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福島県知事がアメリカ横断 風評払拭へトップセールス

  • 2023年02月01日

3年ぶりに海外でのトップセールスを行うためアメリカを訪れた福島県の内堀知事は最初の訪問地・ロサンゼルスで福島県産のコメの輸出拡大と原発事故による風評の払しょくに向けて、アメリカの消費者に県産のコメをPRしました。
この時期のアメリカ訪問のねらいは何なのか。県政担当・潮悠馬記者が同行して取材しました。

最初の訪問地はロサンゼルス。まず日系スーパーマーケットを訪れ、県のオリジナル米「天のつぶ」を炊いたご飯を買い物客に手渡し、試食してもらいました。

続いて、アメリカ国内で65店舗のスーパーを展開する企業の責任者と会談し、JA全農福島を含めた3者で、年間100トンを目標に県産のコメを輸出することで合意。

アメリカ政府は、福島第一原発事故のあとから実施していた福島や宮城など14の県の食品、のべ100品目の輸入規制をおととし撤廃していて、知事の訪米は規制の撤廃後としては初めてです。


コメ農家は販路拡大に期待

原発事故の後、風評被害に悩まされてきた福島県のコメ農家は、今回の知事のアメリカ訪問に期待を寄せています。
県南部の矢祭町のコメ農家、鈴木正美さんです。

原発事故が起きてからまもない頃は、県外でコメを売ろうとすると、心ない言葉が浴びせられたといいます。

「お客様が『矢祭町ってどこなんだ』と。福島ですって言った瞬間に全部タグを外せと。
自分の町の名前が入ったタグを外すというのは、自分たちの頑張りそのものをはがされるような気持ちで本当に切ない思いをしました」

過度な風評被害は減っていきましたが、事故の前に取り引きがあった顧客はゼロになりました。国内のコメの消費量は年々落ち込んでいて、風評と併せたダブルパンチを受けた鈴木さんは新たな販路を海外にも求め、独自にアメリカへの輸出を模索しました。

「つきあいを作ったお客様が戻ってこないということは一方で、そういった環境の中でも買いますよって理解をしてくれるお客様を新規に取りこんでいかなければならない」

去年にはアメリカの日系スーパーとの取り引きにこぎ着けました。
今回の福島県が前面に立った輸出の合意は、販路の拡大を望む県内のコメ農家の後押しだけでなく、国内外での風評の払拭にもつながると期待しています。

「本来だったら国内で売っていきたいわけですがそれがなかなかかなわない。輸出を増大させたいという方向はこれは誰しもが考えることだと思います。 福島県は頑張っていますという意気込みと行動を国内の人にも見ていただきたい」

なぜいまアメリカ?

内堀知事がトップセールスの場所として、アメリカを選んだ背景には2つの要素があります。
それは「輸入規制の撤廃」と「処理水」です。

アメリカは、おととし9月に福島県を含む食品の輸入規制を撤廃していて、安全性をアピールして取り扱いを増やすことで、いまも規制を続ける国と地域に影響を波及させたいという思惑があります。

そしてもうひとつが「処理水」です。政府は海に放出する時期を「ことし春から夏ごろ」と確認しましたが、放出への懸念の声は以前から 国内外で上がっています。放出後に起こりうる風評被害を抑えるには、この時期にしっかりと安全性をPRし、確かな販売網を築いておく必要があるのです。

原発事故からまもなく12年。福島県の食品の輸出量は少しずつ増えているだけに、今回のアメリカでのトップセールスが販路の拡大と風評払しょくにどう貢献するか、注目されます。

  • 潮悠馬

    NHK福島局コンテンツセンター

    潮悠馬

    神奈川県川崎市出身。平成29年NHK入局。警察取材担当、会津若松支局を経て、現在は福島県政取材を担当。あえて一番好きなコメを選ぶとすれば、湯川村産のコメ。

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