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増える空き家をなんとかしたい

増える空き家をなんとかしたい

2018年11月28日更新

日本では少子高齢化とともに、空き家の数が急増しています。2013年の総務省調査で820万戸だった空き家は、2030年には2000万戸を超えると言われています。
老朽化した空き家は倒壊の危険もあり、各自治体は対策を急いでいますが、相続登記が義務ではなく任意であるため、所有者が不明のことも多く、解決は容易ではありません。
2014年に「空き家等の対策に関する特別措置法」が成立し、自治体による所有者調査や、危険な空き家の強制撤去などの対策がとりやすくなりました。
課題となっている空き家を資源に変えて、地域づくりに役立てていこうという取り組みも全国各地で進んでいます。
NHK地域づくりアーカイブスの動画からいくつかの事例を見てみましょう。

空き家を寄付してもらって安全な町に

長崎県長崎市では、危険な空き家の所有者に家と土地を寄付してもらう制度を作りました。市は、寄付された家を解体し、跡地の利用方法について近隣住民からヒアリング。空き家の活用で、避難場所を兼ねた公園やトイレのある、快適で安全な町になりました。

危険な空き家を利用して防災の町づくり~長崎県長崎市~

全国で急増している危険な空き家。しかし費用の問題や優遇税制の弊害もあり、撤去は思うように進んでいません。長崎市では、危険な空き家の所有者から土地、建物を寄付してもらい、跡地の活用方法を住民からヒアリング。要望をもとに市が空き家を解体し、避難場所を兼ねたポケットパークやトイレ、駐輪場として整備しています。防災上の不安を抱えていた町の環境が良くなり、人口流出が止まらなかった地域に引っ越してくる人も現れました。

クローズアップ現代
“空き家”が街をむしばむ
(2012年4月18日放送)

「プチ移住」で空き家を管理

倒壊するほど状態が悪くなくても、人の手が入らない空き家は傷みやすく、防犯上の問題もあります。そこで、町の外から週末だけ来る人たちに維持・管理してもらおうという、山梨県身延町のアイデア。地域のにぎわいにもつながります。

プチ移住で空き家を維持管理~山梨県身延町~

空き家問題が深刻な山梨県身延町では、町役場が空き家バンクを運営しています。家主に登録してもらった空き家を現状のまま希望者に格安で貸し出し。建物は誰かが管理していないと傷んでしまうほか、空き家の状態では防犯面で心配があるためです。そこにうまくマッチングしたのが、都会に住みながらも週末限定で田舎暮らしをしたい人たち。新たな住民が「プチ移住」することで、地域ににぎわいも生まれています。

サキどり↑
あこがれの暮らしを格安で実現!“プチ移住”
(2013年6月16日放送)

空き家に移住者を呼び込む

移住者を地域に呼び込むために、空き家を地域の資産として積極的に活用している地域もたくさんあります。東京都奥多摩町では、町が提供する空き家を借りて15年暮らすと、移住者がその家を自分のものにできる仕組みを作りました。

空き家を活用して移住者を呼び込む~東京都奥多摩町~

高齢化が進み、空き家が目立つ東京都奥多摩町。そこで町が始めたのが、放置された空き家を活用する取り組みです。町民から寄付された空き家を改修して貸し出し、15年住み続ければ譲渡。模様替えがしたければ、最大200万円を助成します。さらに、築100年以上の古民家を改修し、1週間1万円で移住体験をしてもらうことにしました。豊かな自然と空き家を町の資産として活用することで、人を呼び込むことに成功しています。

首都圏ネットワーク
東京奥多摩町 人口減少対策 「空き家」を活用
(2017年6月21日放送)

古民家の価値を生かす

空き家が、もし魅力的な古民家であれば、地域にとって非常に価値の高い資産となります。島根県大森町では、古民家をただオシャレに再生するのではなく、かつての暮らしの価値もあわせて伝えることで、その真の価値を引き出そうとしています。

