社会や政治に関する世論調査

開始1年・裁判員制度に対する国民の意識

~「裁判員制度に関する世論調査(第3回)」から~

一般の人が刑事裁判に参加する「裁判員制度」がスタートして、5月21日で1年が経過した。NHKでは、5月14~16日の3日間、「裁判員制度に関する世論調査(第3回)」を電話法(RDD追跡法)で実施した。この調査は、制度開始半年前のおととし11月の第1回調査、開始直前の去年5月の第2 回調査に続き、同じ調査方法で行った。開始前と後で国民の意識がどう変化したか、制度を国民が現在どう受け止めているか、結果の報告を行う。

第3回調査では制度を「知っている(詳しく+ある程度、以下同)」が53%と半数を超えた。第1回の43%、第2回の44%よりもやや増加している。制度がスタートしたこの1年間で、「知っている」が増えている。なお、「知っている」は、女性よりも男性で多い。

また、第3回調査では、制度が「必要(必要+どちらかといえば必要、以下同)」という人が57%と半数を超えた。第1回と第2回では「必要」が42%から34%へと減少しているが、第3回では再び「必要」が増加している。この1年で、「必要」という人が増えたことがわかる。なお、「必要」という人は男女で違いはないが、若い年層ほど多くなっている。

第3回調査で裁判員が参加した裁判について尋ねたところ、「評価する(おおいに+多少は、以下同)」が67%、「評価しない(あまり+まったく、以下同)」が25%で、「評価する」が上回った。年齢が高くなるに従って「評価する」が減り「評価しない」が増えている。また、「評価する」という人にその理由を尋ねたところ、「市民の意見や感覚が反映された」32%、「裁判を身近に感じられるようになった」26%、「社会の安全や犯罪について関心を持つ人が増えた」24%などとなった。一方、「評価しない」という人にその理由を尋ねたところ、「裁判員の心理的な負担が重過ぎる」が40%を占め、最も多かった。

裁判員として裁判に参加することについてどう思うかを尋ねたところ、第3回調査では「参加したくない(できれば+絶対に、以下同)」が65%となった。依然として参加に消極的な考えを持つ人が多くなっている。なお、「参加したくない」という人は男性よりも女性で多く、高年になるほど多くなっている。

制度開始から1年を経て、若年層を中心に、裁判員制度が国民から肯定的に受け止められるようになっていることがわかった。その一方で、裁判に「参加したくない」という人が、高齢層を中心として、多数を占めていることがわかり、今後の課題として浮かび上がった。

メディア研究部(メディア史) 加藤元宣