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福島でも“三大夏かぜ”に注意

楽しい夏休みでも油断なく感染対策を
  • 2023年07月24日

ついにやってきた楽しい夏休み。とりあえず宿題のことは置いといて、旅行に海水浴、プール…楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。ところが、福島県でも“三大夏かぜ”と呼ばれる感染症の一部が流行しています。夏休みを楽しみつつ、健康に過ごすにはどうすればよいのか。対策のポイントを専門家に聞きました。

夏休み初日! プールにぎわう

郡山市安積町にある郡山カルチャーパーク

夏休み初日の今月21日、早速郡山市のプールを取材してみると、多くの子どもたちでにぎわっていました。郡山市安積町にあるこちらの施設では、去年までは新型コロナの感染対策として入場制限をしていましたが、ことしは制限を設けずに客を受け入れています。

夏休み初日にもかかわらず多くの家族連れの姿が
呼び物のひとつ ウォータースライダー

この施設には大きさや深さが異なる5つのプールがあり、午前中から子どもたちのグループや、家族連れなどの賑やかな声が響いていました。

郡山市の小学2年生

(郡山市の小学2年生)
ウォータースライダーが楽しかったです。友達と遊んで楽しみたいです。

郡山市の40歳の男性

(郡山市の40歳の男性)
夏休み初日なので来ました。子どもの体調管理に気をつけながら、いい夏休みの思い出を作りたいです。

福島県で“三大夏かぜ”流行

咽頭結膜熱(プール熱)の原因とされるアデノウイルス(提供:広島市衛生研究所)

楽しいことが盛りだくさんの夏休みですが、“三大夏かぜ”と呼ばれ、主に子どもがかかる感染症の一部が、県内でも流行の兆しを見せています。三大夏かぜは、ヘルパンギーナ手足口病咽頭結膜熱の3つ。いずれもウイルス性の感染症で似たような症状が出ますが、以下に簡単に整理してみました。

▲ヘルパンギーナ
約39度から40度の高熱が1日から3日前後続く。のどが赤く腫れ、水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みが出る。
▲手足口病
口の中や手のひらなどに、2ミリから3ミリほどの水ぶくれを伴う発疹ができるのが大きな特徴。発疹は数日で大きくなり数が増え、1週間程度で赤みが抜けて徐々に消えていく。発熱しないこともある。
▲咽頭結膜熱
夏にプールで感染することも多いため、プール熱とも呼ばれる。39度前後の高熱のほか、のどの痛みに目の充血などがあり、発熱は長いと1週間程度続く。

福島県が週に1度出す感染症の報告まとめ

福島県が県内の感染症の状況をまとめたリポートによると、このうちヘルパンギーナが顕著な増加を見せています。県内49の小児科の医療機関から報告された患者の数は、今月16日までの1週間であわせて398人、1医療機関あたりで見てみると8.12人。6月25日までの3週前と比べると実に7倍の増加です。国の基準では1医療機関あたりの患者数が「6」を上回ると警報レベルとされ、いかに増えているかがわかります。
また、手足口病は今月16日までの1週間であわせて89人、1医療機関あたり1.82人でした。先週からはほぼ横ばいですが、3週前と比べると2倍以上の増加です。

RSウイルスの電子顕微鏡画像(提供:さいたま市健康科学研究センター)

咽頭結膜熱は今月は減少傾向ですが、同じく子どもがかかるRSウイルス感染症は今月16日までの1週間であわせて187人、1医療機関あたり3点82人と、警報レベルとなっています。

“コロナ対策の薄れ背景に”専門家指摘

この患者の急増、背景にはいったい何があるのでしょうか。そして、夏休み中に気をつけなければならないポイントは? 子どもがかかる感染症に詳しい専門家に話を聞くことができました。

「ふくしま木もれ日クリニック」 川井巧院長

「ふくしま木もれ日クリニック」の川井巧院長です。これら子どもの感染症の急増の背景には、新型コロナの感染対策が、以前ほど行われなくなってきたことが背景にあるのではないかと指摘しています。

(川井院長)
新型コロナはとても感染力の強い感染症だったので、コロナの対策をすることで感染がほぼ抑えられていた。いまは対策やその意識が、徐々に薄くなってきているのだと思います。小さい子は以前より、なおのことかぜを引かない状況だったので、これらのウイルスへの抗体がない状態になり、感染が拡大しているのではないか。