古民家の暮らしがよみがえる鉱山の町~島根県大森町~

世界遺産に指定された石見銀山のふもとにある大森町。鉱山の閉鎖で廃れていたこの町を、古民家を再生してよみがえらせているのが、松場大吉さん・登美さん夫妻です。婦人服・雑貨を扱う企業を経営する傍ら、その利益で古民家を買い取り、カフェやショップに改修。古い物をただ保存するのでなく、新しい命を吹き込み、次の世代に渡そうとしてきました。松場さん夫妻の会社で働く若い世代も、地域の新しい担い手として活躍しています。

サキどり↑
美しき町並みを“暮らし”で復活
(2017年2月12日放送)

秋田県五城目町町村地区では、取り壊し寸前だった古民家を会員制宿泊施設として再生。全国から多くの人たちが「第二の故郷」を求めて訪れています。地元の若者が古民家再生のために維持・管理費を全国に呼び掛けたところ、想定以上の金額が集まり、会員は千人以上に。若者たちは定期的にイベントを開き、会員と地元住民との交流を図っています。地元住民も会員の訪問を喜び、地元住民と会員との個人的なつながりも生まれています。

サキどり↑
見つけてつながる!MY農家
(2015年9月13日放送)

リノベーションして町を活性化

中古の物件を改装し、新しい価値をくわえる「リノベーション」。さらに地域全体を視野に入れて行うことを「エリアリノベーション」といいます。岡山県問屋町では、地域の人々が知恵を出し合うことで、行政主導の町並み作りではできない活気が生れています。

民間の力でエリアリノベーション~岡山県問屋町~

空き家・空き店舗を改装し、新たな価値を加える「リノベーション」。それを町全体に広げる「エリアリノベーション」が各地で行われています。成功の鍵は民間の力。岡山県問屋町では、「他にはない町を作ろう」と、一本の通りに目をつけたデザイナーのリノベーションをきっかけに、エリア全体に個性的なお店が集まるように。行政主導の限界が明らかになった広島県三次市でも、市民からアイデアを募って、話し合いを進めています。

NHKニュース おはよう日本
まちごと再生「エリアリノベーション」成功のカギは
(2017年1月20日放送)

観光客が減り、空き店舗が目立つようになった熱海。地元に戻ってまちづくりの会社を興した市来広一郎さんが、まず取り組んだのは、商店街に増えていた空き店舗のリノベーションでした。できるだけお金をかけずに自分たちで改装し、カフェやゲストハウスに。さらに、空き物件を利用して起業したいと考える人たちのリノベーションスクールも始めました。シェアハウスや商業ビル再生など、さまざまな事業のアイデアが生まれています。

サキどり↑
小さな力を集めて よみがえる熱海
(2017年3月19日放送)

空き家をコミュニティづくりの拠点に

東京都世田谷区には、亡くなった所有者の志をひきついで、地域のみんなが運営する「岡さんの家」があります。コミュニティカフェなど多様な地域活動の拠点となっています。

民家を生かし地域の人たちで運営するコミュニティカフェ~東京都世田谷区~

世田谷区にある築60年の民家「岡さんのいえ」。ここでは、子育て中の女性たちなどが気軽に集まり、悩み相談や情報交換ができるコミュニティカフェが定期的に開かれています。元の持ち主の女性は、子どもたちに英語やピアノを教えていましたが、99歳で亡くなるときに、子どもたちや地域のために使ってほしいと遺しました。今では、定年退職した高齢者や主婦など、地域の人々が運営に関わり、地域活動の拠点となっています。

団塊スタイル
現代の井戸端“カフェ”
(2014年1月17日放送)

おわりに
全国で増え続ける空き家問題を解決するため、国もさまざまな施策をとっており、自治体の対策はしだいにとりやすくなっているようです。住民たちがこの取り組みにどう関わることができるかが、成功の決め手です。空き家を資源として有効に再利用し、地域の宝に変えましょう。