デジタル技術で重要文化財を守れ
- 2024年04月10日
3次元のデジタルデータとは?
こちらは永平寺の国の重要文化財の一つ、山門です。
デジタル技術で解析されると・・・
外観だけではありません。内部まで詳しく見えるようになるんです。
永平寺は山門や仏殿などの七堂伽藍が古くからの形で残る国内でも貴重な寺院です。
19の建物が国の重要文化財に指定されています。
しかし、それらの建物を保全するための詳細な図面は十分に残っていません。
そこで、デジタルデータの導入を決めたと言います。
永平寺はおよそ800年の歴史で8回火災に遭っています。いま現状の七堂伽藍の姿を最新の技術で残す事が今の私たちの責務であると思いまして依頼することにしました。
福井の宮大工も参加
データを制作したのは大手建設会社と福井の宮大工などで作るチームです。
去年の7月から19ある国の重要文化財全ての測量に取り掛かりました。
リーダーの池内匠さんはこれだけの数の文化財を一気にデジタルデータ化するのは国内では珍しいと話します。
従来だと写真を撮ったり拓本をとったりとかしていて、なかなか3次元の立体データで形を残す事は困難だったんですが、この方法だと中の構造まで赤裸々に見えますからすごい技術です。
測量の方法は
測量には海外製の特殊な機器が使われます。
機器からは1秒間に最大200万回レーザーが発射されます。
このレーザーが対象となる物の大きさや形などを正確に捉えます。
これまでの測量では巻き尺を直接あてて長さを測ったり、足場を組んで高い所を計測したりしていました。
しかし、今回の方法だと時間の大幅な短縮が実現できますし、貴重な文化財に触れる回数も減らすことが可能です。
さらに、使われている機器は人が片手で持てるほどコンパクトです。
そのため、こんな場所の測量もできます。
暗くてわかりにくいかもしれません。
それもそのはず、これは山門の屋根裏です。
解体しなければわかりにくい屋根の先端部分のデータも集めることができるんです。
さらに彫刻などの細かい部分もデジタルデータ化できます。
これまで凹凸などは正確なデータを残すことが困難でした。
この技術は立体的に表現できるので、細部までより正確な情報を得られるんです。
技術力の向上も
緻密なデータが得られたことは文化財の保存を担う現代の宮大工の技術の向上にもつながろうとしています。
パソコンを操作すれば目的に合わせた断面図を見ることができます。
外観はもちろん、柱の数や組み方などの内部の様子も細かく観察できます。
池内さんは、万が一文化財が被害を受けてもこれまでより短い期間で修復などに繋げられると話しています。
ここまでの映像が手に入るというのははっきり言って予想外で、ホントに見た時には衝撃でした。ありのままの姿を100%後世に残す事ができるというのがまず一番のメリットですね。
永平寺は貴重な文化財を未来に引き継ぐためにデータを生かしたいと考えています。
近い将来、この建物も改修、また耐震についても工事を行わなければなりません。大事な修行のための建物を継承していく。そのためにこのデータが必要なものになると思っています。
課題は費用
今回紹介した技術は『3D点群データ』と呼ばれています。導入すれば様々な効果が期待できると注目される技術なのですが、課題は費用です。測量機器は高いものだと1台1000万円以上かかると言いますし、データの量が多くなるのでパソコンも性能の高い高価なものが必要になります。技術が進歩することである程度解決する可能性はありますが、時間もかかりそうです。そこで、例えば公的機関からの補助などがあればすぐにでも導入を検討したいという所が出てくるかもしれません。
デジタルデータを活用することは貴重な文化財などを後世に伝えることにつながります。こうした動きは是非進んでいってほしいと思います。