社会や政治に関する世論調査

家族の中の“すれ違い”

~「家族に関する世論調査」から~

今、高齢化の進展と景気の悪化など家族を取り巻く社会環境は厳しさを増しつつある。また、家族のあり方をめぐっては、様々な考え方が交錯している。家族の現状と家族に対する意識の把握を目的に実施した世論調査の結果について報告する。

「自分たちは家族だな」と感じるのは「自宅で食事をしている時」という人が76%で最も多く、次いで「何もしていなくても家族だと感じる」が53%となった。また、一緒にいて「ほっと」する人として「夫または妻」を挙げた人が60%で最も多い。しかし、夫が妻に「ほっと」すると感じているほど、妻のほうは夫をそう感じていないという結果となった。

家族の絆を深めるための取り組みでは、「できる限り、会話の時間を多く持つよう心がけている」が58%、「愛情や感謝、思いやりの気持ちを積極的に表現するよう心がけている」が48%となった。「愛情や感謝の表現」を挙げた人は男性より女性に多く、特に40~60代では男女の差が大きくなっている。

「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感や絆(きずな)には影響がないと思う」人は半数以下の40%で、「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感や絆が弱まると思う」人が59%と多い。女性より男性で、さらに若年層より高齢層で「弱まる」と考えている人が多い。

「結婚するのが当たり前だ」と考える人は27%と少なく、反対に「必ずしも結婚する必要はない」という人が73%と多い。「当たり前だ」は女性よりも男性で多い。また、60代以上の高齢層で全体よりも高くなっており、年層によっても違いがみられる。「必要ない」という人を未婚者に限ってみると、男性でも 84%と多いが女性では93%に上っている。

親が高齢になった場合、「子どもは親の面倒をみるのがよい」という人が43%に対し、「親は子どもを頼らず自立するのがよい」という人が56%で多数となった。「自立するのがよい」は60代で70%を超え全体を上回っているが、70歳以上では62%と60代を下回った。

もし介護が必要になった場合には「施設で」という人も33%いるが、多くの人は自宅を希望している。特に70歳以上では「自宅で介護」を希望する人が4 人のうち3人を占めている。高齢化と介護をめぐっては、実際に介護される可能性が高くなる70歳以上と50代、60代では「自立」と「介護」を受ける場所について考え方が異なっていることが伺われた。

今回の調査からは、性や年層などの違いによって、家族についての意識や家族が抱えている課題の受け止め方に微妙な“すれ違い”があることがわかった。

世論調査部(社会調査) 加藤元宣・関谷道雄