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「空き家」を 地域を変える財産に

「空き家」を 地域を変える財産に

2023年9月22日更新

人口減少や高齢化などで、年々増え続ける「空き家」は、地域の大きな悩みの種です。住み手は見つからず、解体にも費用がかかる。持ち主も行政も手をこまねき、結果、地域の負の遺産となりかねません。しかし近年では、行政や住民が地域の空き家を調査し、住宅として利用するだけでなく、リノベーションしてカフェにしたり、住民の新たなコミュニティスペースにしたりするなど、新しい試みが始まっています。

地域の空き家を「負の遺産」にしない

空き家対策は早期対応が鍵。

全国で増え続ける空き家。放置されて古くなればなるほど再利用に費用がかかり、行政も手が出せない、地域の負の遺産となりかねません。福井県美浜町では、まだ新しいうちに空き家の利活用を考えてもらおうと、行政とNPOが協力しながら積極的な活動を行っています。所有者と連絡をとり、早期の対応を促すだけでなく、心配事の相談にも乗り、借りる人と買う人とをつなげます。こうした活動で、8年間で51戸の空き家が生まれ変わりました。

ナビゲーション
売れない 貸せない 壊せない ~空き家対策 新たな壁~ 福井県美浜町
(2019年5月31日放送)

古い空き家の廃材を、オンリーワンの素材にリサイクル

全国で増え続けている空き家。長野県諏訪市に暮らす東野さん夫妻は、地域で解体される古い空き家から出る建材を譲り受け、新しい住居や空間作りに生かす活動をしています。大量生産・効率重視の現在では見ることの出来なくなった江戸時代の木材や、長年使い込まれて独特の風合いがある板、古いトタンなどをリサイクル。オリジナルの家具や空間づくりに役立てています。かつてその家に暮らしていた人たちの思いも大切に受け止めながら、廃材に新しい命を吹き込んでいます。

サキどり↑
空き家に眠る宝物 “廃材”をレスキュー!「仰天!まさかの逸品が我が家に!?」 長野県
(2016年12月11日放送)

空き家活用で 地域に新たな風を

再生した古民家に集う若者たち

人口減少を食い止めようと企業誘致に取り組んできた秋田県五城目町ですが、効果は上がりませんでした。そこで町の命運を託したのが、地域おこし協力隊の若者たち。彼らは土着ベンチャーの起業を支援し、地域の魅力を生かした商品開発に取り組みました。さらに都会の人々から出資を募り、古民家を再生。泊まりに来てもらうだけでなく、一緒に地域を盛り上げるアイディアを練り上げています。昔ながらの朝市にも、若者たちが積極的に出店するようになりました。

東北Z
どんとこい!人口減少 ~東北発・未来を変える秘策~ 秋田県五城目町
(2015年5月29日放送)

空き家と移住希望者をマッチング

空き家率が日本一高い山梨県。甲州市では不動産会社が企画して、空き家の持ち主と移住したい人をマッチングするツアーが行われています。都会に比べて広々とした空き家を、実際に見られるだけでなく、先輩移住者に話を聞いたり、ワイナリーなど地域の魅力に触れたりすることで、移住した後のイメージを具体的に描くことができます。ツアーにはこれまで約140人が参加し、10件の契約が成立。地域の人々も、移住者を呼び込む空き家の価値を再評価するようになりました。

ヤマナシ・クエスト
空き家とわたし 山梨県甲州市
(2018年12月6日放送)

空き家から生まれる人のつながり

地域全体を大きな家に

坂や狭い道が多く、人口減少が深刻な問題となっている神奈川県横須賀市谷戸地区。地域に元気を取り戻そうと、ユニークな構想が動き始めました。その名も「地域100LDK構想」。地域全体を大きな家ととらえ、いくつかの家に地域住民なら誰でも使える「リビング」や「食堂」などの機能をもたせました。人々の行き来を活発にしようという試みです。「リビング」となったのは、地域の空き家。ここを拠点にしてコンサートを開いたり、アトリエにしてアート活動をしたり。地元の人たちも興味を持って集まり、地域は、にぎわいを取り戻しました。

首都圏ネットワーク
横須賀に元気を! 人口減少に負けない「新たな動き」 神奈川県横須賀市
(2018年3月29日放送)

住めなくなっても集落を守る

高齢化・過疎化で人が住めなくなる「無住集落」が全国で増えています。住めなくなってもふるさとを守りたいと、小浜市の上根来(かみねごり)集落は、移転した元住民たちが移転先でもつながりを保ち、毎日のように元の集落に通っては建物の手入れをし、伝統の行事を続けています。岐阜県下呂市では無住集落に残された小学校を改修し、キャンプ場付きの宿泊施設にしました。また、福井県おおい町にある老左近(おいさご)集落では、NPOが元住民たちから家を借り受けて改修し、子どもたちに農村の暮らしを伝えたり、都会との交流拠点にする計画を進めています。

ナビゲーション
住めなくなっても守りたい~“無住集落”元住民たちの取り組み~ 福井県小浜市 福井県おおい町
(2019年3月15日放送)

おわりに

住む人、集う人がいなくなってしまった空き家は、みるみるうちに劣化してしまいます。人が住まなくなった家をただ解体して処分するのではなく、空き家を地域の財産として大事にし、再生させ、再び人が集まれる場所にする。人のつながりづくりを基本にした新たな「空き家対策」は、地域にさらなる可能性をもたらしてくれそうです。