福岡・記録的大雨 ハザードマップを読み解く
- 2023年07月18日
リスクが示された地域で起きた災害
7月10日の記録的な大雨により、久留米市田主丸町竹野で発生した土石流。
耳納山地のふもとの「扇状地」と呼ばれる地形、ハザードマップで土石流の危険が示されている場所で起きました。
赤は「土砂災害特別警戒区域」で、土砂災害で建物が損壊し生命や身体に著しい危険が生じるおそれがあるとされる区域です。特定の開発行為は許可制となり、建物の構造規制が行われます。
黄色は「土砂災害警戒区域」で、生命や身体に危険が生じるおそれがあるとされる区域です。
今回土石流が発生したのは地図の中央付近。赤の「特別警戒区域」で甚大な被害が出たとみられるほか、黄色の「警戒区域」にも土砂が流れ込みました。ハザードマップでリスクが示されていた場所で実際に被害が起きてしまいました。
色が付いていない場所=確実に安全とは言えない
一方、ハザードマップ上では赤や黄色に塗られていない場所でも被害が出ました。
土石流の流れを詳しく見ると、土砂は途中で二手に分かれるように流れ下っています。
ハザードマップを重ねてみます。黄色の「警戒区域」の外側にまで土砂が達しているのが確認できます。
今回の土石流は、山の複数箇所で崩れた土砂が集まって流れ下り、土砂が大量だったことから警戒区域の外まで流れ込んだ可能性があるとみられています。
河川工学に詳しい九州大学 小松利光名誉教授
「土砂がどこまで達するかの正確な予測には課題があります。ハザードマップで色が付いていない場所だったとしても、周辺の地域に危険が示されている場合には、自分のところにも危険が及ぶかもしれないと思って避難することが大切です」
浸水地域 ハザードマップと合致
一方、小松名誉教授は、浸水のハザードマップについては実際の被害とかなり合致すると指摘します。
下の地図は、今月10日の夕方に国土交通省のヘリコプターが上空から撮影した画像や標高のデータから、国土地理院が筑後川流域の浸水被害の状況を分析したものです。
▽中流域 福岡県久留米市を中心に大刀洗町を含む東西約10キロ、南北約5キロの範囲で浸水か。
▽下流域 佐賀県神埼市の一部、支流の山ノ井川に近い久留米市三潴町、大木町の西鉄天神大牟田線大溝駅周辺で広い範囲が浸水か。
このデータをもとにNHKが浸水した面積を計算したところ約56平方キロメートルにのぼることがわかりました。ペイペイドームの敷地約670個分にあたります。
これを筑後川水系の「浸水想定区域」と比較すると、浸水が発生した場所のほぼすべてが浸水想定区域の内側に収まっていました。
九州大学 小松利光名誉教授
「5年前の西日本豪雨では岡山県の倉敷市真備町で大規模な浸水被害が発生しましたが、ハザードマップが示す浸水深や浸水域が実際の被害と一致しました。
ハザードマップは地形を大きく反映させているので、氾濫場所や強い雨が降る位置が多少ずれたとしても、浸水域についてはかなり一致する。今回もその一例と考えられます。
自分が住んでいるところのハザードマップを確認して浸水の危険度を認識し、大雨の時に余裕があれば早めに避難し、浸水が思わぬ早さでやってきたら近くの頑丈な建物に避難するなど、状況に応じた避難計画を考えてほしい」
秋にかけて大雨シーズン 改めて確認を
京都大学防災研究所の矢守克也教授は、ハザードマップを「科学の力で検証された予言書のようなもの」と表現します。
ハザードマップで色がついてない場所=確実に安全とは言えないことに注意する必要がありますが、身の回りの災害リスクを把握するためにハザードマップが有効なことには間違いありません。
今後、秋にかけて台風など大雨に油断できないシーズンが続きます。
改めてハザードマップを確認し、いざという時にすぐに行動を起こせるよう備えてください。