そして、川井院長は夏休みでプールや海水浴など、水場で遊ぶ際は密になりやすいため、特に気をつけて楽しんでほしいとしています。

プールには密になるリスクも

(川井院長)
プールや海水浴など水で遊ぶ状況は、これから夏ですし機会は増えると思います。これまでコロナもあって、なかなかできなかったことなので、存分に楽しんでほしいとは思いますが、密が発生しやすい場所でもありますので注意はしていただきたい。プールの水そのものは塩素で比較的殺菌されるので、そこよりは着替える場所などに気をつけた方がいいと思います。

“脱衣所など特に注意”

川井院長は、プールなどで特に気をつけるポイントを整理して教えてくれました。

まず注意すべきはプールよりもむしろ脱衣所だという

ポイント① 脱衣所
まずは屋内にあることが多い脱衣所。コロナでよく指摘された密集、密接、密閉の「3密」状態になりやすいリスクがあります。何らかのウイルスに感染している人が着替え、また別の人が来れば感染する可能性があるため、特に注意すべきポイントとのこと。利用する場合はマスクを着け、手すりやドアノブの接触に気をつける必要があるといいます。

トレイでの手洗いもポイントの1つ

ポイント② トイレ
ヘルパンギーナの原因ウイルスは、腸などの消化器で増殖するとされていて、トイレも要注意の場所だといいます。症状がなくとも、人知れずウイルスを排出してほかの人に感染させるリスクがあり、用を足したあとの手洗いの徹底が重要だとのこと。

タオルの共用も厳禁

ポイント③ タオル
接触感染の原因になる可能性があるため、タオルの使用にも気をつけてほしいとしています。親しい友だち同士でも、同じタオルを一緒に使うなどの行為は避けた方が無難だとのことでした。

さらに川井院長は、発熱などかぜのような症状がある場合、人の集まる場所には行かないのが最も有効な対策だといいます。

症状がある場合は自粛するのも重要だという

(川井院長)
せき、鼻水、お腹がゆるい、結膜炎などの症状がある場合は、プールを含め、人の集まるところに行くのは極力避けるのが一番の対策になる。そうした場合は、なるべく自宅で安静にして過ごしてほしい。

“必要以上に騒がず、冷静に”

一方で川井院長は、これらの感染症は、ほとんどの子どもが乳幼児の時にかかるもので、必要以上に心配する必要はないともいいます。

(川井院長)
これらの感染症は重症リスクも低く、そのため治療薬があるわけでもない。あまりひどくなければ病院でもできることはそれほどなく、症状があるうちは人との接触を避けて自宅で休むのが一番。きちんと対策するのはもちろんだが、感染してもそれほど怖がることなく、経過を見つつ過ごしてほしい。

新型コロナ・オミクロン株の電子顕微鏡画像(提供:国立感染症研究所)

また、コロナの再拡大も気になるところです。福島県のまとめでは今月16日までの1週間の新型コロナの感染者は、1医療機関あたり8.37人と、前の週の1.2倍あまりに増加。県も、夏休みの帰省で高齢者に会う場合はマスクを着用するなど、基本的な感染対策を心がけるよう呼びかけています。コロナへの注意は、どう考えればよいのでしょうか。

(川井院長)
コロナに関してもいくつか治療薬は出ていますが、基本的に使用は重症化リスクのある人だと考えてください。子どもも含め、若くて持病のない人であればコロナに感染しても重症化するリスクは低いので、あまり過剰におそれる必要はないとは思います。ただ、ご家族の中に高齢者や持病のある人がいればかなり注意が必要なので、疑わしい場合は市販の検査キットなどをうまく活用してください。

新型コロナの法律上の扱いがことし5月に5類相当に移行し、ようやく制限のない形で夏休みを迎えることができるようになったことし。しかし、コロナ前の日常を取り戻すためには、戻るなりにある程度のリスクは認識する必要があるようです。できる限りこうした感染症に注意しながら、楽しく夏休みを過ごしたいですね。

  • 添田拓郎

    NHK福島放送局

    添田拓郎

    2021年入局。須賀川市出身。9歳の女の子と5歳の男の子を持つ2児の父。夏休み中の子どもが夏かぜにかからないか、少し心配しています。

  • 藤ノ木 優

    NHK福島放送局

    藤ノ木 優

    福島に来る前は、東京で新型コロナなど感染症を中心に、医療の取材をしていました。夏にプールの脇で飲むビールは最高です。

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