NHK放送文化研究所

2021年メディア調査

テレビ画面、集中して見ていますか?

「メディア利用の生活時間調査」では、「テレビ画面」、「スマートフォン・携帯電話」、「パソコン・タブレット端末」という3種類の機器(デバイス)の利用状況がくわしくわかるのですが、今回は、テレビ画面の利用に注目したいと思います。

1.テレビ画面がよく使われる時間帯

まず、テレビ画面を利用している人の割合(行為者率)を全体でみてみます。

図1 時刻別のテレビ画面利用
(全体 30分ごとの平均行為者率 月曜)

テレビ画面の行為者率の一日の推移を30分ごとにみてみると、朝、昼、夜に3つのピークがあります(図1)。なかでも夜のピークが高く、20時30分から21時は44%です。この時間帯を含め、19時から22時はテレビ画面の行為者率が30%を超えています。

テレビ画面は、放送の視聴以外にもいろいろなことに使われます。この調査では、テレビ画面を利用する行動として、つぎの5つの行動―リアルタイム視聴、録画視聴、DVD視聴、動画視聴、ゲーム―を設定しています。図2は、全体を平均して、一人あたりテレビ画面をどのくらい利用しているか、1日の時間量を行動別に表したものです。

図2 テレビ画面の利用 行動別の時間量
(全体・全員平均時間・月曜)

5項目のうち、リアルタイム放送の視聴に費やす時間が2時間54分と最長です。これは必ずしも連続で視聴したということではなく、1日の視聴時間の合計です。テレビ画面を使っていろいろなことができるといっても、全体ではリアルタイム視聴の時間が圧倒的に長いことがわかります。

2.「専念利用」と「ながら利用」

さて、この調査では、人々の行動をより詳しくみていくため、行動を「専念行動」と「ながら行動」に分けています。「専念行動」とは、その行動のみを行っていること、「ながら行動」とは、同時に2つ以上の行動を行っていることです。例えばテレビ画面に集中してドラマを見ていて、ほかに何もしていなければ「専念利用」、テレビ画面でドラマを見ながら食器を洗っていれば「ながら利用」です。そこで、図1を「専念利用」と「ながら利用」に分けて、詳しくみてみます。

図3 時刻別のテレビ画面利用 「専念利用」・「ながら利用」
(全体 30分ごとの平均行為者率 月曜)

テレビ画面の利用を「専念利用」と「ながら利用」で区別して行為者率の推移をみてみると、一日を通して「専念利用」もあれば「ながら利用」もあることがわかります(図3)。

「専念利用」のピークは、20時30分から21時で、29%です。一方、「ながら利用」のピークは19時から19時30分の21%と、専念利用のピークより早い時間帯です。そして、「専念利用」のピークを含め20時から24時の4時間は、「専念利用」の割合が「ながら利用」の割合を上回っていました。では、この時間帯に人々はテレビ画面で何をしているのでしょうか。

3.テレビ画面の使われ方 「専念利用」の場合

3-1. 全体

図4 テレビ画面の「専念利用」
(行動別30分ごとの平均行為者率 全体・年層別 月曜 20時30分から21時)

図4は、テレビ画面の「専念利用」によって人々が何を行っているのか、5つの行動の行為者率を積み上げて表したものです。時間帯は、「専念利用」のピークである、20時30分から21時の30分間に絞り込んでみています。

まず、全体ではリアルタイム視聴が25%と、それ以外の行動と比べ圧倒的に高いです。そして録画視聴の3%と続きます。DVD視聴と動画視聴はそれぞれ1%、ゲームは1%未満でした。

3-2. 年層別

つづいて、図4の一番下、50歳以上の年層のグラフをみると、全体のグラフより長く、テレビ画面の「専念利用」の行為者率が高いこと、なかでもリアルタイム視聴が36%と圧倒的に高く、全体と同じ傾向であることがわかります。一方、年層別10歳から29歳、30歳から49歳では、グラフ自体が短く、テレビ画面を「専念利用」する人の割合が全体に対して低いことが見てとれます。全体ではピークの時間帯といえども、これらの年層ではテレビ画面を「専念利用」している人の割合が高くありません。

年層別のグラフに共通するのは、5つの行動のうちオレンジ色の「リアルタイム視聴」の行為者率がいずれも圧倒的に高いことです。この時間帯のテレビ画面の「専念利用」は、リアルタイム視聴が中心と言ってよさそうです。一方で、50歳以上の年層と比べると、より若い10歳から29歳、30歳から49歳の年層は、リアルタイム視聴のほか動画視聴・ゲームなども行っていて、リアルタイム視聴の行為者率と、それ以外の動画視聴・ゲームなどの行為者率の差が小さく、リアルタイム視聴の行為者率が相対的に低いことがわかります。

一日を通じて仕事や家事、介護、育児、入浴など、いろいろとやらなければならないことがあるなか、50代以上の人々のうち4割近くが、ほかのことは特にしないでテレビ放送をリアルタイムで見ることを選ぶこの時間帯は、希少な時間帯と言えそうです。夜間はテレビ放送の視聴好適時間帯「ゴールデン・プライム帯」と呼ばれますが、こうした人々にまさにあてはまります。

今回の調査では、テレビ画面が全体としてよく利用されている夜間に人々が行っている「専念利用」は、おもにリアルタイム視聴であることがわかりました。テレビ画面は、インターネットと接続することで、ますます多くのサービス・コンテンツを提供できるようになっています。テレビ画面で楽しめるエンターテインメントの選択肢が広がるなか、テレビ画面が今後どのように使われていくのか、ひきつづき注目していきたいと思います。

(伊藤 文 研究員)