NHK放送文化研究所

2021年メディア調査

ニュースを知るのはネットで? それとも新聞の紙面で?

電車の中で新聞を読んでいる人をすっかり見かけなくなりました。
ニュースを知りたいときは、インターネットのニュースサイトやアプリで、という人もいることでしょう。

「メディア利用の生活時間調査」では、

  • “スマホやPCで、インターネットのニュースメディアを利用する”
    (以下、「ネットのニュース」)、
  • “紙の新聞を読む”
    (以下、「紙の新聞」)

という行動についても調べています。それぞれの行動の内容はつぎのとおりです。

■ネットのニュース
スマートフォンや携帯電話,パソコン・タブレット端末でニュースや新聞の電子版を見る・読む
(Yahoo! ニュースやLINE NEWSなどを含む)

■紙の新聞
紙の新聞を読む,朝刊・夕刊・スポーツ紙・業界紙・広報紙・新聞の折り込みチラシなどを読む

ここでは、「ネットのニュース」「紙の新聞」の2つの行動が、それぞれどのくらい広く行われているかをみてみたいと思います。
インターネットや新聞紙面以外に、テレビでニュースを知ることもできますが、今回は、「ネットのニュース」と「紙の新聞」に注目します。

【図1】「ネットのニュース」「紙の新聞」の行為者率(月曜)

図1のグラフは、「ネットのニュース」「紙の新聞」の1日あたりの行為者率、つまり利用する人の割合を表しています。
全体では、それぞれおよそ3割。
年層別に「ネットのニュース」と「紙の新聞」の行為者率を比べると、20代から50代までは「ネットのニュース」のほうが高く、60歳以上は「紙の新聞」のほうが高くなっています。
年齢が高くなるにつれ、「紙の新聞」を読む人の割合が高くなっていることがわかります。

そして、「ネットのニュース」と「紙の新聞」の両方を利用する人の割合を調べてみたところ、全体の9%でした。
「ネットのニュース」の利用者層と、「紙の新聞」の利用者層は、あまり重なり合っていないようです。

図1では、「ネットのニュース」をみる機器を区別していませんが、機器別では、スマートフォン・携帯電話の利用が25%、これに対し、パソコン・タブレット端末の利用は6%で、スマートフォン・携帯電話のほうが使われています。

さて、「ネットのニュース」「紙の新聞」は、1日のいつ読まれているのでしょうか。

【図2】時刻別の「ネットのニュース」「紙の新聞」 行為者率(月曜)

図2のグラフは、「ネットのニュース」と「紙の新聞」の行為者率の1日の推移を表しています。
緑色の線「紙の新聞」は、午前6時から10時の朝の時間帯の利用が多く、ピークの7時30分から8時30分では4%近くに達しています。
新聞は、購読していると毎朝配達されるので、"朝に新聞を読む"というルーティンができあがっている人もいるのかもしれません。

一方、紫色の線「ネットのニュース」では、朝、昼、夜に行為者率の上昇がみられます。
朝だけでなく、昼休みや帰宅後など、利用者がそれぞれに自分の都合のいい時間にニュースをみていて、利用のタイミングが分散化していると考えられます。
夜間は、「ネットのニュース」の行為者率が19時30分から22時にかけて増加傾向にあるのに対し、「紙の新聞」では減少傾向です。

「ネットのニュース」を利用する人に絞ると、その利用時間は1日につき平均49分です。
「紙の新聞」を読む人では、その閲読時間は1日につき平均44分です。
スマホやPC、それに対し「紙」と媒体はちがえど、ニュースの取得に費やす時間量は同じくらいです。

今回、「ネットのニュース」は中年層に、「紙の新聞」は高年層でよく利用されていることがわかりましたが、10代でこれらを利用する人の割合はわずかでした。
彼/彼女たちがこれから年齢を重ねていくと、インターネットや新聞でニュースにふれる時間を持つようになるのかについても気になるところです。

(伊藤 文 研究員)