【放送の裏側】NHK福島のバーチャルスタジオの秘密に迫る!
- 2023年05月25日
2020年の12月から「はまなかあいづTODAY」で導入されたバーチャルスタジオ。今回は、バーチャルスタジオの仕組みを技術職員が語ります。
実は狭いニューススタジオ
放送映像を見ると、広そうに感じるニューススタジオですが、奥行きは7m程度です。そのため、大きなセットを建てようとすると、奥行きが足りず、平面的なセットが基本でした。また、天井には、照明器具があるため上方向にも制限がありました。
このような狭いスタジオをより有効活用するために導入したのが、今回特集するバーチャルシステムです。コンピューターグラフィックス(Computer Graphics: CG)技術を活用し、仮想空間上にスタジオを作り、出演者があたかも仮想空間のスタジオにいるかのように見せることができます。
仮想空間のスタジオに入り込む仕掛け
仮想空間上のスタジオに入り込むためには、ちょっとした仕掛けが必要です。それがクロマキー合成と呼ばれる技術です。オンライン会議などで背景をきれいに合成しようと使ったことのある方もいるのではないでしょうか。全面緑色に囲まれた空間で撮影し、緑色部分を切り取って、仮想空間上のスタジオ映像と合成する仕掛けです。映像全体の中の特定の色を透明にするため、某有名キャラクター(緑色)は消えてしまうわけですが、緑色を使わないような服装であれば、無事に仮想空間上のスタジオに入り込むことができます。
クロマキー合成の手順
① 映像の緑成分を切り取る
② 背景のCG映像の上に①で切り取った映像を重ねる
なぜバーチャルと呼ぶのか
バーチャルシステムのお話をすると、なぜクロマキー合成と呼ばずにバーチャルと呼んでいるのかと聞かれます。簡単に回答しますと、単純なクロマキー合成と違いがあるからです。
バーチャルシステムの大きな特徴は、背景の絵がカメラの動きに追従するということです。一般的なクロマキー合成では、カメラが動いても背景は変化しません。下の画像のように、カメラがズームしたとしても、背景の絵はそのままになります(どーもくんが近づいたように見えますが、実際は近づいていません)。
しかしバーチャルスタジオでは、カメラが横に動くと背景も横に動き、カメラがズームすると背景の映像もズームします。つまり、カメラの動きに合わせて背景の仮想空間上のスタジオも動くのがバーチャルシステムです。クロマキー合成技術を用いてより発展させたシステムと考えてください。
福島局のバーチャルスタジオでは、専用のカメラとリモコン雲台(カメラ台とカメラの間に挟み、カメラの向き・傾きを調整するためのパーツで、遠隔操作ができる)で成り立っています。リモコン雲台がカメラがどう動いたかや、どれだけズームしたかといった情報をコンピューターに送り、コンピューターは、カメラがその角度から撮ったらどんな背景になるかを計算して、絵をリアルタイムに作画してくれます。
最新の技術で分かりやすくお伝えします
福島局で導入されているバーチャルスタジオの仕組みを解説しました。この記事では、スタジオを広く見せるという視点で取り上げましたが、バーチャルスタジオを活用すると、立体的な表現が可能になり、さらに分かりやすくお伝えすることができます。ぜひ、番組をご覧の際は、バーチャルスタジオの使い方にも着目してみてください。