NHK放送文化研究所

2021年メディア調査

テレビ画面、何かほかのことをしながら使っていますか?

「メディア利用の生活時間調査」では、「テレビ画面」、「スマートフォン・携帯電話」、「パソコン・タブレット端末」という3種類の機器(デバイス)の利用状況がくわしくわかります。利用状況について、そのデバイスの利用のみが行われている「専念利用」と、その逆で、何かほかのことをしながら利用されている「ながら利用」とを分けてみることができることもその一つです。

今回は、テレビ画面の「ながら利用」に注目したいと思います(専念利用については、コラム「テレビ画面、集中して見ていますか?」参照。)まず、全体のテレビ画面を利用している人の割合(行為者率)を、「ながら利用」と「専念利用」に分けて、一日の推移をみてみます(図1)。

1.テレビ画面のながら利用

図1 時刻別のテレビ画面利用 「ながら利用」・「専念利用」
(全体 30分ごとの平均行為者率 月曜)

「ながら利用」の一日の推移をみると、朝、昼、夜の3つのピークが特徴的です。ピークは19時から19時30分の21%です。

では、このテレビ画面の「ながら利用」は、何をし「ながら」なのでしょうか。

2.何をしながらのテレビ画面利用か

図2 テレビ画面の「ながら利用」において同時に行われている行動
(全体 1日の行為者率 月曜)

図2では、テレビ画面が「ながら利用」される際に同時に行われている行動のうち、1日の行為者率(その行動をした人の割合)が高い10項目を並べています。順にみていくと、まず、「食事」です。全体の51%と群を抜いて高く、テレビ画面の「ながら利用」では、食事をしながらの利用がもっともよく行われています。過去に実施した「国民生活時間調査」でも、朝・昼・晩のいわゆる食事どきになると、食事をしながらテレビを見る人が増えることが確認されてきました。

食事に次いで高いのは、「スマートフォン・携帯電話の利用」で28%。「身のまわりの用事」*を行いながらのテレビ画面利用と、「家事」**をしながらのテレビ画面利用の行為者率は同程度です。「会話・おしゃべり」***をしながらテレビ画面利用を行うという人の割合は14%です。

人々がテレビ画面を利用する場面には、食事や身のまわりの用事、家事といった、生活上必須のことをしている場面と、スマートフォン・携帯電話の利用や会話・おしゃべりといった、コミュニケーションに関わる場面とがあるようです。テレビ画面が「ながら利用」されているとき、おもにリアルタイム視聴が行われていることがわかっていますので、その時テレビでやっている内容が人々にコミュニケーションを促す側面もあるかもしれません。

では、人々はこれらのことを、一日のどのような時間帯に行っているのでしょうか。

  • *「身のまわりの用事」…洗面・シャワー・入浴・着替え・化粧・外出のしたくなど。
  • **「家事」…炊事・洗濯・掃除・子どもの世話・介護・看護など。
  • ***「会話・おしゃべり」…対面や電話での会話。例えばLINEのような、文字のやりとりは含まない。

3.生活とテレビ画面の「ながら利用」

図3 テレビ画面の「ながら利用」 同時に行われている行動別の積み上げ
(全体 30分ごとの平均行為者率 月曜)

図3は、テレビ画面の「ながら利用」について、同時に行われている行動別に積み上げて、一日の推移をみたグラフです。図2でみた行動のうち、1日の行為者率が高い5つをとりあげます。

どの行動との「ながら利用」かによって、行為者率が高い時間帯は異なっています。
食事との「ながら利用」は、朝は7時台、昼は12時台、夜は19時台によく行われ、最も行為者率が高いのは19時から19時30分(13%)です。これは、テレビ画面の「ながら利用」の行為者率が最も高い時間帯です。

家事との「ながら利用」、身のまわりの用事との「ながら利用」は、朝と夜に行為者率が高くなります。家事や身のまわりの用事でいそがしく手を動かしながらも、目や耳はテレビ画面に意識を向けているようすが想像できます。

一方、会話・おしゃべりやスマートフォン・携帯電話の利用との「ながら利用」は、午前や日中と比べ、夜に多くなります。スマートフォン・携帯電話の利用は、21時以降では「ながら利用」のうち、もっともよく行われている行動です。食事・家事・身のまわりの用事のような、必須の行動がひととおり済んだひととき、スマートフォンや携帯電話を使いながら、テレビ画面の利用をして、くつろいでいるのかもしれません。

テレビ画面がどのように「ながら利用」されているのかみることで、テレビ画面が日常生活に溶け込んで利用されていることが感じられました。

(伊藤 文 研究員)