学校の分校の校舎でした。運動会や催しなどで大人も子どもも集まる地域の大切な場所でしたが、子どもが少なくなり2012年に廃校となりました。
地域の人たちに約60年親しまれてきた場所が、使われずに荒れていくのは寂しい。佐藤さんたち地元の有志は、思い出のある学校を再び人が集まる場所にしようと、月1回の高齢者向けの体操の時間や食事の提供を始めました。
そんな中、「ここに食堂がほしい」と地域の人たちから熱望する声が。週末だけの食堂も開くことにしました。
ここには、かつての校舎の面影が至るところに残っています。広い飲食スペースは昔は集会場になっていて、学芸会では舞台を作って一般のお客さんが観覧する場所でした。
職員室の黒板にはメニューが書かれています。
(佐藤秋江さん)
とにかく最初は「あるものを利用して」っていう意味がありました。それがみなさんに喜ばれるというか、「黒板とかいいね」って言われて。
地元野菜をおいしく食べてもらいたい!
この食堂は、地域の人たち9人で運営。学校の卒業生や子どもを通わせていたというお母さんたちです。
こだわりは「地元の野菜をおいしく食べてもらうこと」。料理に使うのは、佐藤さんたちスタッフや地域の人が育てた地元産の野菜です。標高約700mの矢塚区で育てられる高原野菜は、甘みが強くやわらかいのが特徴だといいます。
人気メニューは「鍋焼きうどん」や「けんちんうどん」。どれも地域の野菜をふんだんに使ったメニューです。
ここで楽しめるのは、食べることだけじゃないんです。佐藤さんたちは、うどん打ちやパン作りの体験教室も行っています。これまでも、町の観光協会と連携して東京などからのツアー客を受け入れてきました。
佐藤さんの指導のもと、うどん打ちを体験。柔らかい生地がどんどん伸びていって、これがまたおもしろいんです。麺の太さをそろえて切るのはなかなか難しいのですが、それも手打ちのよさなのだと佐藤さんは言います。
打ったうどんは、野菜たっぷりの「けんちんうどん」に。自分で打ったうどんはよりおいしく感じられて楽しい体験になりました。
思い出の学校を交流の場に
訪れた人との交流も、佐藤さんの楽しみのひとつです。「この場所に集まれてみんなに喜んでもらえればいい」と地元の常連客とうれしそうに話します。
佐藤さんたちは、思い出の詰まったこの校舎を人が集まる活気のある場所にしていきたいと言います。
(佐藤秋江さん)
とにかく楽しんで「おいしかったなぁ」って言ってもらえたらこっちも元気もらえるし、こういう山奥まで登ってきても食べるところがあるって思ってもらえて利用してもらえればいいです。できるかぎり、健康でいられるかぎりはここで一生懸命みんなと楽しんでやっていきたいです。
あとがき
地元産の野菜たっぷりのメニューには、佐藤さんたちのおもてなしの気持ちがあらわれているようでした。特に佐藤さんは、おいしい料理を提供していくなかで「一緒に協力して活動していく仲間が大切」だと話してくれました。(キャスター・渡邉由紀子)